戸外制作
戸外制作(こがいせいさく)とは、絵画を戸外で描くという意味であり、日本では美術書などでフランス印象派などの絵画スタイルを説明するときに使用される表現である[1][2]。フランス語では、オンプレネール (en plein air) またはプレネール (plein air) である[3]。 en plein air (英語:in the open air) を直訳すれば「戸外で」または「野外で」、「屋外で」という意味だが、このフランス語は他言語圏を含めた美術界では、絵画を戸外で制作するという意味に使われる。ただし、フランスではスポーツなど他の屋外活動にも使うので、曖昧さをさけるため戸外制作をpeinture sur le motif (英語の painting on the ground に当たる)と表現することもある。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9d/Claude_Monet_-_In_the_Woods_at_Giverny-_Blanche_Hosched%C3%A9_at_Her_Easel_with_Suzanne_Hosched%C3%A9_Reading_-_Google_Art_Project.jpg/300px-Claude_Monet_-_In_the_Woods_at_Giverny-_Blanche_Hosched%C3%A9_at_Her_Easel_with_Suzanne_Hosched%C3%A9_Reading_-_Google_Art_Project.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a3/Artist_Liron_Sissman_painting_en_plein_air_in_Ringwood_State_Park.jpg/220px-Artist_Liron_Sissman_painting_en_plein_air_in_Ringwood_State_Park.jpg)
由来と背景
画家が戸外で絵を描いていたのは昔からだが、19世紀中頃のフランスでは、自然光の中で仕事をすることがバルビゾン派、続いて印象派にとってはとくに重要な意味を持つようになった。しかも、バルビゾン派は仕上げをアトリエで行ったのに対し、印象派になるとすべてを戸外で仕上げる傾向があった[5]。とくに、クロード・モネ[6]やカミーユ・ピサロ、ピエール=オーギュスト・ルノワールなどは戸外制作を重視し、戸外の大気と光の中で多くの作品を描いた。これに対し同じ印象派でもエドガー・ドガは、戸外制作には否定的であった[7]。
戸外制作が流行したのは、1870年代にチューブ入り絵の具が普及したことによる[8]。それ以前は、画家は乾燥した顔料の粉をアマニ油とともに擦ったり混ぜたりして自分用の絵の具を作り、動物の膀胱に入れて持ち歩いていた。さらにフランス印象派の戸外制作には、鉄道の発達でパリから気軽に郊外に出掛けられるようになったことも大きく寄与している[9][6]。
19世紀後半におけるイギリスのニューリン派も、戸外制作で知られている[10]。この時期には「イーゼルボックス」(フランス式イーゼルボックス又は野外イーゼル)も登場した。最初の考案者は不明だが、このイーゼルは脚が折りたたみできる上に、絵の具箱とパレットが組み込まれており、森や丘陵になどへの携帯に最適であった。イーゼルボックスは今日でも製造されており、ブリーフケースサイズで収納しやすいので、自宅用としても使われる[11]。
19世紀後半から20世紀初頭には、オールドライム派のようなアメリカ印象派も、戸外制作に熱心であった。この時期のアメリカ印象派には、ガイ・ローズ、ロバート・ウィリアム・ウッド (画家)、マリー・デナール・モーガン[12]、ジョン・ギャンブル[13]、 アーサー・ヒル・ギルバートがいる。カナダのグループ・オブ・セブン と トム・トムソンも戸外制作の唱道者であった。
ロシアでは、ヴァシーリー・ポレーノフ、イサーク・レヴィタン、ヴァレンティン・セローフ、コンスタンチン・コローヴィン、 イーゴリ・グラバーリが戸外制作で知られている。
日本では、フランス留学から帰った黒田清輝、久米桂一郎などが、1896年(明治29年)に、白馬会(はくばかい)を結成し、印象派とアカデミズム絵画を折衷した「外光派」と呼ばれた。彼らは戸外制作によって、明るい光に満ちた感覚的な表現を行なった[14][15]。
著名な画家
フランス
イギリス
- ジョン・コンスタブル
- ラクストロウ・ダウンズ
ドイツ
スペイン
アメリカ
- ジョージ・イネス
- アンドリュー・ウィンター
- ロバート・ウィリアム・ウッド (画家)
- カール・エイテル
- メアリー・カサット
- ジョン・ギャンブル[13]
- アーサー・ヒル・ギルバート
- ロバート・クラニー
- ジョン・シンガー・サージェント
- アンソニー・シーム
- ウィリアム・メリット・チェイス
- ステファン・バウマン
- ウィリアム・プレストン・フェルプス
- エドガー・ペイン
- マーヴィン・マンガス
- ウィラード・メトカーフ
- マリー・デナール・モーガン[12]
- マリー・アグネス・ヤーキス
- ガイ・ローズ
カナダ
- トム・トムソン
- ラルフ・ウォレス・バートン
ロシア
オーストラリア
日本
ギャラリー
- ヴィルヌーブの池の水辺で描くアンリ・ビヴァ 1903年
- アンリ・ビヴァ 『ヴィルヌーブの朝』 1905-06年頃 153.7 × 127 cm 個人蔵
脚注
参考文献
- 島田紀夫『印象派美術館』(初)小学館、2004年。ISBN 4-09-699707-2。
- 「美術検定」実行委員会『西洋・日本美術史の基本』美術出版社〈美術検定 公式テキスト〉、2008年8月15日。ISBN 978-4-568-24023-8。
関連記事
- アートコロニー
- ハイデルベルク派
外部リンク
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