音の大きさ
解説
ヒトは音に対して大小を感じる。これが音の大きさ・ラウドネスである。単位はソーン(sone)。音圧レベル40dB・周波数1kHzの純音をヒトが聴いた際に感じる音の大きさが1soneと定義される[2]。ヒトの感じる音の大きさが2倍になれば2sone、半分になれば0.5soneと表される[3]。
同じ周波数の音であれば音圧が増大するほどヒトは音を大きく感じる。しかしヒトの聴覚の感度は周波数によって異なるため、同じ音圧であっても周波数が異なればヒトの感じる音の大きさは異なる。音の大きさが一定となる純音の音圧レベルを結んで得られる周波数と音圧レベルの関係を図示したものが等ラウドネス曲線である(右図)。
推定
ラウドネスは心理量であるため、本来的には個々人が感じた「音量」を調査することでしか記録できない。そのため音量測定・操作は容易ではない。一方、ラウドネスは物理量である音圧と強い関係性がある。ゆえに心理量であるラウドネスを物理量から推定・近似できる尺度が提案されている(A特性音圧レベル、Moore-Glasberg法など)。
ラウドネスレベル
ラウドネスレベル (英: loudness level) は聴覚の特性に合わせて周波数補正され標準化された音圧レベルであり物理量である[4]。
純音のラウドネスがその周波数によって変わる事実に基づき、等ラウドネス曲線で補正を掛けられた音圧レベルである。補正により、周波数によらずラウドネスレベルが等しければラウドネスも近似的に等しい[5]。単位はホン(phon)。例えば [Hz] の純音に関して、補正係数を 、計測された音圧レベルを [dBSPL]とすると、この純音のラウドネスレベルは [phon] である。
ラウドネスレベルは純音のラウドネスが等しくなるように補正された尺度である。ゆえに複合音に外挿してもラウドネスとの関係が保たれる保証はない。例えば近い周波数の純音2つからなる複合音の場合、マスキング効果によりラウドネスが抑制される、すなわち実際のラウドネスレベルが純音のラウドネスレベル和より小さくなる可能性がある[6]。
ラウドネスとラウドネスレベルの尺度関係は明確でない。比率尺度として 、すなわち10phonで2倍のラウドネスが得られる(等比)という研究や[7]、間隔尺度として10dBで騒音カテゴリが1つあがる(等差)という研究が存在する[8]。
利用
音量調整
音響機器・オーディオソフトウェアが発する音声信号の音量調整/volume control(音量正規化)にラウドネスは用いられる。
異なる2つの楽曲の音量を最大振幅(~音圧)で制御した場合、視聴者が感じるラウドネスは必ずしも一致しない。なぜなら音圧とラウドネスは正比例しないからである。(視聴者が感じる)ラウドネスを一致させたいのであれば、機材側での音量調整段階でラウドネスを揃えればよい。すなわちラウドネスレベル等のラウドネス推定値を用いて音量上限を設定すれば、複数の音声信号間でラウドネスを均一化できる。これをラウドネス正規化という。
脚注
参考文献
- JIS Z 8106 : 2000(音響用語)
- ISO 226:2003 Acoustics — Normal equal-loudness-level contours
- 難波精一郎. (2017). 知っているようで知らないラウドネス. 日本音響学会誌 73 巻 12 号(2017),pp. 765–773.