1967年オランダグランプリ

1967年オランダグランプリ (1967 Dutch Grand Prix) は、1967年のF1世界選手権第3戦として、1967年6月4日ザントフォールト・サーキットで開催された。

オランダ 1967年オランダグランプリ
レース詳細
1967年F1世界選手権全11戦の第3戦
ザントフォールト (1948-1971)
ザントフォールト (1948-1971)
日程1967年6月4日
正式名称XVII Grote Prijs van Nederland
開催地ザントフォールト・サーキット
オランダの旗 オランダ ザントフォールト
コース恒久的レース施設
コース長4.252 km (2.642 mi)
レース距離90周 382.68 km (237.78 mi)
決勝日天候晴 (ドライ)
ポールポジション
ドライバーロータス-フォード
タイム1:24.6
ファステストラップ
ドライバーイギリスの旗 ジム・クラークロータス-フォード
タイム1:28.08 (67[1]周目)
決勝順位
優勝ロータス-フォード
2位ブラバム-レプコ
3位ブラバム-レプコ

本レースはフォード・コスワース・DFVエンジンが搭載されたロータス・49のデビュー戦となった。同車を長い間テスト走行したグラハム・ヒルポールポジションを獲得し、対照的に同車をドライブするのが初めてだったチームメイトのジム・クラークは8番手と出遅れた。しかし、決勝はクラークが同車に初勝利をもたらし、ヒルはリタイアに終わった。本レースではブラバム・BT24BRM・P115も初登場したが、どちらもレースに参加しなかった。

一方、ロータス・25は最後のレースとなった。クリス・アーウィンがドライブしたシャシーR4は、クラークが1963年チャンピオンを獲得した際に使用したシャシーであった。

レース概要

ジム・クラークフォード・コスワース・DFVエンジンにデビューウィンをもたらした。
ホンダ・RA273を駆るジョン・サーティースはリタイアに終わった。

ロレンツォ・バンディーニが前戦モナコGPの事故で亡くなってから3週間が経過したが、その間に多くのことが起きた。フェラーリは、イギリス出身のエンジニアドライバーであったマイク・パークス英語版をバンディーニの後任に任命した。彼はモナコGPから2週間後に行われた非選手権レースのシラクサGP英語版ルドビコ・スカルフィオッティとともに優勝を分け合った[注 1]が、ほとんどの有力F1ドライバーはこのレースに参加しなかった。ジム・クラークF2に出場するためゾルダーへ飛び、その後インディ500英語版に参加するためアメリカに戻った。インディ500の決勝が行われる5月30日は雨のため翌31日に順延され、F1勢はクラークの他、ジャッキー・スチュワートダン・ガーニーヨッヘン・リントグラハム・ヒルデニス・ハルムが出走したが、ハルムが4位で完走した以外はいずれもマシントラブルのため最後まで走れなかった。それから本レースに間に合うように全員慌ただしくオランダへ向かい、練習走行は金曜日から始まった[2]

パドックでの大きなニュースは、待望のフォード・コスワース・DFVエンジンと、それを搭載したモーリス・フィリップ英語版設計の新車ロータス・49の登場であった[2]フォードの依頼を受けたコスワースがエンジンを制作し、チーム・ロータスとの共同作業によって本レースから参戦を開始した[3]

ロータスの新しいDFVエンジン搭載車49は速く、ヒルがポールポジションを獲得した。タイムはガーニーより0.5秒速く、ジャック・ブラバムより1秒速かった。この3人がフロントロー、リントとペドロ・ロドリゲスクーパー勢が2列目、ジョン・サーティースホンダ)、ハルム、そしてクラークが3列目を占めた[注 2]。クラークはメカニカルトラブルを抱えていた[2]

