国際単位系国際文書

国際単位系 国際文書(こくさいたんいけい こくさいぶんしょ、: Le Système international d'unités: The International System of Units)は、国際度量衡局BIPM)が発行する国際単位系(SI)の規格書である。国際単位系の解釈と運用に当たっての最も権威ある[1]原典である[2]

1970年に第1版が発行され、2022年時点の最新版は2019年の第9版(Ver 2.01[注 1]、2022年12月)である。なお、SIの公式文書はフランス語によるものであり、正式な本文の確認が必要な場合、あるいは、文章の解釈に疑義がある場合は、フランス語版を参照する必要がある[3]

名称

この国際文書のフランス語による名称は単に“Le Système international d’unités”、英語による名称は単に“The International System of Units”とすることが、第26回CGPM(2018)で決議されている[4]。略称は、SI Brochure である[5]。日本語では、「SI国際文書」と呼ばれることが多い[6]

概要

国際単位系は1948年に発意され1960年に一応の確立を見たが、その後に様々な改訂がなされてきた。国際単位系国際文書は、この国際単位系(SI)の正しい解釈と運用を記述するものとして、1970年からBIPMにより発行されてきた。原典はフランス語で記述されており、1985年の第5版からは、英語版も発行されている。

各版の経緯

1970年の第1版以降の経緯は次の通りであり、これらはBIPMのページで閲覧できる[7]

これらの仏語と英語による過去の版および最新版の国際文書は、Creative Commons Attribution 3.0 IGOとなっており、適切なクレジットを付ければ、無制限の利用、配布、すべてのメディアによる複製が許されている[8]

SI国際文書の変遷 [7]
言語1言語2ページ数ISBNNIST英語版日本語訳版
1970年第1版仏語版[9]12 1971年版[10]
1973年第2版仏語版[11]121974年版[12]1973年版[13][14]
1977年第3版仏語版[15]13 ISBN 92-822-2045-11977年版[16]1977年版[17]
1981年第4版仏語版[18]16ISBN 92-822-2067-21981年版[19]1981年版[20][21]
1985年第5版仏語版[22]英語版[23]16ISBN 92-822-2092-31986年版[24]1985年版[25]
1991年第6版仏語版[26]英語版[27]16ISBN 92-822-2112-11991年版[28]1991年版[29]
1998年第7版仏語版[30]英語版[31]23ISBN 92-822-2154-72001年版[注 2][32]1998年版[33]
2000年第7版補遺仏語版[34]英語版[35]  4
2006年第8版仏語版[36]英語版[37]34ISBN 92-822-2213-62008年版[38]2006年版[39][40]
2014年第8版補遺仏語版[41]英語版[42] 8 
2019年第9版Ver.1.08仏語版[43]英語版[44]28ISBN 978-92-822-2272-02019年版[45]2019年版[46][47]
2022年12月第9版Ver.2.01仏語版[48]英語版[49]28ISBN 978-92-822-2272-0存在しない存在しない

(注)ページ数は、表紙、ノート、BIPM紹介、目次、緒言、付録、索引などを除いた、BIPM 第9版Ver2.01仏語版の本文のみのもの。日本語版や他の言語版のページ数はこれと異なる場合がある。

最新版は、第9版のVer 2.01(2022年12月)である[50]。この2.01版は2022年11月18日に第27回CGPMが承認した4つの新しいSI接頭語ロナクエタ ロントクエクト)を含めたものである。

NIST版

米国のNISTアメリカ国立標準技術研究所)は、米国での運用のために、BIPM版にわずかの編集[注 3][51]を施して、NIST Special Publication 330: The InternationalSystem of Units (SI)(NIST SP 330)として、別に発行している。最新版は2019年版である[52]

NIST版は、前項の表に示したとおりである。BIPM版との主な相違点は下記の通りである。

  1. 1970-1986年までは、NISTの前身であるNBS、1991-2019年は、NISTが発行元である。
  2. タイトルは、一貫して、Special Publication 330 である。「SP 330」と略称される。
  3. BIPM版とは異なり、版番号をうたっていない。
  4. 1970-2019年版まで一貫して、小数点はBIPM版での「コンマ」に替えて、「ピリオド」を用いている。
  5. 1970-1974年までは、綴りとして、BIPMと同一の、metre, deca, caesium, litre, tonne を用いている。1977年以降は、meter, deka, cesium, liter, metric ton を用いている。
  6. 1970-1991年版までは、イギリスのNPLとの共同訳であることをうたっている。
  7. 1998年版は、2000年6月補遺版を含んでいて、2001年版と称している。
  8. 2008年版には、4.3節を設けて、BIPM版には存在しない表10(curie, roentgen, rad, remの4単位の表)を付け加えている。これは、全ての版を通じて、BIPM版との最も大きな相違点である。
  9. 2008-2019年版では、リットルの記号は「L」のみを掲げている(BIPM版では、1981年版(第4版)以降、l,L の2つを掲げているリットル#記号のゆれ。)

