ニューヨーク市地下鉄の車両一覧

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ニューヨーク市地下鉄の車両一覧では、ニューヨーク市地下鉄で使用される車両全般について解説する。

ノスタルジア列車
The empty interior of a newer R142A car on the 4 train
地下鉄車両の車内(R142形
事業用車[1]

概説

2016年11月現在、総計6418両の車両が在籍する[2][注釈 1]。地下鉄車両は幅8フィート9インチ (2.67 m) ・全長51フィート (15.54 m) のAディヴィジョン用車両と幅10フィート (3.05 m) ・60フィート6インチ (18.44 m) または 75フィート6インチ (23.01 m) のBディヴィジョン用車両に分類される。また、保安装置である打子式ATSも共通ではない。ただしAディヴィジョンの車両がBディヴィジョンの路線を走行すること自体は可能である[注釈 2]。全ての車両は標準軌直流600Vによる第三軌条方式である。また、Bディヴィジョンでも75フィート6インチ (23.01 m) の車両は車両限界の関係で一部路線での走行が不可能である。なお、Bディヴィジョンの前身にあたるブルックリン・ラピッド・トランジットが地下鉄路線を開業させた際に導入された車両は幅10フィート (3.05 m) ・全長67フィート (20.42 m) だった。

車両の行先表示器は、R44形で初めて側面に液晶式のものが本格採用された。これ以前にはR32形やR38形英語版の前面系統表示器で採用例があったが、R44形で初採用されたものは単に系統記号を表示するだけでなく、行先そのものを表し、交互表示などで種別・走行路線などを示すことが可能なものである。この表示器はR46形R142形でも使用されたほか、R143形以降の各形式では液晶に代わってLEDを用いたものが使用されている。車内案内表示器はR110形で初めて採用された。

廃車になった旧型車両の一部はニューヨーク交通博物館に動態あるいは静態保存されている。

1984年から1989年にかけて、車体全体を赤色に塗装した「レッドバード」と呼ばれる車両が登場した。これらは新造車両ではなく、経費削減のために塗装が必要な構成車体を単色化したもので、R26形英語版R27形英語版R28形英語版R29形英語版R30形R33形R36形英語版の7形式が該当するが、2003年に全車が廃車あるいは事業用車に改造されて既に消滅している。

大規模修繕工事

多くの車両に対して1985年から1992年にかけて大規模修繕工事(: General Overhaul Program)を実施した。施工対象は以下の通り。

  • Aディヴィジョンの車両
    • R26形
    • R28形
    • R29形
    • R33形
    • R33 WF形
    • R36形
    • R36 WF形
  • Bディヴィジョンの車両
    • R30 GE形
    • R32形
    • R38形
    • R40形
    • R40A形
    • R42形
    • R44形
    • R46形

形式番号

1948年以降に導入された車両に関しては、形式が「R○○」となっている。Rの由来は諸説あるが、数字部分は契約時の番号から成り立っており、連番ではない場合も多い。

海中投棄処分

海中投棄処分を受ける廃車車両

2001年より漁礁を製作するために廃車車両の海中投棄処分を開始した[3][4]。しかし、2010年に環境面を考慮し中止となった[5][6]

