1,2-ビス (ジフェニルホスフィノ) エタン
1,2-ビス (ジフェニルホスフィノ) エタン (1,2-Bis(diphenylphosphino)ethane = dppe) は化学式 (Ph2PCH2)2 (Ph = Phenyl) で表される有機リン化合物であり、配位化学で一般的に使用される二座配位子である。白色の固体で有機溶媒に溶ける。
1,2-ビス (ジフェニルホスフィノ) エタン | |
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Ethane-1,2-diylbis(diphenylphosphane) | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 1663-45-2 |
PubChem | 74267 |
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特性 | |
化学式 | C26H24P2 |
モル質量 | 398.42 g mol−1 |
融点 | 140 - 142 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
調製
dppe の調製は NaPPh2 のアルキル化による:[1][2]
- P(C6H5)3 + 2 Na → NaP(C6H5)2 + NaC6H5
NaP(C6H5) (空気ですぐに酸化される)と1,2-ジクロロエタン (ClCH2CH2Cl) の反応で得られる:
- 2 NaP(C6H5)2 + ClCH2CH2Cl → (C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2 + 2 NaCl
反応
リチウムによる還元で PhHP(CH2)2PHPh が得られることが報告されている[3]。
- Ph2P(CH2)2PPh2 + 4 Li → PhLiP(CH2)2PLiPh + 2 PhLi
加水分解によりビス(第二級ホスフィン) が得られる:
- PhLiP(CH2)2PLiPh + 2 PhLi + 4H2O → PhHP(CH2)2PHPh + 4 LiOH + 2 C6H6
過酸化水素、臭素水などの従来の酸化剤でdppeを処理すると、非選択的酸化の結果としてdppeOが低収率 (たとえば13%) で生成される[4]。 dppe の選択的一酸化は、PhCH2Brと反応してdppeOを生成することで実現できる。
Ph2P(CH2)2PPh2 + PhCH2Br → Ph2P(CH2)2PPh2(CH2Ph)+Br−
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Ph2P(CH2)2PPh2(CH2Ph)+Br− + NaOH + H2O → Ph2P(CH2)2P(O)Ph2
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dppe を水素化すると、配位子ビス (ジシクロヘキシルホスフィノ) エタン(英語: Bis(dicyclohexylphosphino)ethane)が得られる。
配位錯体
dppe の多くの配位錯体が知られており、その一部は均一系触媒として使用されている。 dppeはほぼ常にキレート化しているが、単座 (例えば W(CO)5(dppe)など) やブリッジング動作 (bridging behaviaor)の例もある[5]。自然挟み角 (natural bite angle) は 86°である[6]。
関連化合物
- ビス (ジメチルホスフィノ) エタン(英語: Bis(dimethylphosphino)ethane)
- ビス (ジフェニルホスフィノ) メタン(英語: Bis(diphenylphosphino)methane)
- 1,3-ビス (ジフェニルホスフィノ) プロパン