スタートでハルムが立ち往生し、大きく出遅れた。ヒルはブラバムとガーニーからリードして、1周目を終えると彼らに2秒差を付けていた。リントは3位に浮上し、ガーニー、クリス・エイモン、そしてクラークが続いた。ガーニーはリントとバトルを繰り広げたが、エンジントラブルでリタイアした。クラークはエイモンを抜いたが、ハルムの攻撃を受けることになる。ヒルは11周目に突然減速し、ブラバムが首位、リントが2位、クラークが3位にそれぞれ浮上する。クラークは15周目にリントを抜き、続いて16周目にブラバムを抜いてトップに立った。ブラバムはクラークに付いていくことができなかったが、ハルムがリントを抜いて3位に浮上したため、プレッシャーを感じることなく走行し続けた。しばらくの間、ハルムはエイモンから攻撃を受けたが、徐々に差を広げて3位を確保した[2]。サーティースはスタートで一瞬出遅れてインサイドの砂地を走らされ、この砂がエンジンにかぶってしまい、スロットルを悪化させてしまった。サーティースはスロットルに問題を抱えたまま73周を走行したが、スロットルがスタックしたことによりスピンを喫してリタイアに終わった[4]

クラークはブラバムに23秒差を付け、フォード・コスワース・DFVエンジンのデビュー戦を勝利で飾った。それはF1の歴史における新しい時代の始まりであった[2]。フェラーリ勢はエイモン4位、パークス5位、スカルフィオッティ6位と3台とも入賞したが、DFVエンジンのデビューウィンを前に課題はまだ山積みであった[5]

エントリーリスト

チームNo.ドライバーコンストラクターシャシーエンジンタイヤ
ブラバム・レーシング・オーガニゼーション1 ジャック・ブラバムブラバムBT19レプコ 740 3.0L V8G
2 デニス・ハルムBT20レプコ 620 3.0L V8
スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC3 クリス・エイモンフェラーリ312/67フェラーリ 242 3.0L V12F
4 マイク・パークス312/66
22 ルドビコ・スカルフィオッティ312/67
チーム・ロータス5 ジム・クラークロータス49フォードコスワース DFV 3.0L V8F
6 グラハム・ヒル
ホンダ・レーシング7 ジョン・サーティースホンダRA273ホンダ RA273E 3.0L V12F
オーウェン・レーシング・オーガニゼーション9 ジャッキー・スチュワートBRMP83BRM P75 3.0L H16G
10 マイク・スペンス
クーパー・カー・カンパニー12 ヨッヘン・リントクーパーT81Bマセラティ 9/F1 3.0L V12F
14 ペドロ・ロドリゲスT81
アングロ・アメリカン・レーサーズ15 ダン・ガーニーイーグルT1Gウェスレイク 58 3.0L V12G
アドヴァンス・マフラー/ブルース・ブルーム16 リッチー・ギンサー 1
ブルース・マクラーレン・モーターレーシング17 ブルース・マクラーレンマクラーレンM4BBRM P56 2.0L V8G
レグ・パーネル・レーシング18 クリス・アーウィンロータス25BRM P56 2.0L V8F
19 ピアス・カレッジ 2BRMP83BRM P75 3.0L H16
ロブ・ウォーカー/ジャック・ダーラッシャー・レーシングチーム20 ジョー・シフェールクーパーT81マセラティ 9/F1 3.0L V12F
DWレーシング・エンタープライゼス21 ボブ・アンダーソンブラバムBT11クライマックス FPF 2.8L L4F
ソース:[6]
追記
  • ^1 - ギンサーは前戦モナコGPをもって引退[7]
  • ^2 - マシンが準備できず[8]