現有車両

営業用車

形式ディヴィジョン製造年製造者車体全長車体幅画像車両番号CBTCの有無走行路線所属備考
R44形B1971年-1973年セントルイス・カー・カンパニー75フィート (22.86 m)10フィート (3.05 m)
  • 388–435
  • 436–466 (偶数車のみ)
    (352両、63両が運用中)
未搭載スタテンアイランド鉄道
  • 2両編成・4両編成。
  • 地下鉄用車両は全廃となった。
R46形B1975年-1978年プルマン社75フィート (22.86 m)10フィート (3.05 m)
  • 5482–6207
    (4両)
  • 6208–6258
    (偶数車のみ)
    (754両、748両が運用中)
未搭載
  • 2両編成・4両編成。
  • 5両は事故廃車となった[7]
R62形A1983年-1985年川崎重工業51.04フィート (15.56 m)8フィート9インチ (2.67 m) 1301–1625
(325両、315両が運用中)
未搭載
  • 5両編成。
  • 10両は事故廃車となった。
R62A形A1984年-1987年ボンバルディア・トランスポーテーション51.04フィート (15.56 m)8フィート9インチ (2.67 m) 1651–2475
(825両、824両が運用中)
未搭載
  • 3両編成・5両編成。
  • 1両は事故廃車となった[8]
R68形B1986年-1988年ウェスチングハウス
-アムレイル社
75フィート (22.86 m)10フィート (3.05 m) 2500–2924
(425両)
未搭載
  • 単行車・4両編成。
R68A形B1988年-1989年川崎重工業75フィート (22.86 m)10フィート (3.05 m) 5001–5200
(200両)
未搭載
  • 4両編成。
R142形A1999年-2003年ボンバルディア・トランスポーテーション51.04フィート (15.56 m)8フィート9インチ (2.67 m) 1101–1250,
6301–7180
(総計1,030両、1,025両が運用中)
未搭載(搭載改造予定)[9]:23
  • 5両編成。先頭車はA車、中間車はB車と称される。
R142A形A1999年-2004年川崎重工業51.04フィート (15.56 m)8フィート9インチ (2.67 m) 7591–7810
(220両)
未搭載(搭載改造予定)[9]:24
  • 5両編成。先頭車はA車、中間車はB車と称される。
  • 380両はR188形に編入[10]
R143形B2001年-2003年川崎重工業60フィート (18.29 m)10フィート (3.05 m) 8101–8312
(212両)
全車搭載
  • 4両編成。
  • 新製時よりCBTC搭載済。
R160A形(4両)B2005年-2010年アルストム60フィート (18.29 m)10フィート (3.05 m) 8313–8652
9943–9974
(372両)
一部のみ搭載、その他は未搭載(搭載改造予定)[11]
  • 4両編成。CBTC搭載車は 8313-8380 の68両。
R160A形(5両)B2005年-2010年アルストム60フィート (18.29 m)10フィート (3.05 m) 8653–8712
9233–9802
(630両)[12]
未搭載(搭載改造予定)[11]
  • 5両編成。
  • R160B形の主電動機などはアルストム製とシーメンス製が混在。
R160B形B2005年-2010年川崎重工業60フィート (18.29 m)10フィート (3.05 m) 8713–9232
9803–9942
(660両)[12]
R188形A2011年-2015年川崎重工業51.04フィート (15.56 m)8フィート9インチ (2.67 m) 7211–7590
7811–7936
(506両)
全車搭載
  • 5両編成・6両編成。
  • 380両はR142A形を改造編入したものである[10][13]。一部編成は新製車両を組み込んで6両編成になった。
R179形B2017年-2019年ボンバルディア・トランスポーテーション60フィート (18.29 m)10フィート (3.05 m) 3050-3237(4両編成)
3010-3049、3238-3327(5両編成)
(318両)
未搭載(搭載改造予定)[14]
  • 4両編成・5両編成。
  • 4両編成はC・J・Z線で、5両編成はA線で活躍している。

事業用車

軌道検測車

地下鉄には4両の軌道検測車がある。1両は1984年に導入された「R59形」であり[15]、他3両は「R63形」である[16][17]。1両当たりの車重は約45トンである[17]。これらの車両では、以下の検測を行う。

  • 線形[18]
  • 勾配
  • カント
  • 軌間
  • 軌条断面
  • 縦断曲線[19]
  • 波形
  • 車両限界検測
  • 第三軌条の検測
  • 集電架・第三軌条間距離の検測[20]

これらの検測は年6回実施されている[21]

導入予定車両

形式ディヴィジョン製造予定年製造者総計両数試作モックアップの画像備考
R211形B2020年-2023年川崎重工業535両(地下鉄:460両、スタテンアイランド鉄道:75両)[22] 製造予定両数は基本契約のもので、これに最大1,077両のオプション契約が付随している。全てのオプションが行使された場合、2025年まで製造が継続されることとなる。
一部車両には広幅貫通路を使用する予定[23]
R262形A2020年代未公表1,500両程度全ての車両に広幅貫通路を使用する予定[9]:25

