表面最大加速度

表面最大加速度(ひょうめんさいだいかそくど、英語: peak ground acceleration, PGAと略される。また design basis earthquake ground motionDBEGMとも)とは、地震での地表での加速度の最大値の測定値であり、地震工学における重要な入力パラメータである[1]。単に最大加速度と呼ばれる事も多い。

震度と同様、ある場所においてどれだけ強く地面が揺れたかを表すものである。マグニチュードとは異なり、地震全体のエネルギーを示すものではない。

地震においては建築物やインフラストラクチャーの被害は、地震のマグニチュードよりも、地震動により強く関係する。中程度の地震では表面最大加速度が被害の最大の決定要因である。強い地震では被害は表面最大速度により強く依存する[2]

物理的説明

地震において地面は水平2方向と垂直方向に振動する。表面最大加速度はこれらの加速度である。他方表面最大速度は最大の速度、最大変位(peak displacement)は地震の前後でのずれた距離である[3][4]。これらの値は地震により異なり、また一つの地震でも、場所により異なる。違いの要因には断層の長さやマグニチュード震源の深さ、震源からの距離、地震の続いた時間の流さ、揺れの周期、地質が含まれる。震源の浅い地震では、中深度よりも強い揺れ(加速度)を生じる。これは地表に近いところでエネルギーが解放されるためである[5]

表面最大加速度はg(重力加速度、ジー)やm/s2[3]ガルを単位として表される。1ガルは0.01m/s2に、1gは981ガルに等しい。

地質は最大加速度に強く影響し、数kmの範囲内でも極端に変わり得る。特に中程度から強い地震ではそうである[6]。表面最大加速度を左右する条件は複雑であり、同程度のマグニチュードの地震でも全く異なる結果になり得る。中程度のマグニチュードの地震がより大きなマグニチュードの地震よりも大きな表面最大加速度をもたらす事も多い。

表面加速度は3方向で計測される。垂直と、直交する水平2方向(しばしば南北と東西にとられる)である。これらの各方向ごとの最大加速度が記録され、各々の最大値がしばしば報告される。あるいは結合値を報告することもできる。水平表面最大加速度は、2成分のうちで大きい方を選ぶ、平均を取る、またはベクトル和、のいずれかで得られる。垂直成分を考慮することで、3成分の値を得る事もできる。

地震工学では、有効最大加速度(英語: effective peak acceleration, EPA)もよく使われる。

測定値と体感の比較

最大加速度は加速度計による測定値である。強さの尺度としては体感を用いる、つまり目撃による報告、感じた揺れの強さ、起こった損害を用いるものもある。両者には相関があるが、単純に一致する訳ではない。

過去の大きな地震での最大加速度

最大加速度
(一方向)
最大加速度
(ベクトル和)
マグニチュード震源の深さ死者地震
2.7g[7]2.99g[8][9]9.030km[10]15000以上[11]2011年東北地方太平洋沖地震
2.2g[12][13]6.3[14]05km1812011年カンタベリー地震(2月)
2.13g[15]6.3[14]06km12011年カンタベリー地震(6月、June 2011 Christchurch earthquake
4.36g[16]6.9/7.208km122008年岩手・宮城内陸地震
1.7g[17]6.719km571994年ノースリッジ地震
1.47g[18]7.2[19]66km[19]42011年宮城県沖の地震
1.26g[20][21]7.110km02010年カンタベリー地震
1.01g[22]6.610km112007年新潟県中越沖地震
1.01g[23]7.308km2415

1999年台湾大震災

0.8g6.816km64341995年阪神・淡路大震災
0.78g[24]8.823km[25]5212010年チリ地震
0.6g[26]6.010km1431999年ギリシャ地震(1999 Athens earthquake
0.51g[27]6.46122005年イラン地震(2005 Zarand Earthquake
0.5g[17]7.013km92000 - 3160002010年ハイチ地震
0.438g[28]7.744km271978年宮城県沖地震
0.367g[29]5.201km92011年スペイン地震(2011 Lorca Earthquake
0.25 - 0.3g[30]9.533km1655[31]1960年チリ地震
0.24g[32]6.46282004年モロッコ地震(2004 Morocco earthquake
0.18g[33]9.223km1431964年アラスカ地震

出典

関連項目