巨峰(きょほう)とは、日本原産の生食用ブドウ品種の一つである。
大井上理農学研究所の大井上康が、石原早生♀(ヨーロッパブドウ ヴィニフェラ種 Vitis vinifera アメリカブドウ ラブルスカ種 Vitis labrusca)とセンテニアル♂(ヨーロッパブドウ ヴィニフェラ種 Vitis vinifera)を交配させ作出した品種である[1]。開発当初は「石原センテニアル」という品種名が付けられていたが、商品名であった「巨峰」の名称が広く普及したために現在では「巨峰」が品種名として定着している。名称の由来は大井上理農学研究所から見える富士山の雄大な景観にちなんで作出者の大井上康によって命名された。
他の種類のブドウと比べて、実が大きいことから、「ブドウの王様」とも広く賞賛されている。巨峰の形質濃度はヨーロッパ種が3⁄4、アメリカ種が1⁄4である。
1粒の重量は10g〜12g程度で、房の重量(粒数)と糖度には関連性があり、数が増えすぎると糖度は低下し色は薄くなる。一方、粒数を少なくすると色は濃くなり糖度は高くなるが生産者の手間が増え、単位面積当たりの収穫量は低下してしまうので、収量と味のバランスを考慮した条件で栽培が行われる。
果樹園では、一房を30粒から35粒程度に調整し重さが400g-450gになるように作られる。粒の数が多すぎた場合には約800gになる場合もある。35粒400gで作ると、糖度が上がり果皮の色も濃い紫色になるが、大房(800g)になると色が薄く赤みがかかり品質的に等級が落ちてしまう。1950年代(昭和30年頃)に栽培価値が無いとされ種苗名称の登録が拒絶されたのは、房の粒数を制限する栽培方法が開発されておらず、開花したままの房で生育させたため、糖度は上がらず色も薄く粒もまばらな果実(房)しか収穫出来なかった事が原因である。
粒の肥大が止まってから成熟するまでに、黄緑色 - 赤紫色 - 黒紫色 と変化する。成熟した房であっても、中には赤紫色の粒や黄緑色の粒が混ざっていることがある。この着色不足の原因は解明されていないが、光量不足、病気[2]、温暖化、過剰な着果等の諸説があるが、台木の改良[3]や幹の樹皮を環状に剥離することで着色不足を改善することが可能な栽培技術も開発されている[4][5]。また、色の濃さと糖度は正の相関関係にあると報告されている[6]。
「巨峰」は日本巨峰会によって商標登録されているが、「『巨峰』という語は、ぶどうの一品種である本件品種のぶどうを表す一般的な名称として認識されているものと認められる」と判示されており[7]、1950年代の不遇を乗り越えて、普通名称化したとされる。
山梨県山梨市が生産量日本一である。※ 農林水産省「果樹生産出荷統計」より(平成16年度)
※ 農林水産省「果樹生産出荷統計」より(平成16年度)
海外ではカリフォルニア州のセントラル・バレーやチリ、及び台湾の彰化県 大村郷, 大韓民国の慶尚北道 永川市, 慶山市, 金泉市, 忠清北道 永同郡等。
近年では栽培技術が向上し[9][10][5]冬季に人工照明での栽培なども行われる[11]。全国各地で栽培されるようになってきているが、気候条件が商品価値を大きく左右し栽培する農家の技術レベルの違いによって品質の優劣は著しい。栽培面積的には長野県が多く、山梨県ではより高く売れる様々な品種のぶどうへの転作が進んでいる。また、巨峰を親とした大粒ブドウの新規品種(例:ナガノパープル、ピオーネなど)の開発と栽培も行われている[12][13]。
発祥の地である久留米市では、株式会社巨峰ワインにより巨峰100%のワインが生産されている[14]。
西アジア種群 ヨーロッパ・ブドウ ヴィニフェラ種 |
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北米種群 アメリカ・ブドウ ラブルスカ種 | |||||||||||||||
東アジア種群 |
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雑種 |
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