ハマー (自動車)

ハマー(HUMMER)は、1992年にアメリカの自動車メーカー・AMゼネラルが発売した、軍用四輪駆動車ハンヴィーの民間仕様、及びAMゼネラルから権利を購入したゼネラルモーターズ(GM)が1999年から展開したSUVブランド。

AMゼネラル・ハマー
GMから販売されたハマー三種類。左からH3、H1、H2

GMは2009年の破産後に中国四川騰中重工機械にブランド売却を打診していたが[1]、破談となり2010年に販売を終了。2021年GMC電気自動車として復活した[2][3]

H1(1992年 - 2006年)

ハマー・H1
ハマー H1 ハードトップのSUTタイプ
ハマー H1 4ドアワゴン
概要
製造国 アメリカ合衆国
販売期間1992年-2006年
ボディ
ボディタイプ4ドアワゴン、ピックアップトラック
駆動方式4WD
パワートレイン
エンジン水冷V型8気筒OHVターボ、水冷V型8気筒OHVターボディーゼル
最高出力H1:195hp/3,400rpm
H1 ALPHA:300hp/3,000rpm
最大トルクH1:59.4kg-m/1,800rpm
H1 ALPHA:71.8kg-m/1,500rpm
変速機4速AT、5速AT
ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
車両寸法
ホイールベース3,302mm
全長4,686mm
全幅2,197mm
全高1,956mm
車両重量3,091-3,684kg
その他
タンク容量H1:メイン95L、サブ64L
H1 ALPHA:メイン102L、サブ92L
最小回転半径8.1m
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俳優・アーノルド・シュワルツェネッガーの要望を基にハンヴィーを生産していたAMゼネラルから「ハマー」の名で発売された民生版ハンヴィー[4]1992年6月に限定版として工場直販にて発売が始まり、1992年10月より一般ディーラーにて販売開始された。1994年モデルより搭載されているディーゼルエンジンの排気量が6.2Lから6.5Lに変更された。1995年モデルから5.7Lガソリンエンジンモデルが追加され、その後2年間生産された。1996年モデルにターボディーゼルエンジンが追加された。

1999年に販売権を得たゼネラルモーターズにより、同車はAMゼネラルが製造した上で「ハマー・H1」と改名されて販売が続けられた[5]2005年モデルからいすゞ製8GF1型ディーゼルエンジンに変更され、名称も「H1アルファ」となる。H1のエンジンは、ディーゼル、ガソリン共にすべてV型8気筒である。

4ドアのオープントップ(キャンバストップ化可能)ルーフとリアカーゴを持つピックアップトラックの「4ドアオープントップ」の他に、4ドア+後部ドアのフルハードトップを持つ「4ドアワゴン」の2モデルが存在し、4ドアオープントップには純正オプションによりハードトップに改装したSUT(Sport Utility Truck.後述)タイプや、ベースとなったハンヴィーに似た、ハードトップと傾斜した車体後部にハッチバック式のリアゲートを持つ「スラントバック(Slant Back)」タイプも存在する。

原型の軍用車型であるハンヴィーと違い公的機関での使用例は多くないが、日本の公的機関(国土交通省北海道開発局北海道警察など)や企業(NTTドコモなど)で災害対策用車両として採用例がある。

日本国内では一般的な自動車と比べその大きさが印象的であり、特に目立つ全幅はH1の2,197mmに対し、例えば軽自動車では最大1,480mmと70cm以上の差がある。車両重量も重いため、日本ではこの型の一部は準中型車に分類される。2017年(平成29年)3月12日以降に普通自動車免許を取得した場合、運転できない(それ以前に取得した場合は運転可能)。

2006年原油価格高騰のあおりを受け、リッターあたりの走行距離がわずか4km前後のH1は深刻な販売不振となり、生産終了と発表された。また、2007年からのディーゼルエンジン排出ガス基準の強化により規制対応の試作を行ったが、基準を満たすめどが立たなかったことも販売終了の一因である。ただしAMゼネラルによるハンヴィーの生産は続けられており、2013年には、ハマーとは別の民間向けハンヴィーの発売計画がAMゼネラルから発表されている[6]

H2(2002年 - 2010年)