NIST SP 811

Special Publication 330(SP 330)をベースとして、様々な解説、単位換算表などを付加した、NIST SP 811:Guide for the Use of theInternational System of Units (SI) も発行している。最新版はBIPM版(第8版,2006年)に基づいた2008年版[53]であり、BIPM版(第9版,2019年)に基づいたものは2022年1月現在、未刊行である[54][注 4][55]

日本語版

産業技術総合研究所 計量標準総合センター(およびその前身)によって、BIPM版(英語版)が日本語に翻訳されてきた。最新版の日本語版は下記である。

第9版までの変遷は下記の通りである。

SI国際文書 日本語訳版の変遷
タイトルISBN判型全ページ数本文ページ数訳編など発行者出版年月日pdf版のURL
1991年第6版国際単位系 国際文書第6版(1991)日本語版ISBN 4-542-40144-8A5版9623訳編:工業技術院計量研究所、(社)日本計量協会(財)日本規格協会1992年7月5日第1版第1刷
1998年第7版国際文書第7版(1998) 国際単位系(SI) グローバル化社会の共通ルール  日本語版ISBN 4-542-30135-4A5版11341訳・監修:工業技術院計量研究所(財)日本規格協会1999年11月30日第1版第1刷
2006年第8版国際文書第8版(2006)/日本語版 国際単位系(SI) 安心・安全を支える世界共通のものさしISBN 978-4-542-30182-5A5版13334訳・監修:(独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター(財)日本規格協会2007年12月19日第1版第1刷発行国際文書第8版(2006) 国際単位系(SI)日本語版
2014年第8版補遺 
2019年第9版国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版pdf版10327訳・監修:(国研)産業技術総合研究所 計量標準総合センター2020年3月国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 【正誤表】 2022年7月15日 更新国際単位系(SI)第9版(2019)正誤表』(pdf)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2022年7月15日https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/20220714_seigohyo.pdf 

(注)本文ページ数は、表紙、ノート、BIPM紹介、目次、緒言、付録、索引などを除いたもので、BIPM第9版仏語版Ver.1.08の本文と対応している。日本語版は、2023年3月現在、BIPM第9版のVer.2.01には対応しておらず、したがって4つの新しいSI接頭語は含まれていない。

各国語版

国際単位系(SI)国際文書は、それぞれの国の計量標準に関する文書として重要であり、様々な言語に翻訳されている。例えば、ブルガリア語、中国語、チェコ語、英語、ドイツ語、日本語、韓国語、ポルトガル語、ルーマニア語、スペイン語に翻訳されている[56]

  • スペイン語版[57]

JIS規格など

SIは日本産業規格にもなっている。NISTのSP811同様に、解説や単位換算表などを付加している。

  • 「国際単位系(SI)とその使い方」(JIS Z 8000-1:2014)

ISO も国際文書をベースにSI単位に関する指針、ガイド、解説書を出版している。

構成

最新版である第9版(2019年)の日本語版の構成を示す。末尾の数字はページ数である。全体で103ページあるが、1.~5.が本文(全27ページ)である。付録1 の「CGPMの決定とCIPMの決定」のページ数がもっとも多い。

  • 国際単位系(SI)第 9 版(2019)日本語版について  1
  • 表紙  1             
  • 国際度量衡局 (BIPM) とメートル条約  3
  • 目次  2
  • 第9版への緒言  2
  • 本文に関する注釈  1
  • 付録1:国際度量衡総会(CGPM)および国際度量衡委員会(CIPM)の決定  48
  • 付録2:いくつかの重要な単位の定義の実現方法  1 (電子媒体のみで刊行。入手先は[1]
  • 付録3:光化学的および光生物学的な量の単位  1   (電子媒体のみで刊行。入手先は[2]
  • 付録4: 国際単位系およびその基本単位の発展の歴史  9
  • 略語リスト  2
  • 索引  5

脚注

注釈

出典

関連項目

参考文献

  • 国際文書第8版(2006)国際単位系(SI) - 安心・安全を支える世界共通のものさし - 、産業技術総合研究所 計量標準総合センター、日本規格協会、ISBN978-4-542-30182-5、2007年12月19日第1版第1刷発行