塩化モリブデン(III)

塩化モリブデン(III)(Molybdenum(III) chloride)は、化学式MoCl3無機化合物である。紫色の結晶を形成する[1]

塩化モリブデン(III)

α-MoCl3

β-MoCl3
識別情報
CAS登録番号13478-18-7 チェック
PubChem83515
ChemSpider75350
UNII9D9PY7688B チェック
EC番号236-775-9
特性
化学式MoCl3
モル質量202.30 g/mol
外観暗赤色
常磁性
密度3.58 g/cm3
融点

410 °C, 683 K, 770 °F ((分解))

への溶解度不溶
溶解度エタノールジエチルエーテルに不溶
磁化率+43.0·10−6 cm3/mol
危険性
引火点Non-flammable
関連する物質
その他の陰イオンフッ化モリブデン(III)
臭化モリブデン(III)
ヨウ化モリブデン(III)
その他の陽イオン塩化クロム(IV)
塩化タングステン(V)
関連する塩化モリブデン塩化モリブデン(II)
塩化モリブデン(IV)
塩化モリブデン(V)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

合成と構造

塩化モリブデン(III)は、塩化モリブデン(V)水素還元することで得られる[2]。無水塩化スズ(II)還元剤として用いて純粋な塩化モリブデン(V)を還元することで、より高収率で生成できる[3]

塩化モリブデン(III)は、α型とβ型の2つの多形として存在する。α型の構造は、塩化アルミニウムの構造と似ている。この構造ではモリブデン原子は八面体配位し、結晶構造では立方最密充填構造をとる。しかしβ型では、六方最密充填の構造をとる[4]

テトラヒドロフラン錯体

テトラヒドロフラン錯体MoCl3(THF)3となる。淡い橙色の固体で、MoCl4(THF)2テトラヒドロフラン溶液をスズ粉末とともに還元することで得られる。錯体は八面体構造を持つ。IRスペクトルは、モリブデンのオキソ種に特徴的な900-1000cm-1の範囲に強いバンドを持たない[5]

ヘキサ(tert-ブトキシ)ジモリブデン(III)は、MoCl3(THF)3から複分解で得られる[6]

2 MoCl3(thf)3 + 6 LiOBu-t → Mo2(OBu-t)6 + 6 LiCl + 6 thf

出典

関連文献

  • The Synthesis of Molybdenum and Tungsten Dinitrogen Complexes.. Inorganic Syntheses: Reagents for Transition Metal Complex and Organometallic Syntheses.. 28. (January 1990). pp. 33–43