フジ属

フジ属(フジぞく、学名: Wisteria)は、マメ科の一つ。フジ(藤)と総称するが、「フジ」は属の下位分類のの一つである日本固有種のWisteria floribunda(ノダフジ)和名でもあるため、属と種の混同に注意が必要である。異名に「さのかたのはな」、「むらさきぐさ」、「まつみぐさ」、「ふたきぐさ」、「まつなぐさ」などがある。なお、中国語の藤はヤシ科トウ(籐、ラタン)に相当し、フジ属は紫藤、ノダフジは日本紫藤(あるいは多花紫藤)という。

フジ属
Wisteria
Wisteria floribunda
フジ大阪府、2006年5月3日)
分類APG III
:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 Angiosperms
階級なし:真正双子葉類 Eudicots
階級なし:コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし:バラ類 Rosids
階級なし:真正バラ類I Eurosids I
:マメ目 Fabales
:マメ科 Fabaceae
亜科:マメ亜科 Faboideae
:フジ連 Millettieae
:フジ属 Wisteria
学名
Wisteria Nutt.
  • ヤマフジ W. brachybotrys
  • W. brevidentata
  • フジ W. floribunda
  • アメリカフジ W. frutescens
  • ナツフジ W. japonica
  • W. macrostachya
  • シナフジ W. sinensis
  • W. venusta
  • W. vilossa

形態・生態

つる性落葉木本である。

毎年4月から5月にかけて淡紫色または白色状に垂れ下げて咲かせる。

分布

日本東アジア北アメリカに自生する[1]フジ(ノダフジ)とヤマフジの2種が日本固有種で、シナフジなどが中国固有種であり、アメリカフジが北アメリカ固有種である。アメリカには1816年に中国原産のシナフジが、1830年に日本原産のフジ(ノダフジ)が園芸目的で持ち込まれ、この2種は、その花の多さ、大輪の房、花色の豊富さ、香りのよさなどから現地のアメリカフジなどより遥かに人気を博し、その成長力から特に南東部で侵略的外来種となった[2][3]

下位分類

フジ属には8前後が属する。

フジとヤマフジ

フジ(ノダフジ)とヤマフジは日本の固有種である[4]。フジ(ノダフジ)とヤマフジは万葉集では区別なく歌の題材となっており[4]、日本では固有種のフジ(ノダフジ)とヤマフジの両種をフジと総称することもある[5]

利用

盆栽

日本では園芸植物として藤棚盆栽に仕立てられることが多い。

山林に自生するフジは、つる性であるため、樹木に絡みついて上部を覆い光合成を妨げるほか、幹を変形させ木材の商品価値を損ねる。このため、植林地など手入れの行き届いた人工林では、フジのつるは刈り取られる。これは、逆にいえば、手入れのされていない山林で多く見られるということである。近年、日本の山林でフジの花が咲いている風景が増えてきた要因としては、木材の価格が下落したことによる管理放棄や、藤蔓を使った細工()を作れる人が減少したことが挙げられる。

食用・薬用

  • 若芽 - ゆでて和え物や炒め物。
  • 花 - 湯がいて三杯酢天ぷら塩漬けして「花茶」に用いる。
  • 種子 - 花後に剪定すると、実がならない。入手が困難でもちもちした食感は珍味となっている。江戸時代には貴重な糖質として重宝された。

  • 家具(いすや籠など)
  • 藤布(繊維から)
  • 藤紙(茎皮の繊維から)

文化

日本では古来より、花の鑑賞や籠などの道具の材料などに用いられてきたため、各所でフジに因んだ名称や意匠を目にすることができる。

日本人の姓

名字ランキング100番目以内に多い順から佐藤伊藤斎藤加藤後藤近藤藤田遠藤藤井藤原工藤安藤藤本の13種類の名字がランクインしている[要出典]

藤原氏[6]を出自としてその流れを汲む十六藤(じゅうろくとう) - 佐藤、伊藤、斎藤、加藤、後藤、近藤、遠藤、工藤、安藤、内藤須藤武藤、進藤、新藤、神藤、春藤の名字(読みは音読みで「とう」または「どう」、人口の多い順)。多くは旧国名・役職名+藤と言うパターンが多い(例:佐藤は「佐渡」または「佐野」の藤原の意)。この、十六藤以外にも江藤、衛藤斉藤首藤権藤、尾藤などの名字も存在する。

「○藤」系は北日本東日本東海地方に多く分布しており、「藤○」系は西日本近畿地方中国地方瀬戸内海側を中心に多く分布している。ただし、徳島県大分県では例外で、前者は佐藤・近藤、後者は佐藤・後藤・工藤が多く集中しており、大分県独特の名字に江藤・衛藤・首藤姓がある。

家紋

藤紋(ふじもん)は日本の家紋の一種。ヤマフジのぶら下がって咲く花と葉を「藤の丸」として図案化したもので、元来は「下り藤」である。家紋として文献に載ったのは、15世紀ごろに書かれた『見聞諸家紋』などである。『吾妻鏡』や『太平記』には登場しないことを根拠として武家の間では14世紀後半の室町時代末期に流行したと考えられており[7]、また江戸時代には武士における使用家が170家におよび[8]十大家紋の一つに数えられている。図案には、上り藤、下り藤、一つ藤巴、藤輪、利久藤、三つ追い藤、黒田藤などがある。

文学・芸術

  • 古事記
    • 藤衣(ふじごろも)
  • 万葉集
    • 「藤浪の花は盛になりにけり ならのみやこを思ほすや君」 - 防人司佑(さきもりのつかさのすけ)大伴四綱(よつな)の歌。
  • 枕草子
    • 木の花は - 「藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし」
    • あてなるもの - 「薄色に白襲の汗衫。かりのこ。削り氷にあまづら入れて 新しき金まりに入れたる。水晶の数珠。藤の花・・・」
  • 源氏物語
  • 俳諧
    • 「くたびれて宿かるころや藤の花」(芭蕉
    • 「昔絵の春や辨慶藤娘」(子規

絵画・工芸

「色絵藤花文茶壺」 野々村仁清

衣装

  • 藤布(ふじぬの) - 庶民用布、ござの縁布。
  • 藤衣(ふじごろも) - 公家の喪服にもちいられた。
  • 染色
  • 襲色目 藤[9] - 淡紫から白のグラデーション。毎年3月から4月にかけての春に着用。
  • 着物の文様
  • 花簪(かんざし) - フジの花序をかたどったものがある[10][11]

その他

  • 天道花・花折節供
  • 自然暦・勧農鳥の止まる木
  • 朝藤夕縄

名木

牛島のフジ
「迫間のフジ(はさまのふじ)」(栃木県足利市あしかがフラワーパーク。)
2021年時点で樹齢160年とされ、2本の木から伸びた枝は計2,000m2(1,200分)の日本最大の面積の藤棚に広がる
長泉寺の樹齢650年の骨波田の藤(埼玉県本庄市
唐津城のフジ(佐賀県唐津市)
ヤマフジの大群落(千葉県成東町)

市町村の花

フジと名のつく植物

つる性、花序が穂状、あるいは小さな花が寄り集まっているなど、形状がフジと似ているところから名づけられたものと考えられる場合が多い。

脚注

参考文献

  • 茂木透写真「フジ属 Wisteria」『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、94-99頁。ISBN 4-635-07004-2 

関連項目

外部リンク

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