名古屋拘置所
名古屋拘置所(なごやこうちしょ)は、法務省矯正局の名古屋矯正管区に属する拘置所[3]。所在地は愛知県名古屋市東区白壁一丁目1番[1]。
名古屋拘置所の外観(撮影:2014年8月24日) | |
所在地 | ![]() |
---|---|
座標 | 北緯34度10分55.880秒 東経136度54分35.550秒 / 北緯34.18218889度 東経136.90987500度 |
現況 | 運用中 |
開設 | 1938年7月2日[2] |
管理運営 | 法務省矯正局・名古屋矯正管区[3] |
管轄 | 法務大臣 |
根拠法令 | 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 |
全国に8箇所(東京・立川・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡)ある拘置所のひとつ[3]である。また名古屋矯正管区内で唯一の拘置所である(拘置支所を除く)[3]。下部機関として一宮拘置支所[注 1]・半田拘置支所[注 2]がある。
歴史
1938年(昭和13年)5月に竣工し、同年7月2日に開所式・落成式が行われた[注 3][2]。1945年(昭和20年)に戦災で一部が焼失したが、1948年(昭和23年)に復旧した[4]。
その後、全面改築工事を行い[4]、大林組の工事により1983年(昭和58年)3月に竣工[5]。外塀のない高層都市型矯正施設は日本初で、全国の刑事施設に先駆けて全館空調設備(冷暖房)も設置したが、新収容棟建設に伴い2006年(平成18年)に調査を実施したところ、空調配管が設置以来20年以上にわたり使用されないまま老朽化し、使用不能な状態になっていることが判明した[6]。
2007年(平成19年)には新館増改築工事を、2008年(平成20年)には本館改築工事をそれぞれ竣工している[4]。総工事費(改修工事+新収容棟建設工事費)は約48億円[6]。
アクセス
被収容者
設備
死刑場があり、死刑判決が確定した死刑確定者(死刑囚)が収監されている[9]。死刑(絞首刑)の執行は、1967年(昭和42年)より現拘置所で開始され、1983年(昭和58年)には新刑場が完成した[10]。刑場は東館の地下にあり、死刑囚が収容されている西館からは2階の渡り廊下を介して移動することとなっている[11]。
面会室は東館の2階にある[12]。
定員
収容定員は1,000名(未決743名+既決257名)だが、2020年11月10日時点での収容人数は全635名(未決357名+既決278名[注 4])である[13]。
不祥事
2008年1月4日には同拘置所の男性刑務官(40歳代 / 事情聴取中の2007年3月中旬に自殺)が、半田拘置支所の女性収容者にセクハラなどの不適切行為をしていたことが報道された[14]。また同年3月7日には、半田拘置支所の男性職員(当時40歳)が「2005年(平成17年)9月 - 2007年2月にかけて受刑者と格闘技をしたり、トランプで遊んだりした」などとして懲戒免職処分に処された[15]。
死刑確定者
主として名古屋高等裁判所(金沢支部を含む)管内6県[注 5]で死刑が確定した死刑囚(死刑確定者)を収監している[10]。2020年10月23日時点で[注 6]、死刑確定者は計11人(男性10人〈うち外国籍1人〉+女性1人)が収監されている[13]。
死刑囚は他の囚人と区別するため、下2桁「00」の呼称番号を付与され、西館の7 - 9階[注 7]に収容される[19]。また、死刑囚の独房に対する「捜検」という抜き打ち検査が定期的に実施されている[20]。
※は第一審・裁判員裁判の死刑囚。なお特記なき場合、「死刑確定日」は上告審判決の宣告日か、控訴・上告を取り下げた日を基準とする。
- 女MT - 富山・長野連続女性誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定111号事件:1980年発生)の死刑囚[21]。戦後7人目の女性死刑囚[22]。上告中の1992年8月5日、金沢刑務所拘置区(石川県金沢市)から当所へ移送された[注 8][24]。1998年9月4日に最高裁で上告棄却判決を受け[21]、同年10月9日付で死刑が確定[25][26](死刑確定から25年9か月と2日経過)。
- 男MN(旧姓:S) - フィリピン人2女性殺害事件(発生:1998年)の死刑囚[27]。2000年3月1日に津地裁で死刑判決を受け、控訴中の同年4月17日に三重刑務所から移監された[28]。2004年12月14日に最高裁で上告棄却判決を受け、2005年1月21日付で死刑が確定[28][29][30](死刑確定から19年5か月と20日経過)。
- 男YM - 古美術商ら2人殺害事件(発生:1994年・1995年)の死刑囚[31]。2006年2月24日に最高裁で上告棄却判決を受け[31]、同年3月27日付で死刑確定[32](死刑確定から18年3か月と14日経過)。
- 男TY - 静岡・愛知2女性殺害事件(発生:1996年・1997年)の死刑囚[31]。2006年3月2日に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[31](死刑確定から18年4か月と9日経過)。
- 男MK - マニラ連続保険金殺人事件(発生:1994年 - 1996年)の死刑囚[33]。2007年1月30日に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[33](死刑確定から17年5か月と11日経過)。計3人の死刑が確定したが、残る死刑囚2人のうち、1人(MKの双子の兄MA)は2016年1月に病死し、もう1人(男SE)は確定後に大阪拘置所へ移送された[注 9][33]。
- 男HK - 三重連続射殺事件(発生:1994年)の死刑囚[36]。2007年7月5日に最高裁で上告棄却判決を受け、同月21日付で死刑が確定[37](死刑確定から16年11か月と20日経過)。
- 男KA - 大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件(発生:1994年)の少年死刑囚(事件当時19歳)[38]。下記HMとともに、2011年3月10日に最高裁で上告棄却判決を受け[38]、同年4月1日付で死刑が確定[39][40](死刑確定から13年3か月と10日経過)。このほか、共犯KM(事件当時19歳)も同所に収監されていたが[41]、確定後に東京拘置所へ移送された[42]。