ハマー・H2
ハマー H2 フロント
ハマー H2 リア
概要
製造国 アメリカ合衆国
販売期間2002年 - 2010年
ボディ
ボディタイプSUVピックアップトラック
駆動方式4WD
パワートレイン
エンジンVortec 6,000 V型8気筒 OHV
最高出力242 hp/5,200 rpm
最大トルク50.5 kg-m/4,000 rpm
変速機4速AT
前:ダブルウィッシュボーン+トーションバー
5リンクコイルリジッド
前:ダブルウィッシュボーン+トーションバー
5リンクコイルリジッド
車両寸法
ホイールベース3,119 mm
全長5,171 mm
全幅2,062 mm
全高2,012 mm
車両重量2,903 kg
その他
タンク容量121L
ステアリングリサーキュレーティングボール
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シボレー・タホをベースとして、H1の雰囲気を踏襲したフルサイズSUVであり、軍用車との関連は無い。そのため、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアは5リンクリジッドと極一般的なものとなり、車軸にもハブリダクションは用いられていない。アクスル間に見えるはしご型フレームは低く、さらにはトランスファーケースなどがぶら下がっており、そのシルエットはH1とはまったく異なるものになった。

しかし、それと引き換えに、低く平らなフロアによる良好な居住性と、アメリカ人が好むGM製SUVの乗り味を獲得し、マニア以外からはむしろ歓迎される結果となり、高所得者層を中心に、当初からセールスは好調を維持した。

2002年よりGMが生産。日本では三井物産オートモーティブが輸入。米国ではキャデラック・エスカレードフォード社のリンカーン・ナビゲーターと並ぶ高級SUVである。

SUVのH2のほか、ピックアップトラックの「H2 SUT」も販売されている。「SUT」とは「Sport Utility Truck(スポーツユーティリティトラック)」の略で、SUVとピックアップトラックを掛け合わせたタイプの車を意味している。H2 SUTはH2の2列目座席より後ろからそのままルーフを取り払ったデザインになっており、フロントウインドシールド上部に専用のマーカーランプが付いている。

GMのSUV部門の女性チーフが「室内がゴム臭い」と言ったことから、2006年モデルからスペアタイヤが車外に出されることとなり、バックドアの使い勝手は悪化した。この変更による室内の変化はなく、サードシートも片側1脚のままで、スペアタイヤのなくなったあとは空きスペースとなっている(2008年よりサードシートは片側2脚の仕様となった)。

H3(2006年 - 2010年)

ハマー・H3
ハマー H3
ハマー H3 リア
概要
製造国 アメリカ合衆国
販売期間2006年-2010年
ボディ
ボディタイプSUVピックアップトラック
駆動方式4WD
パワートレイン
エンジン直列5気筒V型8気筒
最高出力3.5L:164hp/5,600rpm(SAE)
H3 ALPHA:295hp
最大トルク305Nm/2,800rpm
変速機5速MT、4速AT
前:独立SLAトーションバー
後:マルチリーフ、セミエリプティックシングルステージリーフスプリング
前:独立SLAトーションバー
後:マルチリーフ、セミエリプティックシングルステージリーフスプリング
車両寸法
ホイールベース2,842mm
全長4,742mm
全幅1,897mm
全高1,872mm
車両重量2,654kg
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シボレー・コロラドシャーシをベースにH2をさらに小型化したモデルで、ルイジアナ州シュリーブポートで生産されていた。コロラドとの部品共用は9%ほどであるという(パーセンテージは、点数、重量、価格のいずれかは不明)。

2006年モデルは、3.5Lの直列5気筒エンジンが搭載されているが、2007年モデルからは、3.7Lに排気量がアップされている。排気量が小さく、また、V型エンジンでもないので、アメ車らしいフィールには欠ける。トルク不足からアメリカでも評判が悪く、2007年9月に、5.3L V型8気筒エンジン(295PS)が搭載されたH3 ALPHAが登場した。また、ヨーロッパ向けには、ディーゼルエンジンの搭載も予定されていた。

H2と比較するとボディは一回り小さい。ハンドル切れ角が大きく、最小回転半径は5.6mしかない。車幅は、三井物産オートモーティブが輸入するモデルは1,980mmであるが、大型フェンダー込みの寸法であり、室内はそれほど広くはない。また、全長は、スペアタイヤ込みでも4,720mmと短く、カーゴルームのスペースも狭い。

