菅井竜也

日本の将棋棋士

菅井 竜也(すがい たつや、1992年4月17日 - )は、将棋棋士井上慶太門下。棋士番号は278。岡山県御津郡御津町(現岡山市北区)出身。 2017年第58期王位戦でタイトルを獲得[1]振り飛車党で「菅井新手」と呼ばれる序盤の工夫でも知られており[2]2015年には升田幸三賞を受賞した[3]

 菅井竜也 八段
名前菅井竜也
生年月日 (1992-04-17) 1992年4月17日(32歳)
プロ入り年月日2010年4月1日(17歳)
棋士番号278
出身地岡山県御津郡御津町(現岡山市北区
所属日本将棋連盟(関西)
師匠井上慶太九段
段位八段
棋士DB菅井竜也
戦績
タイトル獲得合計1期
一般棋戦優勝回数4回
2022年2月23日現在
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棋歴

プロ入りまで

5歳の時に父親より将棋を教わる。小学4年の時に森内俊之の指導対局目当てで参加した将棋日本シリーズこども大会・岡山大会で準優勝。これをきっかけに様々な全国大会にも参加するようになる[4]2003年、御津町立御津小学校5年の時に第28回小学生将棋名人戦に出場(地方大会出場時は4年)。西の代表2人のうちの1人となり、NHK教育テレビで放映される準決勝に進んだ。結果は敗れて3位。同年、地元岡山で開催された第2回全国小学生倉敷王将戦では高学年の部で優勝[5]

2004年、小学6年(地方大会出場時は5年)で出場した第29回小学生将棋名人戦では、佐々木勇気に決勝で敗れ準優勝。第58回アマチュア名人戦では大人達に混じって戦い、岡山県代表となる[5]。同年、奨励会入会。

奨励会三段リーグには第43回(2008年度前期)から参加。常に昇段争いに加わり、4期目では序盤の1勝2敗からの13連勝という爆発力を見せ、最終日の2局を残してプロ入りを決める(最終成績は15勝3敗)。また、消化試合となった最終日には、当時中学3年の佐々木勇気に勝ち、中学生棋士誕生の記録を阻んだ。

プロ入り後

プロ1年目の2010年度に、早くも32勝10敗・勝率.762の好成績を挙げ、第5回(2011年度)大和証券杯ネット将棋・最強戦に四・五段の4人枠中4位で出場。1回戦で羽生善治名人を破ったのを皮切りに、豊島将之六段、屋敷伸之九段を下して決勝に進出。決勝では同じく四・五段枠から出場した村山慈明五段を下して、棋戦初優勝を果たした。またこの結果を受けて日本将棋連盟役員会で審議が行われ、「類まれなる成績」により五段に昇段することが決定。決勝と同日の2011年8月21日付で昇段した[6]。2011年度は他にも、本戦初出場の第61回NHK杯テレビ将棋トーナメントでベスト8(2回戦で師匠の井上慶太との「師弟対決」に勝利)、第5回朝日杯将棋オープン戦でもベスト4と活躍した。また、第70期順位戦C級2組でも9勝1敗の好成績だったが、阿部健治郎中村太地船江恒平の3人が10戦全勝を記録[注 1]した為、不運にもC級1組への昇級はならなかった。なお、菅井の1敗は、兄弟子の船江との「同門対決」で喫したものである。2011年度はこれらの活躍により、第39回将棋大賞新人賞を受賞した[7]

2012年度の第6回朝日杯将棋オープン戦で、丸山忠久森内俊之谷川浩司を破るも、決勝戦で渡辺明に敗れて準優勝となった。同年度は順位戦も前年度に続き好調を維持し9勝1敗。同星に阪口悟斎藤慎太郎がいたが順位最上位のため1位の成績でC級1組への昇級を遂げた。

