向心力

向心力(こうしんりょく、Centripetal force)または求心力(きゅうしんりょく)は物体を曲線軌道で動かすための力のこと。その方向は常に物体の速度とは垂直方向(経路の瞬間的な接触円の中心)を向いている[1][2]

古典力学

運動の第2法則
歴史英語版
ローラーコースターは向心力によりループに沿って運動する。慣性による遠心力がローラーコースターを軌道へと留めている。
等速円運動している単純な例。ボールは回転軸にロープで縛られ、円軌道を一定の角速度で反時計回りに回っている。ボールの速度は軌道の接線方向のベクトルであり、向心力によって常にその方向が変化している。向心力は張っている状態にあるロープによって生み出されている。

公式

質量 、速度 で曲率半径 の円の経路に沿って運動する物体の向心力の大きさは[3]

である。

力の方向は、円運動の場合には物体が運動している円の中心を向いている。運動経路が円ではない場合には、部分的な経路に最も一致する接触円の中心を向いている[4]

この力は円の中心についての物体の角速度 を用いた項で より書き直すことができる。

向心力の源

惑星のまわりの軌道にある衛星では、向心力は衛星と惑星間の重力によって与えられる。重力は双方の物体にそれぞれ働き、その向きは二つの物体の重心を向いている。円軌道の運動では、この重力の中心は円軌道の中心である。円軌道でない場合や弧の場合には、経路に対して垂直な重力成分のみが向心力となる。残りの重力成分は衛星の速度を加速または減速させる働きを担う[5]

一方、アイザック・ニュートンの著書を含む一部の文献では、重力の全てが向心力であると説明されている。これは軌道が円ではない場合には厳密には正しくない[6]。前述の公式はこのような場合には適用することができない。

ロープの先端につけて鉛直なに沿って回転させた物体では、ロープの張力の水平成分が向心力となり、回転軸に向けて働く。自転する物体では、内部の引張応力が向心力となり、物体の全部分が一緒に円運動している。

参考文献

関連項目