2005年秋より三井物産オートモーティブが輸入。また、南アフリカ共和国でも生産され、2007年以降右ハンドルモデルも生産されたが、2007年モデルは正規の日本導入はなし。2008年モデルよりGMアジア・パシィフィック・ジャパンが輸入を担当。日本の場合、重量に対しての燃費で計算されたため、エコカー補助金を受けることができた。

高い悪路走破性からオフロードレースでも活躍している。バハ1000ではレジェンドのロッド・ホールのドライブにより、2009年に市販トラックの2クラスで優勝を挙げている[7]

ダカール・ラリーでは、NASCARレーサーやCARTの活躍で知られるロビー・ゴードンが2006年から「チームダカールUSA」を結成し、東洋タイヤを履いたH3でダカール・ラリーに参戦[8]。このH3の実態はパイプフレームで設計され、リアミッドシップに6リッターV8エンジンをマウントする二輪駆動のプロトタイプバギーである[9]NASCARマシン同様にドアがなく、小さな窓から乗り降りする。2009年に常勝三菱自動車軍団を上回る総合3位を獲得した。2012年は一時総合2位を走行していたが、タイヤの内圧調整システムの空気をエンジン内部に取り込んでいると考えたFIAにより失格の裁定がなされた(ゴードンは抗議したが棄却)[10]。2014年に売却され、サウジアラビアヤジード・アル=ラジが購入してワールドカップやサウジ国内選手権に参戦した[11]

2008年9月2009年モデルとして、H3のカーゴルーム部分から屋根を取り払った、ピックアップトラック版の「H3T」が登場した。H2 SUTと同様、スポーツユーティリティトラック(SUT)として位置づけられている。

2010年2月、三井物産のHP上でハマーの日本での輸入販売を停止すると発表した。同年5月24日に生産終了となり、GMのハマーブランドそのものが廃止となった。

HX コンセプト(2008年)

ハマー・HX コンセプト
ハマー HX コンセプト
概要
製造国 アメリカ合衆国
ボディ
ボディタイプSUV
駆動方式4WD
パワートレイン
エンジン3.6LV型8気筒
最高出力304hp/6,300rpm
最大トルク37.75kg-m/5,200rpm
変速機6速AT
車両寸法
ホイールベース2,616mm
全長4,343mm
全幅2,057mm
全高1,829mm
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2008年のデトロイトショーで発表された、近い将来導入される予定であったハマー H4を意識して作られたコンセプトモデル。

H3よりも全長、高さがコンパクトになったボディに、より優れたオフロード走破性能が与えられており、若年層がターゲットとされた。

搭載されたエンジンはE85 エタノール混合燃料に対応した3.6LのV型8気筒DOHC、足回りにはブレンボ製のキャリパーを採用、サスペンションにはFoxレーシングのコイルオーバーが採用されている。

ボディタイプは2ドアの2+2仕様であり、前席のルーフ部分は取り外しが可能になっており、後部ルーフ部分もスライドが可能となっている。

2010年のハマーブランドの廃止により、市販化はされなかった。

2011年、米My Electronic Vehicle社がゼネラルモーターズの公式ライセンスを受け、電動カートのシャシにHX コンセプトをデザインモチーフとしたELECTRIC HUMMER HX-Tと呼ばれる電気カートを制作し、販売した。

ハマーEV(2021年 - )

GMC・ハマーEV
GMC ハマーEV ピックアップ
概要
製造国 アメリカ合衆国
販売期間2021年 -
ボディ
乗車定員5人
ボディタイプ4ドア ピックアップトラック
5ドア SUV
駆動方式4WD
プラットフォームGM BT1 プラットフォーム
パワートレイン
最高出力1000hp
最大トルク1590kgm
車両寸法
ホイールベース3,444mm
全長5,507mm
全幅2,202mm
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GMCブランド初の電気自動車。当初、GMは2020年5月20日にワールドプレミアの開催を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、同イベントの延期を発表し[12]、5ヶ月後の10月20日に正式発表された[13]

SUV型の電動バギーで争うエクストリームEには、チップ・ガナッシ・レーシングが外装をハマーに換えて参戦している。

脚注

注釈

出典

関連項目

外部リンク

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