結果

予選

順位No.ドライバーコンストラクタータイムグリッド
16 グラハム・ヒルロータス-フォード1:24.60-1
215 ダン・ガーニーイーグル-ウェスレイク1:25.10+0.502
31 ジャック・ブラバムブラバム-レプコ1:25.60+1.003
412 ヨッヘン・リントクーパー-マセラティ1:26.50+1.904
514 ペドロ・ロドリゲスクーパー-マセラティ1:26.58+1.985
67 ジョン・サーティースホンダ1:26.65+2.056
72 デニス・ハルムブラバム-レプコ1:26.65+2.057
85 ジム・クラークロータス-フォード1:26.80+2.208
93 クリス・エイモンフェラーリ1:26.90+2.309
104 マイク・パークスフェラーリ1:27.00+2.4010
119 ジャッキー・スチュワートBRM1:27.20+2.6011
1210 マイク・スペンスBRM1:27.40+2.8012
1318 クリス・アーウィンロータス-BRM1:27.50+2.9013
1417 ブルース・マクラーレンマクラーレン-BRM1:27.70+3.1014
1522 ルドビコ・スカルフィオッティフェラーリ1:27.90+3.3015
1620 ジョー・シフェールクーパー-マセラティ1:28.80+4.2016
1721 ボブ・アンダーソンブラバム-クライマックス1:29.00+4.4017
ソース:[9]

決勝

順位No.ドライバーコンストラクター周回数タイム/リタイア原因グリッドポイント
15 ジム・クラークロータス-フォード902:14:45.189
21 ジャック・ブラバムブラバム-レプコ90+23.636
32 デニス・ハルムブラバム-レプコ90+25.774
43 クリス・エイモンフェラーリ90+27.393
54 マイク・パークスフェラーリ89+1 Lap102
622 ルドビコ・スカルフィオッティフェラーリ89+1 Lap151
718 クリス・アーウィンロータス-BRM88+2 Laps13
810 マイク・スペンスBRM87+3 Laps12
921 ボブ・アンダーソンブラバム-クライマックス86+4 Laps17
1020 ジョー・シフェールクーパー-マセラティ83+7 Laps16
Ret7 ジョン・サーティースホンダ73スロットル6
Ret9 ジャッキー・スチュワートBRM51ブレーキ11
Ret12 ヨッヘン・リントクーパー-マセラティ41サスペンション4
Ret14 ペドロ・ロドリゲスクーパー-マセラティ39ギアボックス5
Ret6 グラハム・ヒルロータス-フォード11エンジン1
Ret15 ダン・ガーニーイーグル-ウェスレイク8燃料噴射装置2
Ret17 ブルース・マクラーレンマクラーレン-BRM1アクシデント14
ソース:[10]
ファステストラップ[1]
ラップリーダー[11]

第3戦終了時点のランキング

コンストラクターズ・チャンピオンシップ
順位コンストラクターポイント
1 ブラバム-レプコ18
2 クーパー-マセラティ11
123 ロータス-フォード9
24 フェラーリ7
25 ロータス-BRM6
ソース: [12]

  • : トップ5のみ表示。前半6戦のうちベスト5戦及び後半5戦のうちベスト4戦がカウントされる。

脚注

注釈

出典

参照文献

  • en:1967 Dutch Grand Prix(2019年3月15日 9:36:15(UTC))より翻訳
  • Lang, Mike (1982). Grand Prix! Vol 2. Haynes Publishing Group. p. 40. ISBN 0-85429-321-3 
  • 林信次『F1全史 1966-1970 [3リッターF1の開幕/ホンダ挑戦期の終わり]』ニューズ出版、1995年。ISBN 4-938495-06-6 
  • アラン・ヘンリー『チーム・フェラーリの全て』早川麻百合+島江政弘(訳)、CBS・ソニー出版、1989年12月。ISBN 4-7897-0491-2 
  • 中村良夫『F-1グランプリ ホンダF-1と共に 1963-1968 (愛蔵版)』三樹書房、1998年。ISBN 4-89522-233-0 

外部リンク

前戦
1967年モナコグランプリ
FIA F1世界選手権
1967年シーズン
次戦
1967年ベルギーグランプリ
前回開催
1966年オランダグランプリ
オランダグランプリ次回開催
1968年オランダグランプリ