ファミリーレストラン
ファミリーレストランとは、主にファミリー客層を想定したレストランの業態。モータリゼーションの進んだアメリカのコーヒーショップを参考に日本で成立した業態で和製英語である[1]。外食産業の一つでチェーンストアとして営業するものが多い。略称は「ファミレス」。
なお、北アメリカ等のカジュアルダイニングレストランを日本でいうファミリーレストランとして紹介するものもある[2]。国際的な統計ではクイックサービスレストラン(ファーストフード)とダイニングレストラン(フォーマル)の中間的な形態をカジュアルダイニングレストランとしている[3]、日本の統計(農林水産省「外食産業に関する基本調査結果」)の業態区分ではファーストフードとディナーレストランの中間的な形態をファミリーレストランとカジュアルレストランの2つに区分している[4](カジュアルレストラン参照)。
概要
ファミリーレストランは1970年代に確立されたビジネスモデルで、モータリゼーションの進んだアメリカの郊外に立地するコーヒーショップが参考になっている[1]。外食産業としてのファミリーレストランには、チェーンストアとして展開している、家族連れを主な対象としている、メニューに和洋中の料理を広く含むといった特徴がある[5]。
ファミリーレストランは、セントラルキッチン(一次加工工場)であらかじめ原材料を半加工しておいたものを各店舗に配送し、各店舗にて最終的な仕上げの調理を行うことで、多くのメニューをスピーディーかつリーズナブルに提供できることが特徴になっている[1][6]。
日本の旧商業統計には、ファミリーレストランとは客単価が500円〜2000円、料理提供時間が3分以上で、客席は80席以上あることという定義があった[5]。旧商業統計の分類によるとファミリーレストランの客単価は、ディナーレストランよりも低いが、ファーストフードよりは高く、ファーストフードよりも料理提供時間が長いものをいい、ファミリーレストランはカジュアルレストランとほぼ同じものとされていた[5]。一方、農林水産省「外食産業に関する基本調査結果」の業態区分では、来客1人あたりの消費金額が700円以上1500円未満で料理提供時間がおおよそ3分から10分のものをファミリーレストランとしており、カジュアルレストラン(料理提供時間はおおよそ3分から10分だが来客1人あたりの消費金額が1500円以上2000円未満のもの)とは区別されている[4]。
24時間営業を行っている店舗や、そうでなくても深夜まで営業している店舗などでは、深夜のファミリーレストランでは店内で利用者が寝ていることもしばしばあるが、これについては基本的には禁止行為とされており、店員に起こされて帰ってもらう場合があり、そうでなくても迷惑行為と認識される。
特徴
ファミリーレストランではセントラルキッチンで複数の店舗の食材を集中調理し、各店舗では配送されたものに最終的な仕上げの調理だけを行うことで食材の仕入れと調理を合理化している[1]。セントラルキッチンから配送され、店内の店舗の冷蔵・冷凍室にストックされた料理を、各店舗で湯煎や電子レンジ・オーブンで暖める・焼くなどして加熱し、彩りの野菜などを添えて食器に盛り付け、料理の最終的な仕上げを行って客に提供する。
セントラルキッチンで同じ製法で一括調理することにより、店舗立地が違っても同じ味の料理を提供することが可能となる。客にとっては、どこの店舗に入っても当たり外れがなく同じ味を楽しめるという利便性を与える。商業面では、調理作業と食材仕入れの効率化、味や品質の一定化が図れる。店舗には本格的な調理厨房が不要となるため敷地面積を最大限に活用することができる。また専門技術を持った料理人を雇用する必要もなく、店舗スタッフはマニュアルに従って配膳すればよいため、アルバイトなど非正規雇用の従業員で店舗運営を行うことが可能となる。商品コストや人件費をコストを低減し、品質を均一化した料理を大量供給することで、客単価を下げても利益を上げることができる。
歴史
神奈川県横浜市保土ケ谷区で創業した、ハングリータイガーが、1969年に開業した1号店の保土ヶ谷店が日本の外食産業新時代、またそれに続くファミリーレストラン時代の到来を告げる一番手となった[7][注釈 1]。
東京都で創業したすかいらーくが、1970年7月7日に日本初のファミリーレストランであるすかいらーく1号店の国立店(ガスト国立店として現存[8])を開業した[9][10][注釈 2]。
続いて福岡県で創業したロイヤルが、1971年12月にロイヤルホスト1号店として北九州市で黒崎店を開業した[11][12](カウボーイ家族青山店に業態転換した後、2022年6月30日に閉店[注釈 3])。
1973年にはイトーヨーカ堂がアメリカのデニーズ社と提携して株式会社デニーズジャパンを設立し[13]、翌1974年に1号店を横浜市のイトーヨーカドー上大岡店1階に開業した(イトーヨーカドー上大岡店の改築に伴い2017年3月20日に閉店)[14][15]。
また同1973年に千葉県市川市で創業したサイゼリヤが、1977年12月よりチェーン展開を開始し[16]、低価格路線で急速に店舗を増やした。本八幡駅北口の1号店は「サイゼリヤ1号店教育記念館」として保存されている[17][18]。
ゼンショー、吉野家など、牛丼チェーン店から始まった企業もファミリーレストランに参入している。
かつては24時間営業を行っている店舗が多かったが、2017年にはロイヤルが、2020年にはすかいらーくが24時間営業を完全廃止するなど、近年では24時間営業の廃止をはじめとする営業時間の見直しが進み、現在では24時間営業のファミリーレストランは消滅しつつある。
主なファミリーレストラン
グループ展開するチェーン
- すかいらーくグループ
- ガスト
- ステーキガスト
- バーミヤン
- ジョナサン
- 藍屋
- 夢庵
- グラッチェガーデンズ
- しゃぶ葉
- トマトアンドアソシエイツ
- スカイラークガーデンズ(閉店)
- イエスタデイ(閉店)
- ビルディ(閉店)
- ロイヤルホールディングス
- セブン&アイ・フードシステムズ
- ゼンショーグループ
- アークミール(吉野家ホールディングス)
- ステーキハウスフォルクス
- ステーキのどん
- しゃぶしゃぶどん亭
- 井村屋グループ
- アンナミラーズ(閉店)
広域展開するチェーン
- サイゼリヤ
- びっくりドンキー
- 不二家レストラン
- 和食さと(SRSホールディングスグループ)
- サガミホールディングス
- サガミ・味の民芸
- ステーキハンバーグ&サラダバー けん(エムグラントフードサービス→焼肉坂井ホールディングス)
- カプリチョーザ
- ポポラマーマ
- ヴォーノ・イタリア(ル・クール→NUKコーポレーション)
- 神戸屋レストラン
- サンマルク・バケット
- ピアーサーティー
- ブロンコビリー
ローカルチェーン
過去に存在したチェーン
中国での展開
2000年代以降、中国では改革開放が進み、日本のファミリーレストランチェーンも多く進出した[21]。しかし、ほとんどのファミリーレストランチェーンは順調には展開できなかった[22]。その背景には、ファミリーレストランの主力メニューのハンバーグについて中国では挽肉に対してネガティブなイメージが持たれていたこと[22]、メニュー構成は多様であったが炭水化物の多い主食がほとんどで冷菜や熱菜(肉や魚、野菜を加熱したもの)から注文する中国の外食の習慣に合わなかったこと、中国では食の西洋化があまり進んでいなかったことがあるといわれている[23]。
脚注
出典
注釈
関連項目
外部リンク
- 一般社団法人日本フードサービス協会 - 日本の業界団体
- 国会図書館第145回常設展示 外食の歴史 - 日本での歴史