- 男HM - 上記KAと同じく、大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件の少年死刑囚(事件当時18歳)[38]。上告審判決宣告日および死刑確定日はKA(および東京拘置所に移送されたKM)と同一[38]。
- 男KY - 愛知交際2女性殺害事件(発生:1999年・2003年)の死刑囚[43]。2011年11月29日に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[43](死刑確定から12年7か月と12日経過)。
- ※男LS - 蟹江一家3人殺傷事件(発生:2009年)の死刑囚[44]。中国国籍[45]。2018年9月6日に最高裁で上告棄却判決を受け[44]、同年10月3日付で死刑が確定[46](死刑確定から5年9か月と8日経過)。
- ※堀慶末[注 10] - 碧南市パチンコ店長夫婦殺害事件(発生:1998年)の死刑囚[44]。2019年7月19日に最高裁で上告棄却判決を受け[44]、同年8月8日に死刑が確定[注 11][51](死刑確定から4年11か月と3日経過)。
過去の死刑囚
同所にて死刑を執行された、あるいは過去に収監されていた死刑囚(獄死した死刑囚・恩赦を受け減刑された死刑囚・冤罪により釈放された死刑囚)のうち、代表的な者を記載する。
- 奥西勝 - 名張毒ぶどう酒事件(発生:1961年)の死刑囚[52]。1972年6月に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[52]。2012年6月に肺炎のため本所から八王子医療刑務所へ移送され[53]、同所で2015年10月に病死[52]。
- 木村修治[注 12] - 名古屋女子大生誘拐殺人事件(発生:1980年)の死刑囚[54]。1987年7月に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[54]。1995年12月21日に死刑執行[54]。
- 名古屋保険金殺人事件(発生:1979年 - 1983年)の死刑囚2人
- 勝田清孝[注 13] - 7人連続殺人(発生:1972年 - 1981年)および警察庁広域重要指定113号事件(発生:1981年 - 1982年)の死刑囚[56]。1994年1月に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[56]。2000年11月30日に死刑執行[56]。
- 男NTおよびKY - ともにドラム缶女性焼殺事件(発生:2000年)の死刑囚。2人とも2006年6月に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[57]。2009年1月29日に死刑執行[57]。
- 男BK - 名古屋市中区栄スナックバー経営者殺害事件(発生:2002年)の死刑囚。2007年3月に最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[58]。2013年2月21日に死刑執行[58]。
- 男KT - 闇サイト殺人事件(発生:2007年)の死刑囚。2009年3月に名古屋地裁で死刑判決を受け、同年4月に控訴を取り下げ死刑確定[59]。2015年6月25日に死刑執行[58]。碧南市パチンコ店長夫婦殺害事件で2019年に死刑が確定した堀慶末は同事件の共犯で、碧南事件への関与が判明する前(2012年7月)に闇サイト事件で無期懲役が確定していた[47]。
- 高岡暴力団組長夫婦射殺事件(発生:2000年)の死刑囚2人 - 2人とも2009年(1月・3月)に相次いで最高裁で上告棄却判決を受け死刑確定[60]。しかし1人(1月に死刑確定)は同年5月2日に入院先の病院で病死し[61]、もう1人(3月に死刑確定)も2014年7月16日に本所で病死[62]。
- オウム真理教事件の死刑囚(教団の元幹部) - 2018年3月14日に東京拘置所から移送され[63]、同年7月26日に死刑執行[64]。
脚注
注釈
出典
参考文献
- 年報・死刑廃止編集委員会 著、(編集委員:岩井信・江頭純二・菊池さよ子・菊田幸一・笹原恵・島谷直子・高田章子・永井迅・安田好弘・深田卓) / (協力:フォーラム90実行委員会・国分葉子) 編『無実の死刑囚たち 年報・死刑廃止2004』(第1刷発行)インパクト出版会、2004年9月20日。ISBN 978-4755401442 。
- 村野薫『死刑はこうして執行される』(第1刷発行)講談社〈講談社文庫〉、2006年1月15日、141-142頁。ISBN 978-4062753043。
- 死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90 著、(編集委員:可知亮、国分葉子、高田章子、中井厚、深瀬暢子、安田好弘、深田卓 / 協力=福島みずほ事務所、死刑廃止のための大道寺幸子基金) 編『死刑囚90人 とどきますか、獄中からの声』(発行)インパクト出版会、2012年5月23日。ISBN 978-4755402241 。
- 年報・死刑廃止編集委員会 著、(編集委員:岩井信・可知亮・笹原恵・島谷直子・高田章子・永井迅・安田好弘・深田卓) / (協力:死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90・死刑廃止のための大道寺幸子基金・深瀬暢子・国分葉子・岡本真菜) 編『オウム大虐殺 13人執行の残したもの 年報・死刑廃止2019』(初版第1刷発行)インパクト出版会、2019年10月25日、259頁。ISBN 978-4755402982 。
- 年報・死刑廃止編集委員会 著、(編集委員:岩井信・可知亮・笹原恵・島谷直子・高田章子・永井迅・安田好弘・深田卓) / (協力:死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90・死刑廃止のための大道寺幸子基金・深瀬暢子・国分葉子・岡本真菜) 編『コロナ禍のなかの死刑 年報・死刑廃止2020』(第1刷発行)インパクト出版会、2020年10月10日。ISBN 978-4755403064。 NCID BC03101691。国立国会図書館書誌ID:030661462 。
外部リンク
東経136度54分35.55秒 / 北緯35.1821889度 東経136.9098750度