メスナ

メスナ(Mesna)は、有機硫黄化合物の一つである。がん化学療法や造血幹細胞移植の前治療にシクロホスファミドイホスファミドを使う際のアジュバント(補助薬)として用いられる。商品名はウロミテキサン。mesnaという英語名は、2-mercaptoethane sulfonate Naナトリウム)の頭字語である。

IUPAC命名法による物質名
臨床データ
発音[ˈmɛznə]
Drugs.commonograph
胎児危険度分類
法的規制
投与経路Oral, intravenous
薬物動態データ
生物学的利用能45–79% (Oral)
代謝Oxidised in circulation
半減期0.36–8.3 hours
排泄Renal
識別
CAS番号
19767-45-4 ×
ATCコードR05CB05 (WHO) V03AF01 (WHO)
PubChemCID: 29769
ChemSpider27663 チェック
UNIINR7O1405Q9 チェック
KEGGD01459  チェック
ChEMBLCHEMBL975 チェック
化学的データ
化学式C2H5NaO3S2
分子量164.181 g/mol
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WHO必須医薬品モデル・リストに収載されている[1]

効能・効果

化学療法補助

メスナは、シクロホスファミド(CPA)またはイホスファミド(IFM)を使用した場合に起こる出血性膀胱炎および血尿を予防する目的で用いられる[2]。CPAやIFMはin vivoアクロレインを生じ、尿路障害を生ずる。

メスナを投与するとそのチオール基がアクロレインのα,β不飽和カルボニルのβ位に付加してカルボニル基が孤立し、毒性が失われる[3]。この付加反応はマイケル付加として知られている。メスナはまたシステインの尿中排泄を増加させる。

その他の用途

南アフリカでは、メスナは粘液溶解薬英語版としても用いられる[4]。チオール基を有するため、アセチルシステインと同じ機序で奏効する。

用法・用量

日本では注射薬として用いられているが、経口投与する場合もあり得る[5]。化学療法薬を点滴静注する場合は同時に点滴静注し、化学療法薬を経口投与する場合は同時に経口投与する。経口投与の場合は、生物学的利用能が低いために点滴静注の2倍量服用しなければならない。メスナを点滴静注(4〜5日)する場合は入院を要するので、代わりに経口薬が使用できる場合は入院期間を短縮できる。

作用機序

メスナはがん化学療法剤投与後に体内で生じる尿路障害性化合物を除去できる。メスナは水溶性抗酸化物質であり、化学療法薬であるシクロホスファミドイホスファミドと同時期に投与される。イホスファミドやシクロホスファミドが活性化される際に、副産物としてα,β不飽和カルボニル化合物であるアクロレインが生じ、腎臓から排泄されて膀胱を傷害する。メスナは投与後速やかに尿中に排泄されて膀胱に濃縮され、そのチオール基(求核剤)がアクロレインのβ位にマイケル付加して化学的により安定な化合物を作り[3]、アクロレインの膀胱障害活性を消去する[6]

関連項目

出典

外部リンク