過去の車両

IRTが導入

形式・通称製造年製造者製造両数車両番号廃車時期備考
Composite1903年–1904年ジェウェット・カー・カンパニー,
セントルイス・カー・カンパニー,
ジョン・ステフェンソン・カンパニー,
ワソン・マニファクチュアリング
500両2000–2159,
3000–3339
1916年(地下鉄線)
1950年
2000–2159: 付随車
1916年から1950年までは高架鉄道で使用
Hi-V "Gibbs"1904年–1905年アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー300両3350–36491959年
Hi-V "Deck Roof"1907年–1908年アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー50両3650–36991959年
Hi-V "Hedley"1910年–1911年アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー,
スタンダード・スチール・カー・カンパニー,
プレスド・スチール・カー・カンパニー
325両ACF: 3700–3809,
SS: 3810–3849,
PS: 3850–4024
1959年
1915年プルマン292両4223–45141959年全て付随車
Lo-V "Flivver"1915年プルマン178両4037–42141962年
Lo-V "Steinway"1915年–1916年プルマン110両4025–4036,
4215–4222,
4555–4576,
4700–4770
1963年スタインウェイ・トンネル走行可能
Lo-V "Standard"1916年–1917年プルマン695両4515–4554,
4577–4699,
4771–5302
一部車両は付随車
1922年プルマン100両5303–54021963年全て付随車
1924年–1925年アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー225両5403–56271964年
Lo-V "Steinway"1925年アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー25両5628–56521964年スタインウェイ・トンネル走行可能
Lo-V "World's Fair"1938年セントルイス・カー・カンパニー50両5653–57021969年

BMTが導入

形式・通称製造年製造者製造両数車両番号廃車時期備考
AB Standard1914年–1919年アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー600両2000–25991969年
1920年–1922年プレスド・スチール・カー・カンパニー300両2600–2899
1924年50両4000–40491961年全て付随車
BMT-SIRT (ME-1)1925年スタンダード・スチール・カー・カンパニー25両2900–29241961年全車が1954年にスタテンアイランド鉄道へ移籍した。
D-type Triplex1925年–1928年プレスド・スチール・カー・カンパニー121両6000–61201965年
Green Hornet1934年プルマン1両70031942年試作車
Zephyr1934年バッド社1両70291954年試作車
Multi1936年セントルイス・カー・カンパニー10両7004–70131961年
プルマン15両7014–7028
Bluebird1938年, 1940年クラーク・イクイップメント・カンパニー6両8000–80051957年

ニューヨーク市が導入

「レッドバード」の通称があるR33形電車
形式製造年ディヴィジョン製造者製造両数車両番号廃車時期
R1形英語版1930年–1931年INDアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー300両100–3991973年
R4形英語版1932年–1933年INDアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー500両400–8991976年
R-6-3形英語版1935年–1936年INDアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー250両900–11491977年
R-6-2形英語版1936年INDプルマン150両1150–12991977年
R-6-1形英語版1936年INDプレスド・スチール・カー・カンパニー100両1300–13991977年
R7形英語版1937年INDアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー,

プルマン

150両ACF: 1400–1474,
プルマン: 1475–1549
1977年
R7A形英語版1938年INDアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー,

プルマン

100両プルマン: 1550–1599,
ACF: 1600–1649
1977年
R9形英語版1940年IND,

BMT

アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー,

プレスド・スチール・カー・カンパニー

153両ACF: 1650–1701,
PS: 1702–1802
1977年
R10形英語版1948年–1949年IND,

BMT

アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー400両1803–1852,
3000–3349
1989年
1803–1852 は1970年に 2950–2999 に改番された。
R11形英語版1949年BMT,

IND

バッド社10両8010–80191965年(形式を変更し消滅)
1965年にR34形に編入されるが、1977年に廃車。
R12英語版1948年IRTアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー100両5703–58021981年
試作車
R14形英語版1949年IRTアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー150両5803–59521984年
R15形英語版1950年IRTアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー100両5953–5999,
6200–6252
1984年
R16形英語版1955年BMT,

IND

アメリカン・カー・アンド・ファウンドリー200両6300–64991987年
R17形英語版1955年–1956年IRTセントルイス・カー・カンパニー400両6500–68991988年
R21形英語版1956年IRTセントルイス・カー・カンパニー250両7050–72991987年
R22形英語版1957年IRTセントルイス・カー・カンパニー450両7300–77491987年
R26形英語版1959年–1960年IRTアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー110両7750–78592002年
2両ユニット
R27形英語版1960年–1961年IND,

