ダニエラ・ベガ

ダニエラ・ベガ・エルナンデススペイン語: Daniela Vega Hernández1989年6月3日 - )は、チリ女優メゾソプラノ歌手[1][2]第90回アカデミー賞外国語映画賞を獲得した映画『ナチュラルウーマン』(2017年)での演技が絶賛を受け、世界的注目のきっかけとなった[3][4]。また第90回アカデミー賞ではプレゼンターも務め、オスカーの歴史において初めてプレゼンターを務めたトランスジェンダーの人物となった。2018年には、タイム誌において「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた[5]

ダニエラ・ベガ
Daniela Vega
Daniela Vega
本名ダニエラ・ベガ・エルナンデス (Daniela Vega Hernández)
別名義ダニ・ベガ (Dani Vega)
生年月日 (1989-06-03) 1989年6月3日(35歳)
出生地 チリ サンティアゴ県サン・ミゲル英語版
活動期間2011年 -
活動内容女優歌手
主な作品
ナチュラルウーマン
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日本では名字を英語風に読んだ「ダニエラ・ヴェガ」表記も見られるが[6][7][8]、本記事ではチリの公用語であるスペイン語の発音に近い「ベガ」表記に統一する[9][10]

幼少期

ベガは1989年6月3日に、チリサンティアゴ県サン・ミゲル英語版で、父イゴール・アレハンドロ・ベガ・イノストロサ (Igor Alejandro Vega Inostroza) と母サンドラ・デル・カルメン・エルナンデス・デ・ラ・クアドラ (Sandra del Carmen Hernandez de la Cuadra) の長子として生まれた[11]。ベガは8歳の時から、祖母に習ってオペラを学び始めた[12][13]。成長したベガは男子校に通ったが、そこではいじめを受けた[14][15]。10代後半までこの男子校に通ったが、自身がトランスジェンダーであることを自覚し、ジェンダー移行英語版を始めた[14][12]。両親と弟のニコラス (Nicholas) は、当時のチリが保守的な環境であったにもかかわらず、ベガのジェンダー移行を支援した[16][15]。ジェンダー移行を済ませた後、彼女はトランスジェンダー女性としての機会の無さから鬱状態に苦しんだが[17][18][12]、両親から支援を受け、また父の勧めで美容学校、その後演劇学校に通った[14]

キャリア

2011年 – 2017年:初期の仕事

ベガは脚本家・監督を務めるひとりの人物から、自身の経験を基にして、トランスジェンダーに関する短い舞台作品を共同製作しないかと持ちかけられた[19]。彼女も協力したこの作品は、2011年にマルティン・デ・ラ・パラ (Martin de la Parra's 2011) により "La mujer Mariposa"(The Butterfly Woman、蝶女)とのタイトルで戯曲化され、ベガ自身をスターに押し上げた[19]。この作品では、ベガの歌も披露され、サンティアゴで8年間上演された[19]。この間、彼女は移民を題材にした小片 "Migrante"(「移民」の意)など、いくつかの作品に参加している[20][21]。ベガが広く知られるようになったのは、2014年にマヌエル・ガルシア英語版の人気曲『マリア』(原題、"Maria")のミュージック・ビデオに出演したことがきっかけである。この曲とミュージック・ビデオは、同性愛者自殺予防機構とのコラボレーションで作られたもので、10代の同性愛者の自殺予防に関する啓発目的で製作された[22]。銀幕デビューとなったのは、2014年のドラマ映画『ラ・ビシタ英語版』(原題)で、父の通夜に参列するトランスジェンダー女性を演じた[23][19]

2017年:『ナチュラルウーマン』でのブレイクスルー

2017年の第67回ベルリン国際映画祭にて

第67回ベルリン国際映画祭でお披露目された、セバスティアン・レリオ監督の『ナチュラルウーマン』(2017年)では、ベガの演技が多くの批評家に絶賛された[24][3]。この作品では、ベガ演じるマリーナと、年上で将来も思い描く男性オルランド(演:フランシスコ・レジェス英語版スペイン語版)との物語が描かれる。オルランドが病で急死した後、マリーナは彼の家族や社会の冷たい目に直面し、自らが題名通りの「魅力的な女性」であることを示すため戦いを始める[25]。『バラエティ』誌の批評家ガイ・ロッジは、ベガの演技について「ベガの力強く、表情豊かで、かすかに苦しみを匂わせる演技は、政治的な賞賛をも大きく越えた評価に値する。幾重にも重ねられた、感情的に多型な演技での妙技であり、これは正確な感受性を持った[レリオ]監督が育んだものだ。監督は、マリーナが行きたくないような場所へ押し込むこと無く、彼女の状況を全く率直に表現させた」と述べた[26]。また、アカデミー賞候補作発表前には、彼女の名前が主演女優賞候補として強く推されるほどだった[27][28][29]。前哨戦となるパームスプリングス国際映画祭では、外国語映画部門主演女優賞を獲得した[30]。ベガは2018年の第90回アカデミー賞でプレゼンターを務め、オスカー史上初めてプレゼンターを務めたトランスジェンダーとなった[31][32][33][34]。また同じ年には、タイム誌において「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた[5]

フィルモグラフィ

作品名役名監督備考出典
ラ・ビシタ英語版(原題)
La visita
2014年エレナ
Elena
マウリシオ・ロペス・フェルナンデス
Maurício López Fernández
英題:The Guest[19]
ナチュラルウーマン
Una mujer fantástica
2017年マリーナ・ビダル
Marina Vidal
セバスティアン・レリオ
Sebastián Lelio
英題:A Fantastic Woman[35]

受賞とノミネート

2017年のフェニックス賞(Fénix Awards、メキシコ)レッドカーペットにて
映画賞対象部門結果出典
2015年17èmes Rencontres du Cinéma sud-américainラ・ビシタ英語版(原題)
La Visita
最優秀女優賞
Best Actress
受賞[36]
2017年フィルム・フェスティバル・リマPUCP英語版
Film Festival Lima PUCP
ナチュラルウーマン
Una mujer fantástica
最優秀女優賞
Best Actress
受賞[37]
Premio iberoamericano de cine Fénix最優秀女優賞
Best Actress
受賞[38]
ハバナ映画祭英語版
Havana Film Festival
最優秀女優賞
Best Actress
受賞[39]
2018年パームスプリングス国際映画祭
Palm Springs Film Festival
外国語映画 最優秀女優賞
Best Actress in a Foreign Language Film
受賞[40]
ドリアン賞英語版
Dorian Awards
今年一番の女優賞
Best Performance of the Year – Actress
ノミネート[41]
本人ライジング・スター賞Rising Star Awardノミネート
国際シネフィル賞英語版
International Cinephile Society Awards
ナチュラルウーマン
Una mujer fantástica
最優秀女優賞
Best Actress
ノミネート[42]
カルーチェ賞英語版
Caleuche Awards
最優秀主演女優賞
Best Leading Actress
受賞[43]
プラティノ賞英語版
Platino Awards
女優賞英語版
Best Actress
受賞[44]


脚注

外部リンク