有限責任あずさ監査法人

日本の東京都新宿区にある監査法人

有限責任 あずさ監査法人(あずさ、英語: KPMG AZSA LLC)は、2003年に設立された、日本の大手監査法人2010年に有限責任制度適用の監査法人に移行した。

有限責任 あずさ監査法人
KPMG AZSA LLC
KPMGのロゴ
あずさセンタービル(本部・飯田橋)
種類有限責任監査法人
市場情報非上場
略称あずさ、AZ
本社所在地日本の旗 日本
162-8551
東京都新宿区津久戸町1番2号
あずさセンタービル
設立1969年7月(朝日会計社として)
2003年2月(あずさ監査法人として)
業種サービス業
法人番号3011105000996 ウィキデータを編集
代表者高波博之(理事長)
資本金30億円(2023年6月期)
売上高1117億3400万円(2023年6月期)
営業利益7億3800万円(2023年6月期)
経常利益10億6600万円(2023年6月期)
純利益2億4900万円(2023年6月期)
純資産293億9100万円(2023年6月期)
総資産848億5100万円(2023年6月期)
従業員数社員・特定社員565名
公認会計士職員2,440名
公認会計士試験合格者等1,172名
その他1,879名
(2022年3月31日)
決算期6月30日
会計監査人三優監査法人
関係する人物尾澤修治
外部リンク公式サイト
特記事項:2023年6月期における数値[1]
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世界の大手監査法人を指す「Big4」の一つ、KPMGのメンバーファーム。いわゆる「4大監査法人」の一つである。

概要

大口クライアント

有価証券報告書より、最近の監査報酬が1億円超のクライアントを列挙。

素材・エネルギー
日本製鉄神戸製鋼所コスモエネルギーHD帝人太平洋セメントレンゴー住友金属鉱山AGC住友ゴム工業三井金属鉱業東洋紡TOYO TIRE住友理工ブリヂストン
医療・化学
武田薬品工業住友化学エア・ウォーター大塚HD第一三共資生堂日東電工東ソー日本ペイントHD中外製薬レゾナックHDテルモ住友ベークライトサワイグループHD住友ファーマJSR参天製薬カネカニフコユニ・チャーム
食品・アグリ
キリンHDアサヒグループHD味の素マルハニチロ伊藤ハム米久HD
自動車・機械・部品・エレクトロニクス
パナソニックHD日本電気本田技研工業富士フイルムHD小松製作所住友電気工業三菱重工業三菱電機TDK川崎重工業コニカミノルタマツダミネベアミツミ東京エレクトロンSUBARU住友重機械工業PHCHDセイコーグループジャパンディスプレイ日立造船三井海洋開発ジーエス・ユアサコーポレーション三井E&SマキタナブテスコサトーHDスタンレー電気
不動産・建設・レジデンス
三井不動産積水化学工業住友不動産ミライト・ワン大成建設日揮HD
物流・インフラ
東日本旅客鉄道近鉄グループHD阪急阪神HD中部電力東京瓦斯大阪瓦斯日本航空東武鉄道名古屋鉄道商船三井相鉄HDセイノーHD近鉄エクスプレス南海電気鉄道京王電鉄中国電力三井倉庫HD日本貨物鉄道
生活・サービス
日本郵政セコムバンダイナムコHDセガサミーHDKNT-CTHD、TREHD、TSIHDコクヨタカラトミーイトーキ住友三井オートサービスリゾートトラストパスコオリエンタルランド
情報・通信
日本電信電話NTTデータグループ電通グループ光通信凸版印刷博報堂DYHDSCSKNECネッツエスアイTBSHD
卸売・小売・外食
住友商事セブン&アイHD双日メディパルHDヤマダHDH2OリテイリングアルフレッサHD髙島屋岩谷産業関西フードマーケットトリドールHDシップヘルスケアHD
金融・保険
三井住友FGオリックス三井住友銀行MS&ADインシュアランスグループHD三井住友トラストHD大和証券グループ本社三井住友信託銀行三井住友ファイナンス&リース三井住友海上火災保険第一生命HDマネックスグループゆうちょ銀行あいおいニッセイ同和損害保険かんぽ生命保険山口FG大和証券NECキャピタルソリューションジャックス東海東京フィナンシャルHDライフネット生命保険ひろぎんHDちゅうぎんFG北洋銀行

