安室透

日本のメディアミックス作品『名探偵コナン』に登場する架空の人物

安室 透(あむろ とおる)は、『週刊少年サンデー』連載の青山剛昌の漫画『名探偵コナン』およびそれを原作としたメディアミックス群に登場する、架空の人物。本名は降谷 零(ふるや れい)[注 1]

安室 透 / 降谷 零 
名探偵コナンのキャラクター
初登場FILE793「プライベートアイ」
作者青山剛昌
古谷徹(667 - 1110話、劇場版第20作 - 第26作
伊瀬茉莉也(第953話以降の幼少時代)
詳細情報
別名バーボン
性別
職業探偵(安室透)
喫茶店アルバイト(安室透)
公安警察官(降谷零)
肩書き探り屋(バーボン)
国籍日本の旗 日本
年齢29歳
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アニメでの声優古谷徹(667 - 1110話、劇場版第20作 - 第26作)、第953話以降の幼少時代は伊瀬茉莉也

概要

年齢は29歳。独身。右利き。

本職は公安警察の頂点・警察庁警備局警備企画課(ゼロ)に所属する警察官。階級は警部[注 2]。部署内での役職は不明[注 3]。公安警察の立場上、表立って捜査に参加できないため、目暮警部などの警視庁捜査一課の面々には同じ警察官であることを知られていない。

「安室透」としての表の顔は私立探偵で、喫茶店「ポアロ」にてアルバイトしながら毛利小五郎に弟子入りする形で江戸川コナンたちと接点を持つようになる[7][注 4]。「安室透」名義で黒ずくめの組織にも潜入捜査を行っており、組織でも能力を認められ、バーボンというコードネームを得て「探り屋」として活動している。以上の活動から、作中キャラクターの解説では「トリプルフェイス」とも称されている。

警視庁警察学校での成績は常にトップの優等生であったことが元捜査一課刑事の伊達航によって間接的に語られており[8]、単行本92巻の巻末では警察学校を首席で卒業している可能性が示されている。伊達とはその時の同期で、長らく音信不通でありながらも、互いを気にかける友人同士であった[注 5]。また、殉職した元捜査一課刑事にして爆発物処理班に所属していた経歴も持つ松田陣平とも警察学校時代の友人で、彼に爆弾解体の方法を教えられた[9]

安室としての初対面時に、世良真純からは「どこかで会った事ないか?」と聞かれたり、以前に会った男性と「似てる気がする」と言われたりしたが、どちらも「今日が初めて」「人違い」と一蹴している[10]ほか、佐藤美和子からも「どこかで会った事ない?」と聞かれたが、「今日が初めて」と一蹴している[11]。また、怪盗キッドとはベルツリー急行でシェリーに変装した姿の彼とは会っている[12]が、変装していないキッドとの初対面時に「君のその感じ…どこかで会った気がするんだが…」と呟いている[13]

あの方」とベルモットの間に「重大な関係」がある事実を突き止めており、この「重大な関係」を組織内に知られるとベルモットにとってはかなり不都合な事態となってしまうらしいことから、それを挙げて彼女に個人的な取引を何度か行っている[6]

生前の宮野厚司エレーナ明美とも面識があり、ベルツリー急行でシェリー(正確にはキッドの変装)と対面した際には、「さすがヘル・エンジェル(エレーナ)の娘さんだ…よく似てらっしゃる…」と声をかけていた[12]。エレーナとは少年時代から親しかったようで、「れいくん」と呼ばれており[14]、安室も彼女に何らかの好意を抱いていたのか、女医をしていたエレーナと会うために故意に負傷して彼女の病院を訪れていた[15]

公安の研修の一環として見せられた未解決事件の捜査資料の中に羽田浩司殺害事件の資料があったことから、唯一紛失している証拠品として傷のついた角行のことを知っており、若狭留美が落とした駒(角行)を見て同事件の実行犯がいると察し[1]、その後も若狭のことを気にかけている[16]

スピンオフ作品『名探偵コナン ゼロの日常』では主人公を担当。

名前は『機動戦士ガンダム』の登場人物であるアムロ・レイとその担当声優である古谷徹にちなむ[17][注 6]

人物

髪は金色、肌は褐色であり、かつて宮野エレーナハーフと認識されているが、本人も否定せず開き直っている[15]

一人称は基本的に「僕」[注 7]だが、感情的になると「俺」になる場合がある他、沖矢と対峙した際には「私」も使用している[6]

情報収集・観察・洞察にけた切れ者で、赤井秀一からも「敵に回したくない男の一人」と評される程[6]。特に知識は科学的、医学的なものを含めてかなり豊富である他、ロシア語も日常会話程度なら話せる[19]。また、盗聴器の発見[20][4]ピッキング[21]ナンバープレートによる車種の特定[22]なども簡単にこなしている。話術も巧みで、何気ない会話から相手を心理的に誘導して情報を収集する姿が散見される。趣味のボクシングは、犯人を一撃で行動不能にするほどの腕前である[22]料理も上手で、アニメでは「ポアロ」での勤務中に作ったハムサンド美味おいしさがパン屋の男性(声 - 坪井智浩)に着目され、その作り方を知りたいという熱意のあまり尾行までされた。そのことを打ち明けられた際には、安価な食材と一工夫で済むその作り方を本職さながらの手際の良さで男性に教えている[23][24]。一方、自己を過信してしまう一面も持っており、警察学校時代の伊達からは「無茶をして死んでるかも」と心配されていた[8]

