バス勲章

イギリスの騎士団勲章

バス勲章英語:Order of the Bath)は、イギリスの騎士団勲章(Order)のひとつ。正式タイトルは「The Most Honourable Military Order of the Bath(最も名誉あるバス軍事勲章)」。1725年に現在のような勲章となった。綬の色から「レッドリボン」とも呼ばれている。

バス勲章
The Most Honourable Military Order of the Bath
ナイト(デイム)・グランド・クロス星章(右:軍人用、左:文民用)
連合王国君主による栄典
種別騎士団勲章
標語TRIA JUNCTA IN UNO ("three joined in one")
Ich dien (軍事部門のみ)
創設者ジョージ1世
資格君主の意向
対象イギリス人:重要な役職を務めた軍人、政治家、官僚
外国人:政府首脳級(大統領・首相 等)を務めた人物
主権者チャールズ3世
グレートマスター空位
地位
  • ナイト(デイム)・グランド・クロス (GCB)
  • ナイト(デイム)・コマンダー (KCB/DCB)
  • コンパニオン (CB)
歴史・統計
創立1725年5月18日
人数
  • GCB:120名
  • KCB/DCB:295名
  • CB:1,455名
階位
上位席聖パトリック勲章
下位席インドの星勲章
略綬

ヨーロッパの“Order”は中世の騎士団に由来、あるいはその制度に倣った栄典制度であり、騎士団へ入団することが栄誉とされていた。やがて騎士団の団員証である勲章も意味するようになり、その授与が栄典と見なされるようになった。このような勲章は他の種類の勲章(decoration等)と区別するために“騎士団勲章” とも表記される[1][2]"Order of the Bath" の場合は、休眠状態だった世俗騎士団の名称を受継いだ勲章騎士団である[3]

構成

現在の階級は3等級となっており、1等は男性がナイト・グランド・クロス (Knight Grand Cross)で女性はデーム・グランド・クロス (Dame Grand Cross)、2等は男性がナイト・コマンダー (Knight Commander)で女性はデーム・コマンダー (Dame Commander)、3等はコンパニオン (Companion) である。上位2等級の受章者にはナイトの爵位が与えられ、ナイト・グランド・クロス及びデーム・グランド・クロスにはGCB、ナイト・コマンダーはKCB、デーム・コマンダーはDCB、コンパニオンはCBのポスト・ノミナル・レターズの使用が許される。騎士団の定員は、ナイト・グランド・クロス/デーム・グランド・クロスが120名、ナイト・コマンダー/デーム・コマンダーは295名、コンパニオンは1,455名と定められている[4]

軍人用は高級将校、文民用は高級官僚が主な授与対象であり、重要な役職を務めた功績に対して与えられる[5]。外国人に対しては、共和国の大統領等政府首脳級の政治家にナイト・グランド・クロスが贈られる[6]

日本人では伊藤博文が最初に受章し、その後は乃木希典1912年)、桂太郎竹下勇らが受章している[6]

役職者

グレイトマスター

グレイトマスター(Greatmaster)主権者イギリス国王)に次ぐ地位をもつ。今までに9人が任命されており、現在はウィリアム皇太子が務める。

肖像氏名在任期間出典
第2代モンタギュー公爵

ジョン・モンタギュー

1725年 - 1749年[7][8]
空位1749年 - 1767年
ヨーク=オールバニ公爵

フレデリック王子

1767年 - 1827年
クラレンス=セント・アンドルーズ公爵

ウィリアム王子

(のち国王ウィリアム4世

1827年 - 1830年
空位1830年 - 1837年
サセックス公爵

オーガスタス=フレデリック王子

1837年 - 1843年[9][10]
イギリス王配

アルバート公子

1843年 - 1861年[11]
空位1861年 - 1897年
プリンス・オブ・ウェールズ

アルバート・エドワード皇太子

(のち国王エドワード7世

1897年 - 1901年[12]
コノート=ストラサーン公爵

アーサー王子

1901年 - 1942年[13]
グロスター公爵

ヘンリー王子

1942年 - 1974年[14]
プリンス・オブ・ウェールズ

チャールズ皇太子

(のち国王チャールズ3世

1974年 - 2022年[15]
空位2022年 - 2024年
プリンス・オブ・ウェールズ

ウィリアム皇太子

2024年 -[16]

役職者

現在の役職者

  1. (司祭) - デイヴィッド・ホイル英語版MBEウェストミンスター主席司祭英語版
  2. (レジスター)- イアン・ヘンダーソン英語版海軍少将[17]、セクレタリーを兼務。
  3. (主席紋章官)- サー・ステファン・ダルトン英語版空軍元帥[18]
  4. (アッシャー)- ジェイムズ・ゴードン英語版陸軍少将[19]。(赤杖官英語版
  5. (系譜担当官)- デイヴィッド・ホワイト英語版

歴史

ウェストミンスター寺院まで行進するバス騎士団員(1749年

バス騎士団は1399年に行われたヘンリー4世の戴冠式に際して創設された[3]。名称はかつて騎士の叙任式に清めの入浴(bath=風呂)を行ったことに由来する[4]。当時は団員証(勲章)が制定されておらず、ナイトの称号のみが与えられる栄典だった[3]。ただし、チャールズ2世の戴冠式(1661年)の際に75個の徽章が作成されたとされている[4]

この戴冠式の後、騎士団員への叙任が行われなくなり、実体のない騎士団となっていたが、1725年5月にバス騎士団が再創設された[20]。この際に、騎士団付き系譜学者(ジョン・アンスティス)も任命されている。

当初はナイト・コンパニオン(KB)の単一等級であった。受章者は軍人が圧倒的に多かったが、1815年に3等級とされると共に文民用と軍人用に分けられて、それらのデザインも異なるものとなった。制度改正時にナイト・コンパニオンであった者はナイト・グランド・クロスへ叙された[21]。これにより、文官にも多少の叙勲枠が確保された。このように、軍人や高級官僚用の勲章であるため、1971年まで女王以外の女性に授与されることはなかった[4][22][23]

現在の騎士団員

主権者(Sovereign)

肖像紋章氏名
国王

チャールズ3世

(1948年 - )

(2022年即位 - )

騎士団員(Knights and Ladies Companion)

脚注

参考資料

書籍等

  • 小川賢治『勲章の社会学』晃洋書房、2009年3月。ISBN 978-4-7710-2039-9 
  • 君塚直隆『女王陛下のブルーリボン-ガーター勲章とイギリス外交-』NTT出版、2004年。ISBN 4757140738 
  • 総理府賞勲局監修『勲章』毎日新聞社、1976年(昭和51年)。 
  • London Gazette: no. 56878. 14 March 2003. Supplement No.1.

外部リンク

関連項目