SOGI

性的指向と性同一性

SOGI(ソジ)は、: Sexual Orientation & Gender Identityの頭文字を取ったアクロニムである。日本語では「性的指向性自認」と訳される[1][2][3]。「SOGIE(ソジー)」や「SOGIESC(ソジエスク)」のように、性表現(: Gender Expression)や性的特徴(: Sex Characteristics)とともに称されることもある[4][5][6][7]

SOGIはすべての人に関わるため、LGBTよりも広い概念を指す。

定義

セクシャルマイノリティは「LGBT」と総称されることが多いが、「LGB(レズビアンゲイバイセクシュアル)」は性的指向に関わる概念であり、「T(トランスジェンダー)」は性自認に関わる概念であるため、土台、位相が異なる[8]。そのため、国際人権法などの議論では、2011年頃から「LGBT」ではなく「SOGI」という呼称が使われるようになった[8]

「SOGI」の「SO」とは、性的指向: Sexual Orientation)のアクロニムである。ジェンダー・アイデンティティを基準に、それとは異なるジェンダーに性愛を感じる場合はヘテロセクシュアル、同じジェンダーに性愛を感じる場合はホモセクシュアル、両方に対して性愛を感じる場合はバイセクシュアル、いずれにも性愛を感じない場合はアセクシュアルに分類される[8]

「SOGI」の「GI」とは、性自認: Gender Identity)のアクロニムである。性同一性は如何なるジェンダーに所属しているかによって決定される。自分の身体的性差に違和感を抱いていない場合はシスジェンダーに分類され、違和感を抱いている場合はトランスジェンダーに分類される。「身体の性とこころの性が一致する・しない」といった表現が用いられることもある[8]

性的指向と性自認が位相の異なる概念であることが認識されていけば、「ゲイの人は心が女性だから、男の人が好きなのね」などといった、性自認と性的指向を混同した社会的な誤解は解消されていくことが予想される[8]

また、なるべく多くの性に関する概念を包括的に呼称するため、「SOGIE(ソジー)」や「SOGIESC(ソジエスク)」といった用語も使われている。「(G)E」は性表現(: Gender Expression)の、「SC」は性的特徴(: Sex Characteristics)のアクロニムである[4][9][10][5]。上記以外の性に関する概念として、恋愛的指向: Romantic Orientation)等が挙げられる。

概要

日本の政治の動き

2016年2月3日公明党は性的マイノリティへの差別解消に向けて「性的指向と性自認(SOGI)に関するプロジェクトチーム」を設置することを発表した[11]。同年5月27日、プロジェクトチーム座長の谷合正明は国会内で記者会見し、「人権侵害を抑制するため、性的指向と性自認に関する法制の成案を得ることは喫緊の課題である」と述べている[12]

2016年2月16日に衆議院議員会館で行われた院内集会「LGBTとAlly(支援者)の学生と国会議員の意見交換セッション」で、社会民主党副党首の福島瑞穂は「LGBTという言葉を使うから、セクシュアル・マイノリティの人々はレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーであるというような扱いが起きてしまうわけで、SOGIにすればスムーズだと思う」と述べている[13]

SOGIハラ

SOGIハラの定義

被害者が性的マイノリティか否かを問わず差別的な言動をしたり、 当事者本人の了承なく性的指向や性同一性等を第三者に暴露(アウティング)したり、望まない性別の服装を強要したりすることをSOGIハラスメントSOGIハラ(ソジハラ))と呼ぶ[14][15][16][17][18]

SOGIハラ対策の動き 

2017年3月19日に衆議院議員会館で開催された院内集会「レインボー国会」では、自由民主党民進党公明党日本共産党社会民主党国会議員計13人が参加し、「SOGIハラ」に関して意見交換が行われた[19]

同年5月3日には職場でのハラスメントについて考えるパネルディスカッションが都内で開かれ、当事者が「SOGIハラ」を受けた実体験やその防止策を語り合い、高岡法科大学教授の谷口洋幸は「SOGIハラについて、法律や指針で明記されていないことは、大きな問題です」と語っている[20]。なくそう!SOGIハラ実行委員会代表の松中権は「『LGBTハラ』だと被害を受けた人が性的少数者だと明らかになるリスクがあるが、『SOGIハラ』なら周りの人も声を上げやすい」と話している[21]

2022年には、職場で上司からSOGIハラを受け休職に追い込まれたトランスジェンダーの会社員が、労働基準監督署から労働災害と認定されている[22]

職場内におけるSOGIハラ・アウティングの防止にかかる指針

2020年1月15日労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の規定に基づき、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針が告示された。大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月から適用となる。

この指針には、職場内におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる例として、「相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うこと」や、「労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」等も含まれると明記されている。一方、「労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと」等はパワーハラスメントに該当しないと考えられる例としている[注釈 1]

事業主は、職場内におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等、労働者は、他の労働者に対する言動に注意を払うこと等が責務とされた。また事業主は、当該事業主が雇用する労働者又は当該事業主が行う職場におけるパワーハラスメントを防止するため、(1) 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発、(2) 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、(3)職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、(4) そのほか併せて講ずべき措置、を講じなければならないとした[23][24]

脚注

注釈

出典

外部リンク