警察官を目指すようになった理由は消えた初恋の相手であるエレーナを探すため。

愛車は白のマツダ・RX-7 (FD3S)。ナンバーは「新宿330 と7310」で、初代担当声優である古谷徹の誕生日に当たる。

赤井秀一との関係

赤井秀一とは彼の潜入捜査中からのライバルで[注 8]、「あれ程の男なら(スコッチに)自決させない道をいくらでも選択出来ただろう」として赤井の実力を認めてもいたが[25]、同僚であったスコッチが死亡する一因となった赤井やFBIのことを憎んでいる[注 9]。ただ、実際は自身の足音がスコッチの自決の直接的な原因であることを知らない。

赤井の死が黒ずくめの組織に確認された後も、その情報を信じようとはしなかった。そこで、「あの方」の許可を得たうえでベルモットの協力を取り付け、独自の調査で赤井の生存を確信すると、工藤邸に乗り込んで沖矢昴を追及した。しかし、赤井本人やコナンと彼らの協力者たち(工藤優作工藤有希子阿笠博士)の策略によって「赤井と沖矢が同一人物である」という自分の推理を覆されたうえ、逆に赤井に自らの正体を看破されてしまった[6]

コナンとの関係

前述の赤井の生存を追及する過程で小五郎や警察関係者を事件の真相へ誘導するコナンに興味を持ち始め、その後は「恐ろしい男」だと認識するまでに至った[26][注 10]。また、コナンが腕時計型麻酔銃を小五郎に撃とうとしているところを目撃したことから、「眠りの小五郎」のトリックを見破っており[21]、コナンとは対等に推理を話したり、ラムについて聞かれた際にラムを「せっかち」だと教えたりする他[27]、怪盗キッドの使ったトリックについて、「この程度の推理…彼ならもう解いている」と考えるなど[28]、彼の能力や性格を把握したうえで信頼している。

特に、劇場版ではコナンの捜査能力を頼りにする傾向が高く、第22作『ゼロの執行人』では、偽造した証拠で小五郎を容疑者に仕立て上げ、家宅捜索中の公務執行妨害を理由に風見に彼を逮捕させることで、コナンを捜査協力に駆り立たせた他、第25作『ハロウィンの花嫁』でも、自身に着けられた首輪爆弾を解除し犯人を逮捕するため、警察学校の同期4人(警察学校組)と共に遭遇した過去の爆弾事件について情報を開示して、捜査協力を依頼している。また、第26作『黒鉄の魚影』では、バーボンとして得た黒ずくめの組織の動向をコナンに教えることで捜査及び組織の作戦妨害に役立てている。

反響・評価

安室は女性ファンからの人気が高く、彼女らは「安室の女」と呼ばれている[29]。劇場版第22作『ゼロの執行人』を鑑賞して安室を「(興行収入)100億の男」にしたいとの動きや、降谷姓のハンコが多数売れるといった現象も起きた[30]。ライターの檜原聖司は、「安室登場以前にはいなかったようなキャラであることや、女性の影がなくて安心して好きになれる」という見方を取り上げている[31]。『おたぽる』は、2005年に『コナン』の二次創作同人誌を巡ってサークル小学館にトラブルがあったときとは違い、安室の人気で大きく変化した週刊少年サンデー編集部側が同人誌について肯定的に言及したりするウェルカムな姿勢に賛同した[32]。『東京新聞』は人気の核の1つは腐女子[注 11]、漫画評論家・同人誌研究家の三崎尚人は劇場版第20作『純黒の悪夢』が話題になったことによって安室と赤井が魅力的な脇役として同人界隈でも沸き、須川亜紀子は全員がボーイズラブを好んでいるわけではなく多層的な見方でツボを押さえ、キャスティングも含めて『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイシャア・アズナブルの関係を連想させると評している[33]

『アニメ!アニメ!』は人気の理由に見た目の良さに加え「料理、車の運転、テニスギターの演奏、ボクシング」を完璧にこなす超人で、裏の顔を持つ「トリプルフェイス」が心をくすぐられ[34]、近藤智子は盗聴、尾行、ピッキング、爆弾解体もお手のものな安室だが、「赤井秀一が目の前に現れると感情をむき出し、冷静さに欠ける一面」が「愛しいポイント」で、『純黒の悪夢』での赤井との格闘シーンが大きな話題となって2人とも人気が不動のものとなり、トリプルフェイスに加えて警察学校時代の「同期4人がすでに殉職している」過去に「ファンの胸が締め付けられてしまいます」という[29]

宮崎栞は、初登場の事件で頼りないウェイター、イヤミな探偵、小五郎の弟子として慕う好青年の3つの異なる顔を見せ、「その全てが『降谷零』〔〕持つ目的のための演技だったと思うと、彼の底の知れなさ」にヒヤリとさせられ、トリプルフェイスなこの男は「一人で三倍、いや三乗の魅力を持つ男」だと評した[35]

小新井涼は、安室はミステリアスさなどから元々女性人気が高かったが、『ゼロの執行人』終盤における彼女の存在の有無に対する安室の回答は「多くの新たな女性を安室の女にした」と指摘し、同作を繰り返し鑑賞させたことがヒットにつながった一因で、それはまさに「国民の義務」「納税」みたいなものだと言い表したほか、『純黒の悪夢』から間を置き、人気が落ち着くと女性向けジャンルではそれ以上の盛り上がりは困難だが、それを打破したのも安室のおかげだと評している[36]

アニメ流行語大賞2018においては、「安室透」が金賞(第1位)を受賞し、「安室の女」が銀賞(第2位)を受賞した[37][38]。また、雑誌『ダ・ヴィンチ』2020年6月号で実施された「読者にしあわせを与えてくれたキャラ」ランキングでは、1位を獲得した[39]

脚注

注釈

出典

外部リンク

  • 安室透 - 名探偵コナン(読売テレビ)