服部平次

青山剛昌の漫画『名探偵コナン』の登場人物

服部 平次(はっとり へいじ)は、『週刊少年サンデー』で連載されている青山剛昌原作の漫画作品、およびそれを原作とするテレビアニメなどのメディアミックス名探偵コナン』の作品に登場する架空の人物。

服部 平次
名探偵コナン』のキャラクター
初登場単行本10巻File.2「西の名探偵」
(アニメ48話「外交官殺人事件(前編)」)
作者青山剛昌
松坂桃李
堀川りょう
比嘉久美子(幼少時代)
詳細情報
愛称平次
西の名探偵
平ちゃん
別名高校生探偵
性別男性
職業高校生探偵
家族服部平蔵
服部静華
国籍日本の旗 日本
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アニメでの声優堀川りょう、幼少時代は比嘉久美子が担当している。ドラマでの俳優松坂桃李が担当。

概要

大阪の高校生探偵。私立改方学園[注 1]高等部2年に在籍。推理力では同い年の工藤新一(江戸川コナン)と初めて遭遇した事件以来、「西の高校生探偵」「西の服部、東の工藤」と並び称されるほどである[注 2]

大阪弁[注 3]で喋る生粋の関西人であり、新一以上の熱血漢。色黒の肌は、本人曰く祖父譲りとのこと[注 4]。髪型は、天然にチョンと跳ねた前髪がトレードマーク[注 5]。父は大阪府警本部長服部平蔵。母は服部静華遠山和葉とは幼馴染(おさななじみ)で、初恋の相手[3]。大阪府寝屋川市在住[4]。誕生日は不詳[注 6]

元々はアニメ化に際して灰原哀を先に登場させる予定だったが、出番を延期された彼女に代わり(詳細は黒ずくめの組織#アニメにおける変更点を参照)、アニメ制作会社側から「ライバルキャラが必要」と言われて作成され、服部が先行登場することになった[5]。また、前述の寝屋川市在住という設定や後述の剣道部に所属という設定は、初登場当時に編集者として青山を担当していたプロデューサーの浅井認が同市出身で青山と同様に剣道少年だったことにちなんでおり、浅井は平次や和葉が話す大阪弁の監修も務めていたという[6][注 7]

大阪在住で出番が多いにもかかわらず[注 8]、本編では地元の大阪で事件に遭遇することは少ない[注 9]。コナンの正体が新一と知ってからは、頻繁に事件を持ち込んで東京を訪れるようになった。また、和葉の登場以降は基本的に彼女と共に登場しているが、単独で登場することもある。

名前の由来は、テレビドラマ『探偵物語』の服部刑事からで、名前の「平次」は「刑事」を時代劇『銭形平次捕物控』の銭形平次にひっかけた[8]

人物

コナン(新一)以上に勝ち負けにこだわる負けず嫌いな性格で[注 10]、推理勝負となると冷静さを失ってしまうことが多々ある[注 11]。平蔵に殴られ、「捜査妨害」として戒められてもあきらめなかったり[4][注 12]カンパニー(CIA)と関係がある事件であることが分かっても、コナンと同じく興味本位でのめり込む[13]。コナンに花を持たせる義理堅いところもあるが、彼が手柄を立てるとたいていは「ええトコ取り」と気にする[14]。短気で喧嘩っ早く、気にさわることをした者にすぐ怒鳴ったり絡んだりするため、白馬探からは「探偵としては血の気が多く先走りしがちで野蛮」と批判されたが、現場保存よりまだ生きているかもしれない人命を大事にする熱血漢である[15][注 13]。コナン(新一)と共通する言動も多い[注 14]。また、探偵としての活動時には報酬を受け取らない主義を徹底しており、「二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件」[9]や「鳥取クモ屋敷の怪」[18]では受け取った依頼料を返すため、わざわざ東京や鳥取まで訪れた。