2013年第71期順位戦では、8勝2敗を上げるも順位差で同星の最上位佐々木慎が昇級し、同じく同星の中村太地と共に昇級を逃す。

2014年3月15日、第3回将棋電王戦において、プロ棋士側の先鋒として第23回世界コンピュータ将棋選手権7位の習甦と対戦[8]。コンピューター側の着手を「電王手くん」というロボットが担当したが、トラブルがあって夕食休憩入り直後にコンピューター側が着手をしてしまい、30分の考慮時間を菅井が得る形となった。対局は98手までで習甦に敗退した。

2014年7月19日、電王戦リベンジマッチにおいて第3回将棋電王戦で敗れた習甦と再度対戦。持ち時間が8時間ずつで、深夜をまたぐ対局となった。振り飛車ではなく居飛車を採用したが、中盤の長考がたたって持ち時間を失い、144手で習甦に再度敗れた。

2015年3月9日、第73期順位戦C級1組で高野秀行に勝利し、9勝1敗の同星に澤田真吾がいたが、順位差で1位でB級2組に昇級を果たす。これにより、翌日六段昇段となる[9]。同年9月29日、第46期新人王戦決勝で大橋貴洸三段を下し優勝。11月5日、竜王戦2期連続昇級により、七段昇段[10]

第75期(2016年度)B級2組順位戦では、8勝2敗・2位の成績をあげ、B級1組への昇級を決めた。

タイトル戦・主要棋戦での活躍

第58期(2017年度)王位戦は挑戦者決定リーグ白組にて優勝を飾ると、2017年6月9日、紅組優勝の澤田真吾との挑戦者決定戦に勝ち、羽生善治王位への挑戦権を獲得した[11]。2017年8月30日、3勝1敗で迎えた第5戦を108手で勝利し、6連覇中の羽生を下して自身初のタイトルを手にした。同時に、平成生まれの棋士として初めてのタイトルホルダーとなった[12]

初防衛戦となった第59期(2018年度)王位戦は、棋聖挑戦中であった豊島将之を迎えて行われた。先手番で先勝した第1局のあとで棋聖を獲得した豊島との七番勝負は、先手番側が勝ち続けてフルセットに持ち込まれた末、最終第7局で後手をもった菅井が破れて1期で失冠となった[13]。2018年度将棋日本シリーズでは中村太地丸山忠久を破るも、決勝戦で渡辺明に敗れて準優勝。第4期叡王戦では挑戦者決定三番勝負まで進出するも、永瀬拓矢に1勝2敗で敗れた。

2020年1月23日、第78期B級1組順位戦で斎藤慎太郎を破り、A級昇級と八段昇段を決めた[14][15]

2021年10月27日、第29期(2021年度)銀河戦決勝で渡辺明名人を破り、自身初の全棋士参加棋戦優勝を決めた。

第15回朝日杯将棋オープン戦では、2022年1月15日午前の本戦トーナメント1回戦で渡辺明名人、午後の準々決勝で豊島将之九段に勝利し、2月23日午前の準決勝で佐藤天彦九段、午後の決勝では兄弟子の稲葉陽八段をそれぞれ打ち破り、朝日杯の初優勝を飾った。

2023年3月16日、第8期叡王戦挑戦者決定戦で永瀬拓矢に勝ち、藤井聡太叡王への挑戦権を獲得した。4月11日から始まった叡王戦五番勝負では、1勝3敗で藤井叡王からのタイトル奪取はならなかった[16]第36期竜王戦では、初めて1組への昇級を決めた。

第73期王将戦挑戦者決定リーグで5勝1敗で成績1位となり、藤井聡太王将への挑戦権を獲得したが、0勝4敗で終わった。

棋風

元来振り飛車党で、目標にしている久保利明を彷彿とさせる、捌きを重視する棋風であった。2013年あたりから相矢倉を中心として居飛車も指すようになり、2014年頃は、序盤で趣向を凝らした相矢倉を好んで指していた。2015年に入るとノーマル四間飛車も多用している。