特徴

法人及びクライアントの特徴として以下の点が挙げられる[2]

  • 朝日新和時代(1980年代まで)は太田昭和と並んで保守的な社風であったが、営業力を最重視するアンダーセンとの提携によって外資色が急に強くなったといわれる。
  • 上場クライアントの純利益合計では、あずさより数の多い新日本・トーマツを抑えてトップである。
  • 企業グループの中では、創業者の出自から住友グループ三井グループに強い(後述)。
  • 住友グループに関係し、昔から大阪方面に大口クライアントを多く持つ。
  • 現在は名古屋の企業にも強い。これはみすず監査法人解散の際、名古屋事務所に属していた中部電力・名古屋鉄道・東邦瓦斯など大半の在名クライアント及び人員を受け入れ、事務所の規模を急拡大させたからである。
  • 中国地方に強く、マツダ・中国電力をはじめ広島銀行広島ガス広島電鉄大創産業福山通運青山商事など在広企業をほぼ独占している。

経営成績の推移

人員数・社員数には、特定社員を含み、公認会計士・公認会計士試験合格者・会計士補のいずれにも該当しない職員を含まない。

決算期業務収入うち監査報酬
(1項業務)
うち非監査報酬
(2項業務)
営業利益純利益人員数うち
社員数
被監査会社数うち
金商法監査
2011年6月期880億686万円729億5068万円150億5618万円39億7658万円2億4403万円4527人633人3276社797社
2012年6月期828億7171万円686億3225万円142億3946万円35億3211万円2億269万円4465人616人3308社783社
2013年6月期800億8193万円677億5741万円123億2452万円20億7283万円21億5224万円4174人609人3245社775社
2014年6月期807億3470万円674億3169万円133億300万円23億9571万円6億9578万円4158人607人3265社779社
2015年6月期831億5700万円681億100万円150億5600万円16億8000万円22億5200万円4246人604人3325社788社
2016年6月期898億9500万円698億7500万円200億2000万円15億9500万円7億1400万円4360人606人3402社806社
2017年6月期959億5200万円721億6000万円237億9200万円47億8500万円59億9400万円4462人614人3481社799社
2018年6月期971億2100万円765億4900万円205億7100万円4億8400万円13億6900万円4472人603人3558社814社
2019年6月期1004億9300万円782億8500万円222億800万円18億500万円7億7200万円4440人598人3614社808社
2020年6月期1059億7000万円827億7000万円231億9900万円24億5200万円9億8500万円4418人592人3635社819社
2021年6月期1052億8100万円832億9600万円219億8500万円27億9800万円13億500万円4385人595人3638社814社
2022年6月期1110億9800万円854億3200万円256億6500万円13億5200万円3億1100万円4328人594人3482社754社
2023年6月期1117億3400万円875億3200万円242億200万円7億3800万円2億4900万円4337人578人3423社714社

沿革

現在のあずさ監査法人の母体とも言える監査法人朝日会計社の創業者尾澤修治住友銀行の出身であり、そのため創業以来より住友系のクライアントを多く持ち、大手監査法人の一角を占めていた。海外提携先も当時「Big8」と呼ばれていた会計事務所の一つ、アーサー・ヤングであった。一方、新和監査法人は規模としては準大手であり、中堅のBDOインターナショナル及びグラントソントン・インターナショナルという2つの会計事務所と提携していた。監査法人朝日会計社と新和監査法人は、当時の首相・中曽根康弘内閣の公社民営化による設立企業を受け入れる素地を整えるため、1985年(昭和60年)に合併。当時、国内の監査法人は旧公社クラスの企業の監査に対応できるほどの規模を有していなかったため、監査法人の大小を問わず合併が相次いでいた。中でも朝日と新和はいち早く合併を成功させ、結果としてJR東日本NTTをクライアントとして獲得したが、合併後の監査法人朝日新和会計社はアーサー・ヤング、BDO、グラントソントンの3つと提携することとなった。当時、日本企業の海外進出はまだ少なく、逆に外資系企業の日本進出が多かったため複数の海外提携先を抱えても問題は生じなかったと言われる。なお対外的には国際部を旧朝日系のもの(アーサー・ヤング)に統一し、旧新和系の国際部は国内部門との通し番号を割り当てた。これにより国内クライアントの海外活動への対応は、アーサー・ヤングに一本化されていた[3]。しかし、1989年(平成元年)にメイン提携先であったアーサー・ヤングはアーンスト・アンド・ウィニーと合併し、アーンスト・アンド・ヤングとなった。形式上は対等合併であったが、実質的には当時経営難に陥っていたアーサー・ヤングをアーンスト・アンド・ウィニーが救済したものであるため、アーサー・ヤング側の立場は弱かった。ところで合併前のアーンスト・アンド・ウィニーは当時太田昭和監査法人と提携していたため、太田昭和と朝日新和の2法人がアーンスト・アンド・ヤングを海外提携先とする構図になった。すると事務所内において立場の強い旧アーンスト・アンド・ウィニー側が、従来の提携先であった太田昭和を国内業務において優先するようになり、朝日新和側に不利益な結果をもたらすこととなった。更に旧アーサー・ヤング側の人員は多くがリストラに遭ったため、朝日新和は従前の人的関係をも失うこととなった。なお、この時に太田昭和側はこれを解消すべく朝日新和との合併を持ちかけたが、大手同士の合併は寡占を招くとして大蔵省(当時)は許可しなかった。

