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ヨーロッパカラマツ (Larix decidua )[1] [2] は、マツ科 カラマツ属 に属する植物。オウシュウカラマツ 、欧州カラマツ、欧州落葉松とも書かれる。落葉性 の針葉樹 。
特徴 高さは25-45 m、直径は1 mほど。樹冠 は若い頃は円錐形だが年月を経ると広がってゆく。枝は上向きに曲がって伸びるが分かれた枝の先端は曲線を描く[3] 。シュート は二形性で、いくつかの芽 をつけた10 cm-50 cmの長いシュートと、一つの芽をつけた1-2 cmの短いシュートに分かれる。葉は黄緑色で狭針形[1] 。感触は柔らかい[4] 。若葉のころはエメラルドグリーンだが後に明るい緑色へ変色する[4] 。秋に木の幹から落ちる前に輝く黄色へ変色する。葉が落ちた後は青白くなった黄褐色の幹が次の季節の春まで剥き出しになる。葉は短い枝に30から40片生える[1] 。果鱗 は40から60片[1] で、微腺毛 がある[1] 。
若い雌性球果 (種麟ovuliferous scaleが赤色) と雄性球果 (黄色). 花の色は雄花 は黄色、雌花 は赤色を帯びる。雄花は下垂し、雌花は直立する[4] 。
耐寒性が非常に強く、冬の-50度の中でも生き延びる。標高1000m-2000mの間でもっとも繁茂するが、森林限界 の標高は2400mにまで達する。
盆栽 に使う樹木としても親しまれている[6] 。
分布 中央ヨーロッパ、アルプス山脈 及びカルパティア山脈 。ポーランド 、リトアニア の低地にも繁茂する。雌雄異株[4] 。ただし植物学以外の文献で雌雄同株と伝えるものもある[3] 。
種内分類群 種内に2亜種が認められる。
Larix decidua subsp. decidua - 低地を除き広く分布する。球果は2.5–6 cm。幹、枝の色は黄褐色。Larix decidua subsp. polonica - ポーランドの低地に広く散在。球果は2-3 cm。幹、枝の色はやや青白く、殆ど白くなることもある。用途 観葉植物として庭や公園で栽培される[7] 。ヨーロッパで植栽されているカラマツはこの品種[8] 。材木改良の研究材料として使用されたこともある[9]
ドイツのメクレンブルク 市には、ヨーロッパカラマツの並木があり、著名[1] 。
日本では北海道 にある外国樹種植栽地に、1898年にストローブマツ 、ヨーロッパアカマツ と共に植栽された[10] 。
病気 19世紀初頭から、この種が罹患するがんしゅ病が問題視されるようになり、この種が抱える最も重大な病害として認知され、造林に顕著な被害を与えている。感染した苗木が北米へ持ち込まれたことで北米にも伝染している。カラマツ はこれと比べてがんしゅ病への抵抗力が高いとされる[11] 。
学名の由来 『植物学ラテン語辞典』によれば属名Larixはケルト語larに由来する本種の古代名である。Wiktionary[13] によれば、 Larixは古代ギリシャ語 λάριξ に由来し、カラマツを指すラテン語の名詞である。deciduaはラテン語で「落ちる」を意味する形容詞[14] 。
脚注 参考文献 大槻真一郎 ・尾崎由紀子 共著『ハーブ学名語源辞典』(東京堂出版) ISBN 978-4-490-10745-6 ケネス・A・ベケット、アレン・J・クームズ、リンデン・ホーソン、キース・ラシュホース共著・桜井政人、植村猶行監修『庭木図鑑450 GARDEN TREES』 ISBN 4-529-02775-9 上原敬二 『樹木大図説』1巻(有明書房)渡邊静夫『園芸植物大事典』1巻(小学館) 浅川澄彦 「ニレ, オウシュウカラマツ, プンゲンストウヒ, カナダトウヒのタネの発芽におよぼすジベレリンの影響」(オープンアクセスで閲覧可) Rudall, Paula J.; Hilton, Jason; Vergara-Silva, Francisco; Bateman, Richard M. (2011-03), “Recurrent abnormalities in conifer cones and the evolutionary origins of flower-like structures”, Trends Plant Sci. 16 : 151-159, doi :10.1016/j.tplants.2010.11.002 , PMID 21144793 豊国秀夫 編『植物学ラテン語辞典』(復刻・拡大)ぎょうせい、2009年。