序盤研究に定評があり、「菅井流」「菅井新手」と呼ばれる数々の戦法や新手を編み出していることでも有名で、対局相手にとっては的が絞りづらい棋風である。菅井流や菅井新手にはこれまで、後手角交換振り飛車#3三金型三間飛車[17]ゴキゲン三間飛車(うっかり三間飛車)[18][19]や後手番4手目△3二飛[注 2]石田流▲7六飛早浮き型[20][21]、対△3三角型左美濃▲7七角型石田流に▲9六歩~▲9八香の手待ち[注 3]、先手ゴキゲン中飛車対△6四銀対抗型に▲7七銀-8八飛型[22]、対超速3七銀のうち▲4六銀に対する△4四歩[23]、対超速3七銀▲5八飛型に対する△4二銀-3二金型~△2四歩[24][25]、対超速3七銀▲4五銀に△3一銀[26]、対ゴキゲン中飛車#▲5八金右超急戦の△5七歩[27]、対ゴキゲン中飛車#丸山ワクチン ▲2二角成に△同飛、▲6六歩に△4四角(6六の歩取りを受けさせての△2二飛から2筋逆襲)[注 4]中飛車左穴熊左玉の対三間で浮き飛車保留[注 5]、中飛車左穴熊の対向かい飛車に2手損居飛車戻し作戦(5八に振った飛車をまた2八に振り戻す)、相振り飛車[28]後手3四飛型三間:先手右矢倉に対し腰掛銀にして△4五歩~△6五歩の矢倉崩し[注 6][29]矢倉3七銀等から▲4六銀・3七桂型に対する▲4六銀に△4五歩▲3七銀△5五歩[30]横歩取り3三角8四飛型で△2三歩(持ち歩を手放すが△4二銀の活用が可能)、横歩取り3三角+8四飛型で△2三銀型から△2四飛のぶつけ狙い[31][32]など多数ある。

人物

4歳の頃からランニングを日課としている[33]

電王戦での二つ名は「振飛車電脳棋士」。ネットでは「勝率くん」と呼ばれることもある[34]

エピソード

2018年10月18日に行われた第77期順位戦B級1組7回戦(対局者は橋本崇載八段)にて、相手の駒を飛び越える形で角を動かし、トップ棋士の対局としては異例の反則負けとなった[35][36]

昇段履歴

昇段規定は、将棋の段級 を参照。

主な成績

獲得タイトル

タイトル獲得 合計 1期
タイトル戦登場
登場回数 合計 4回(2023年度王将戦まで)

棋戦優勝

全棋士参加棋戦
その他の一般棋戦
優勝合計 4回

将棋大賞

在籍クラス

順位戦・竜王戦の在籍クラスの年別一覧
開始
年度
(出典)順位戦(出典)竜王戦
名人A級B級C級0竜王1組2組3組4組5組6組決勝
T
1組2組1組2組
201069C2418-2246組--0-2
201170C2069-1256組--5-1
201271C2039-1265組--2-2
201372C1288-2275組--4-1
201473C1049-1284組--5-1
201574B2218-2293組--0-2
201675B2038-2304組--1-2
201776B1115-5314組--3-2
201877B1095-7324組--4-1
201978B10911-1333組--3-1
202079A 095-4342組--0-2
202180A 053-6353組--3-1
202281A 085-4362組--3-1
202382A 065-4371組--2-2
202483A 04381組--
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。
順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 )
順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。
竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。

年度別成績

公式棋戦成績
年度対局数勝数負数勝率(出典)
20104232100.7619[2]
年度対局数勝数負数勝率(出典)
20114936130.7346[3]
20124128130.6829[4]
20133929100.7435[5]
20145443110.7962[6]
20155034160.6800[7]
20164330130.6976[8]
20174831170.6458[9]
20184727200.5744[10]
20194832160.6666[11]
20203217150.5312[12]
2011-2020
(小計)
451307144
年度対局数勝数負数勝率(出典)
20213923160.5897[13]
20224025150.6250[14]
20234928210.5714[15]
2021-2023
(小計)
1287652
通算6214152060.6682[16]
2023年度まで

その他表彰

  • 第26回関西囲碁将棋記者クラブ賞(2018年)[40][41]

出演

テレビ

著書

脚注

注釈

出典

関連項目

外部リンク

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