かくして、朝日新和はアーンスト・アンド・ヤングとの提携を1993年(平成5年)に解消し、新たにアーサー・アンダーセンと提携した。同時にアンダーセンの国内直営事務所であった井上斎藤英和監査法人と合併し、朝日監査法人となった。アンダーセンは重複提携を認めない方針であったため、新和監査法人からの付き合いであったBDO及びグラントソントンともここで提携を解消。その後BDOは三優監査法人、グラントソントンは元監査法人(現 太陽有限責任監査法人)へと提携先を移している。その後アーサー・アンダーセンは2001年(平成13年)に起きたエンロン事件により打撃を受け、翌2002年(平成14年)に解散した。これにより朝日監査法人は海外提携先を喪失し、またしても新たな提携先を探さなければならなくなった。一方その頃、太田昭和監査法人はKPMGと提携していたセンチュリー監査法人と2000年(平成12年)に合併。これにより発足した監査法人太田昭和センチュリー(2001年より新日本監査法人)はアーンスト・アンド・ヤング及びKPMGという2つの会計事務所と提携することとなり、前述したアーンスト・アンド・ヤングが太田昭和及び朝日新和と提携していた時とは逆の構図で、KPMGに不利益な結果をもたらすこととなった。

ここに朝日監査法人とKPMGの利害関係は一致し、朝日は海外提携先にKPMGを選定した。この際にいったん新日本監査法人の旧センチュリー系グループが独立する形で設立された(旧)あずさ監査法人と朝日監査法人とが合併する形で、2004年(平成16年)に現在のあずさ監査法人が設立された(ただし存続法人は朝日監査法人である)。これにより日本の4大監査法人と海外のBig4の提携関係の「ねじれ」は解消されることになった。なお旧センチュリー監査法人のクライアントには、パナソニック三菱電機本田技研工業のようにあずさへ移ったものもあれば、日立グループ雪印乳業(現 雪印メグミルク)のように新日本にそのまま残ったものもある[2]