BMT

セントルイス・カー・カンパニー230両8020–82491990年
2両ユニット
R28形英語版1960年–1961年IRTアメリカン・カー・アンド・ファウンドリー100両7860–79592002年
2両ユニット
R29形英語版1962年IRTセントルイス・カー・カンパニー236両8570–88052002年
2両ユニット
R30形・R30A形1961年–1962年IND,

BMT

セントルイス・カー・カンパニー320両R30: 8250–8351

R30A: 8352–8411
R30: 8412–8569

1993年
2両ユニット
R32形・R32A形英語版1964年IND,

BMT

バッド社600両
  • R32A: 3350–3649
  • R32: 3650–3949
2020年[注釈 3]
R33形1962年–1963年IRTセントルイス・カー・カンパニー500両8806–93052003年
2両ユニット
R33 WF形英語版1963年IRTセントルイス・カー・カンパニー40両9306–93452003年
一部は事業用車に転用
R34形英語版R11形英語版を参照
R36形英語版1963年–1964年IRTセントルイス・カー・カンパニー34両9524–95572003年
2両ユニット
R36 WF形英語版1963年–1964年IRTセントルイス・カー・カンパニー390両9346–9523,
9558–9769
2003年
2両ユニット
R38形英語版1966年–1967年IND,

BMT

セントルイス・カー・カンパニー200両3950–41492009年
2両ユニット
R39形開発中止IRT,

BMT

路線廃止が相次ぎ開発中止になった
R40形英語版1968年–
1969年
IND,

BMT

セントルイス・カー・カンパニー200両4150–43492009年
2両編成
製造時の車両番号は 4150–4249 ならびに 4350–4449 だった。
R40A形英語版1968年–1969年IND,

BMT

セントルイス・カー・カンパニー200両4350–45492009年
2両ユニット
製造時の車両番号は 4250–4349[24] ならびに 4450–4549[25] だった。
R42形英語版1969年–1970年IND,

BMT

セントルイス・カー・カンパニー400両4550-49492020年
R44形 (地下鉄車両)1971年-1973年IND,

BMT

セントルイス・カー・カンパニー288両100-3872010年 (地下鉄車両)
4両編成。製造時の車両番号は 100-387 だったが、1991年から1993年にかけて278両が 5202–5479 に改番された。スタテンアイランド鉄道では同型車が現役である。
R55形開発中止IND,

BMT

開発途中でそれを断念[26]し、R68形の製造に移行した。
R99形英語版R29形英語版を参照
R110A形英語版1992年IRT川崎重工業10両8001–80101999年
(製造当初はR130形)
「ニュー・テクノロジー・トレイン」の試作車
8002-8004 と 8007-8009 の6両は事業用車に改造。
R110B形英語版1992年IND,

BMT

ボンバルディア・トランスポーテーション9両3001–30092000年
(製造当初はR131形)
「ニュー・テクノロジー・トレイン」の試作車
1両当たり67-フート (20 m) の3両編成
2015年現在、3002・3003・3007・3009は207丁目車両基地で留置され、ほか5両は訓練車となった。

特記事項

ニューヨーク交通博物館にて動態保存されている旧型車両
  • 冷房装置はR42形英語版で初めて採用され、それ以前の車両も一部に搭載された。トンネルへの排熱問題の観点もあり、冷房搭載車の運用開始は1969年となった[27]
  • 第二次世界大戦中、19世紀に製造された高架鉄道車両がカリフォルニア州 サンフランシスコ湾岸地域に送られ、造船所内の鉄道で使用された。大戦後はモーテルに転用された車両があるが、その後の消息は不明である。ただしそのうち2両はカリフォルニア州リオビスタにあるウエスタン鉄道博物館に保存されている[28]
  • 事業用車が多数存在し、マネートレインや無蓋貨車、ディーゼル機関車などが存在する[29]
  • 下表は1981年時点で当時在籍している車両を廃車予定の時期を示したスケジュールである[30]

Bディヴィジョンの車両
形式廃車予定時期実際の廃車時期
R27形1995年1990年
R30形1997年1993年
R32形2000年2010年-現在
R38形2002年2009年
R40形2003年2009年
R42形2004年2010年-2020年
R44形2007年2010年-現在[注釈 4]
R46形2011年2020年-(予定)

脚注

注釈

出典

参考文献

外部リンク