「西の高校生探偵」を名乗ることとは対照的に、平蔵のことを公言することは嫌っており、大阪以外で彼の影響力を使ったのは小説版「京都新撰組殺人事件」のみ(「京都新撰組殺人事件」シリーズ第7話『さらなる脅迫状』200-201頁。)で、その際も地元警察(京都府警)に事件の捜査から外されそうになったためという、やむを得ない理由からである[注 15]。また、連続ドラマ版では和葉がそれで地元警察(警視庁米花署)を黙らせており、平次は最初こそ嫌がっていたものの、最終的にはそれに乗った[注 16]。その代わり、大阪では大滝警部から捜査情報を入手する、大阪府警の刑事やパトカーを私用で使うなど、かなり好き勝手にもやっている時がある[22][注 17]

一人称は「オレ」。口癖は「アホ」「ボケ」。周囲からの呼称集は、「服部(コナン / 新一から。コナンとして他人がいる時は『平次兄ちゃん[注 18]』)」、「平次(和葉・両親)」、「服部君(毛利蘭阿笠博士目暮警部高木刑事鈴木園子世良真純など)」、「大阪の〜(お友達・少年探偵・探偵君など)(灰原哀)」、「平次君(大岡紅葉)」、「平次・大阪の色黒ボウズ・大阪の探偵ボウズ・等(毛利小五郎)」、「平ちゃん(大滝警部)」、「(コナン君の)師匠(少年探偵団の光彦[注 19])」と呼ばれている。

関西人と思われないためにコナンたちに標準語敬語で話した静華[24]と違い、平次は初対面の人や年上に対しても敬語をあまり使わず、対等の口調の大阪弁で話すことが多い。また、東京式アクセントが苦手で、OVA消えたダイヤを追え!コナン・平次VSキッド!』では東京式アクセントによる標準語を練習するも、上手く発音できずコナンから駄目出しを受けている。さらに、東京を含む東日本の言葉にもあまり詳しくないようで、塩味を「しょっぱい」、果物を「水菓子」と表現することを知らなかった[12]

黄昏の館に多くの名探偵が招待された際、平次は中間テストが近いという理由で静華によって断られており、平蔵も静華も平次には探偵業よりも学業を優先させていることが分かる[25]

シャーロキアンであるコナンに対し、平次はエラリー・クイーンの推理小説を好んでいる[26][注 20]

第1回キャラクター人気投票での順位は5位(222票)。テレビ&劇場版15周年記念のキャラクター人気投票では3位、2012年連載800回記念キャラクター人気投票では5位だった。2017年、アニメ!アニメ!では「一番好きな関西弁キャラは?」と題するアンケートを実施した際、1位に服部平次が選ばれた。2020年5月7日発売の雑誌『ダ・ヴィンチ』2020年6月号で実施された「読者にしあわせを与えてくれたキャラ」ランキングでは10位を獲得した[27]

怪盗キッドとは映画とOVAで5回も接触しているが、原作での関わりは長らく無かった[28]。中森警部も同様であるが、同じく『まじっく快斗』の登場人物である白馬探とはキッドや中森に先がけて原作で対面している。なお、「怪盗キッドの瞬間移動魔術」においては、原作には無い大阪でテレビ中継を見るシーンがアニメで加えられた[29]

劇場版には第3作『世紀末の魔術師』で初登場し、以降、第7作『迷宮の十字路』・第10作『探偵たちの鎮魂歌』・第13作『漆黒の追跡者』・第14作『天空の難破船』・第17作『絶海の探偵』・第21作『から紅の恋歌』・第27作『100万ドルの五稜星』に登場し、全作で和葉とペアで出演している[注 21]

第7作・第10作・第21作・第27作ではコナンと共にメインを張っている。第13作・第14作・第17作では、コナンたちとは別行動で事件を捜査するサポート役として登場[注 22]