  • 1949年(昭和24年) - ピート・マーウィック・ミッチェル(PMM、後のKPMG)日本事務所を東京に設立。
  • 1969年(昭和44年)7月 - 監査法人朝日会計社設立。
  • 1974年(昭和49年) - 中央共同監査法人設立[4]
  • 1974年(昭和49年)12月 - 新和監査法人設立。
  • 1976年(昭和51年)12月 - 監査法人朝日会計社がアーサー・ヤングと提携。
  • 1984年(昭和59年)6月 - アーサー・アンダーセンが英和監査法人を設立[5]
  • 1985年(昭和60年)7月 - 監査法人朝日会計社と新和監査法人が合併し、監査法人朝日新和会計社となる。
  • 1986年(昭和61年)7月 - 監査法人朝日新和会計社が監査法人福岡センターを吸収合併。
  • 1987年(昭和62年) - 中央共同監査法人と監査法人井上達雄事務所が合併し、井上斎藤監査法人となる[4]
  • 1989年(平成元年)10月 - 監査法人朝日新和会計社が、札幌中央監査法人・監査法人横浜関内監査事務所・名古屋第一監査法人を吸収[6]
  • 1989年(平成元年)12月 - 海外提携先であったアーサー・ヤングがアーンスト・アンド・ウィニーと合併、アーンスト・アンド・ヤングとなる。
  • 1991年(平成3年)9月 - 井上斎藤監査法人と英和監査法人が合併、井上斎藤英和監査法人となる。
  • 1993年(平成5年)10月 - 監査法人朝日新和会計社と井上斎藤英和監査法人が合併し、朝日監査法人発足。アーンスト・アンド・ヤングとの提携を解消し、アーサー・アンダーセンと提携。
  • 2002年(平成14年)8月 - アーサー・アンダーセン解散により、海外提携ファームを失う。
  • 2003年(平成15年)2月 - 新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)よりKPMGの監査部門が独立し、あずさ監査法人を設立。
  • 2003年(平成15年)4月 - 朝日監査法人がKPMGのメンバーファームに正式加入。
  • 2004年(平成16年)1月 - 朝日監査法人とあずさ監査法人が合併し、法人名をあずさ監査法人として発足。
  • 2010年(平成22年)7月 - 有限責任監査法人に移行し、名称を有限責任 あずさ監査法人に変更。
  • 2013年(平成25年)1月 - 本部機能をあずさセンタービル(飯田橋オフィス)に残したまま、東京事務所を大手町フィナンシャルシティサウスタワー(大手町オフィス)へ移転[7]

歴代理事長

氏名期間備考
1岩本繁2004年1月 - 2004年4月東京経済大学経済学部卒、朝日監査法人理事長から横滑り
2佐藤正典2004年5月 - 2010年5月早稲田大学商学部
3内山英世2010年6月 - 2015年5月早稲田大学政治経済学部
4酒井弘行2015年6月 - 2019年6月慶応義塾大学経済学部
5高波博之2019年7月 - 2021年6月中央大学商学部卒
6森俊哉2021年7月 -早稲田大学法学部卒、現職

出来事

NOVA不正会計事件

2007年4月に破綻した英会話学校NOVA(当時ジャスダック市場上場)の2007年3月決算で、係争事件を「企業の存続に重大な影響を与えるリスク」として開示していなかったことについて、不適切な情報開示として当時の担当監査法人であったあずさ監査法人が公認会計士協会の調査を受けている[8]

ユニコ・コーポレーション破綻事件

2006年10月上場会社ユニコ・コーポレーションが利益を優先し、リース資産や融資に対して適切な自己査定をしていなかったとの理由で会社に対しあずさ監査法人から債務超過の指摘を受け事実上破綻した。記者会見の席上で当時の社長は「監査法人の指摘は青天の霹靂」と批判したが、会社は事実上のワンマン経営であり不正会計の発覚が遅延しただけとの見方もある[9]

株価操作事件

2004年、キャッツの株価操作事件に深く関与していたとして担当会計士が会計士協会から会計士資格の登録抹消の処分を受けている。逮捕された会計士が、あずさ監査法人の業務管理部門にいたこともあり、当時、新たに監査契約を締結したキヤノンが事情を聞くなど大きな波紋を呼んだ[10]

オリンパス事件

2012年7月、金融庁はあずさ監査法人に対し業務改善命令を出した。これはオリンパスによるバブル期以来長期の1,000億円以上の損失隠しがあるにもかかわらず当時から2009年3月期までずっと適正意見を出し続け、さらに新日本監査法人に経営上の疑問点を引き継がなかったためである[11][12]

継続的専門研修制度(CPE)不正受講

2020年9月、所属する会計士45人が、公認会計士法で義務づけられた「継続的専門研修」(CPE)のオンライン講座を、2つの講座に同時にログインして、2つを受講したと偽るなどしたことが判明した。あずさは当該の会計士たちを減給などの懲戒処分にすることを検討し、高波博之理事長ら役員10人の報酬をカットするとした[13][14]。また、日本公認会計士協会は他の監査法人でも同様の不正が行われていないか調査を行うとした[15]

法人名称の由来

法人名の「あずさ」は、弓の材料に用いられる丈夫で弾力のある樹木「梓(あずさ)」にあやかり、強靱な組織力と柔軟な創造性をもって、企業経営のA to Zをサポートしたいという願いをあらわす。[要出典]

脚注

出典

外部リンク

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