身体能力

高校では剣道部に所属している。達人の両親譲りでもある剣の腕前はかなり高く、犯人に日本刀で襲いかかられた際にはその鞘で打ち倒したことがあり[3]、大学生の間では「大阪府警の人間を1人で全員倒した」という噂が広まっていたほどであるほか、勢いよく振り下ろされて跳箱に食い込んでしまった相手の刀の上に乗るという体術も披露している[4]

法医学[26][30]民法[3]など法律の知識に詳しいほか、水泳[31]英語にもけている様子が散見される。特に英語については、英語教師のジョディ・サンテミリオンの正体を怪しんでコナンと一緒に彼女の自宅を訪れた際、ネイティブ並みの英会話を交わしている[32][注 23]。一方、料理については新一と同様、まったく駄目とのこと[16]

普通自動二輪車免許を持っており、作中で何度もバイクを利用している。愛車のバイクはKawasakiKLX250[注 24]。アクション描写がテレビ以上に盛り込まれる劇場版では、犯人を追跡する際に公道用である同車両でオフロード線路すら巧みに疾走する姿も描かれている[3]

対人関係

新一(コナン)との関わり

服部平次のライバルである工藤新一

世間で自分と比較されている新一と対決するため、毛利探偵事務所に乗り込んだのが初登場[33][注 25]。その時、たまたま毛利小五郎が引き受けた依頼先で起こった殺人事件のトリックの推理を披露した。しかし、その推理は巧妙に仕掛けられた犯人のミスリードだったうえ、風邪薬として飲まされた白乾児(パイカル)[注 26]で一時的に元の体に戻った新一に正しい推理をされ、敗北した形となった。推理勝負にこだわっていたために自分の負けを認め、新一の「真実は一つしかないのだから、推理に勝敗や優劣・上下関係は存在しない」という言葉に感銘を受けて考え方を改めた。ただし、「どちらが早く謎を解くか」という推理勝負自体は拘りが抜け切れておらず、好きな様子が描写されてもいる[11][12][注 27]

それ以降も新一のことをライバル視していたが、『ホームズフリーク殺人事件』の推理披露のためにコナンに時計型麻酔銃を撃たれ、その推理の途中で小五郎に殴られたショックによって目を覚ますと、その口調と論理の組み立て方からコナンの正体が新一であることに気づき、彼の事情を知ってからはコナンの良き協力者の1人となる[26]。プライベートで東京を訪れる際には毛利探偵事務所に泊めてもらったり食事を共にしたりする[34][15]ほか、偶然2人で同じ事件に遭遇した際には「探偵は探偵を呼ぶ」と言ってコナンとの再会に上機嫌になったり[18]と、ライバルというよりは親友同士のノリで理解しあっており[注 28]、コナンと共同で捜査や推理に当たり、事件を解決へ導くようになる。コナンが「工藤新一」として接することができる数少ない人物であり、コナンも平次のことを頼もしく思っている。コナンに影響されて「犯人を絶対自殺させない」と考えるようになる[30][22]。新一とは、中学校のスキー旅行の時に起きた事件の推理を巡ってすでに対決していたが、平次はそのことに気付いていない[10][注 29]

コナンが新一である事実を知っている一部の関係者以外の前では、真相が露見しないように気をつけてはいるが、ほぼ毎回コナンのことを「工藤」と呼んでしまい、周りの人間(特に蘭)から疑いの目を向けられてしまう。そのたびにコナンを冷や冷やさせているが、大阪人らしくボケで誤魔化している[30][16][注 30]。また、蘭がコナンの正体が新一であることに気づいた際、疑いを晴らそうと新一に変装して蘭の前に現れたが、結果は失敗に終わる[35][注 31]。しかし、蘭の心情[注 32]を認識しているところもあり、コナンが実は新一であることを直に話してくれるのを、蘭が秘かに待っているのではないかと考えている。蘭にだけはすべて話した方が良いとコナンに勧める発言も、時折見せる[36][37][注 33]

なお、平次自身はコナン(新一)の協力者(親友)として、阿笠博士灰原哀と共に黒ずくめの組織殲滅のために戦う意志を見せているが、2023年現在、組織とはまだ直接接触するまでに至っていない(新一に変装した時に仮装した組織のメンバー・ウォッカにその姿を見られているのみで[注 34]ベルモットも平次がコナンの協力者だと知りながら、殊更には言及していない[38][注 35])。組織へ大幹部「バーボン」として潜入中の公安警察捜査官である安室透(降谷零)は、平次との初対面時に警戒し、自分の素性を秘密にするようコナンへ合図していた[39][注 36]

平次は作中で2回、新一に変装している。1回目は蘭がコナンの正体が新一であることに気づいた際、疑いを晴らすべく新一に変装して蘭の前に現れたが、前述の通り結果は失敗に終わる。2回目はハロウィンの仮装パーティーの際、コナンからの携帯メールで新一への変装を頼まれ、実行した。このときは新一の母・有希子による特殊メイクで顔まで本人に似せており、声は別地点にいるコナンが平次のネクタイに仕込んだスピーカーからマイク越しに出していた。変装を解いた際にはこれらの仕組みを明かさなかったため、平次が単独でやったと思っている周囲はその出来に驚いた[38]

和葉との仲

和葉との仲は、新一との関係と同じく両想いであるが、和葉への感情が恋愛なのかは中々理解できない時期が続いた[注 37]。和葉のことは一途に想っているが、コナン(新一)や事件のことになると存在を忘れてしまうなど、初期は優先順位が若干低くもあった[19][32]。また、「子分」呼ばわりしたり、単なる付き添いであることを強調したりすることも多かった[22][16]

しかし、昔から心の底で和葉を意識しており、彼女がコナンや他の男と仲良くしたりすると嫉妬の炎を燃やし、推理に集中できなくなってしまう[16][注 38]。また、崖から落ちそうになった和葉を助けようとした際には、平次を助けようとした彼女から手の甲に破魔矢を刺されてもなお手を離さず、むしろ助けたい想いを強くしたことから、和葉が危険な状態に陥った際には自分よりも彼女の身の安全を優先させている[19]

その後、和葉がガラの悪い男たちに拉致された(ように見えた)際には「オレの和葉に何さらしとんじゃ!」と激高し、掴みかかっている[21][注 39]。このことで昔から和葉へ恋愛感情を抱いていると悟ったが、この出来事が戎橋の上だったことに加え、新一が蘭に告白した場所がロンドンビッグ・ベン前だった[42]ことから、ライバルとしての対抗心もあって彼に負けないシチュエーションで改めて和葉に想いを伝えるチャンスを待つようになり[14][43][44][注 40]、さらには修学旅行中の新一のサポートとして京都に来た際に清水寺で新一が蘭から頬にキスされる場面[注 41]を目撃したことで和葉に想いを伝えたいという気持ちが一層高まる[45]。怪盗キッドが絡んだ事件では、和葉に想いをどう伝えるかを意識するあまり自分の目の前にいる和葉がキッドの変装であることに気付かず、最終的には想いが伝わったと勘違いしてキスまでしようとしたが、寸前でコナンや諸伏に制止され、その後はキッドの変装と知って愕然としていた[28]

普段はポーカーフェイスで和葉へ対する心情もボケてしまうので、コナン(新一)や蘭をやきもきさせることも多い。しかし、平次が和葉への恋心を自覚してからは、コナンと蘭も平次が和葉へ動き出すことに安心するようにもなった。

ライバル

探偵でのライバルは前述のように新一であるが、剣道でのライバルは京都泉心高校[注 42]剣道部にいる沖田総司である[4]

服装

制服は学ラン。私服については時と場合によってさまざまな姿で登場している。愛用の野球帽には、シカゴ・ホワイトソックスをもじった「SAX」のロゴマークが入っている。和葉曰く「帽子のツバを正面に向けてる時は平次の推理スイッチオンで、後ろに戻した時がスイッチオフ」[46]

脚注

注釈

出典

外部リンク