ダウントン・アビー/新たなる時代へ

ダウントン・アビー/新たなる時代へ』(ダウントンアビー あらたなるじだいへ、Downton Abbey: A New Era)は、2022年に公開されたイギリスアメリカ合衆国合作による歴史時代劇映画である。

ダウントン・アビー/
新たなる時代へ
Downton Abbey: A New Era
監督サイモン・カーティス
脚本ジュリアン・フェロウズ
原作ジュリアン・フェロウズ
ダウントン・アビー
製作ギャレス・ニーム英語版
リズ・トラブリッジ
ジュリアン・フェロウズ
製作総指揮ナイジェル・マーチャント
出演者ヒュー・ボネヴィル
ジム・カーター
ミシェル・ドッカリー
エリザベス・マクガヴァン
マギー・スミス
ペネロープ・ウィルトン
音楽ジョン・ラン英語版
撮影アンドリュー・ダン英語版
編集アダム・レヒト
製作会社カーニバル・フィルムズ英語版
フォーカス・フィーチャーズ
配給イギリスの旗 ユニバーサル・ピクチャーズUK
アメリカ合衆国の旗 フォーカス・フィーチャーズ
日本の旗 東宝東和[1]
公開イギリスの旗 2022年4月29日
アメリカ合衆国の旗 2022年5月20日
日本の旗 2022年9月30日[2]
上映時間125分[3]
製作国イギリスの旗 イギリス
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語英語
製作費$40,000,000[4]
興行収入世界の旗 $92,640,000[5]
日本の旗 1億2500万円[6]
前作ダウントン・アビー
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2010年から2015年まで放映されたテレビシリーズ『ダウントン・アビー』の2019年の映画版の続編である[7]。テレビシリーズの原案・脚本を担当したジュリアン・フェロウズが脚本、サイモン・カーティスが監督を務めている。

ストーリー

1928年。ブロンプトンの教会でトム・ブランソンとルーシー・スミスの結婚式が行われる。その次の火曜日[注 1]、先代グランサム伯爵夫人ヴァイオレットに呼ばれた弁護士のジョージ・マレーがダウントン・アビーを訪れる。彼は一同に、フランスのモンミライユ侯爵が他界し、ヴァイオレットが南仏のヴィラを遺産として相続したと告げる。ヴァイオレットはヴィラを曾孫娘であり、亡きシビル・クローリーとトムの娘であるシビーに遺贈する意思を明らかにする。

料理長助手のデイジーと結婚し、ユー・ツリー農場に住むこととなった下僕のアンディは、義父のメイソンの存在により夫婦水入らずの時間が取れないことに不満を感じ、メイソンもまた新婚の二人の邪魔をしたくないと考える。デイジーはメイソンが料理長のパットモアと一緒になり、彼女のB&Bに住むよう画策する。執事のトーマスは、かつてジョージ5世の従者として訪れ、自身と同じ同性愛者として親しくなったエリス[注 2]が結婚したことを知って落ち込む。

グランサム伯爵ロバートのもとには映画監督のジャック・バーバーから屋敷を撮影に使用したいとの連絡が来る。伯爵は断るが、雨漏りする屋根の修理代を得たい長女のメアリーは父親を説得し、次女のヘクサム侯爵夫人イーディスとともに監督をロケハンに招く。バーバーは屋敷をサイレント映画『ザ・ギャンブラー』でカジノとして使いたいと言い、二人は承諾する。

現モンミライユ侯爵によるヴィラへの招待を幸いとし、映画撮影の喧騒を避けるために、ロバートは妻のコーラ、ヘクサム侯爵夫妻、ブランソン夫妻、ルーシーの実の母であるモード・バグショー、さらに伯爵夫妻の従者・侍女のベイツとバクスターとともにフランスへ赴く。前執事のカーソンは映画撮影に強く反対したため、撮影の邪魔にならないようにと、メアリーとカーソンの妻で家政婦長のヒューズが旅に同行させる。南仏で一同はモンミライユ侯爵の歓迎を受けるが、先代侯爵夫人は遺贈に異を唱える。やがてダウントン一行は、先代モンミライユ侯爵がヴァイオレットと恋愛関係にあり、誕生時期が符合するロバートが実は侯爵の子であるがゆえに、ヴィラを遺贈したのではないかと疑い始める。現モンミライユ侯爵もロバートを異母兄弟と考えていたと親しみを見せる。さらにコーラは病を夫に告白し、ロバートは動揺する。

映画撮影のために、スターのマーナ・ダルグリーシュとガイ・デクスターがやってくることに使用人たちは沸き立つ。だが、ダルグリーシュはしばしば苛立った態度を見せる。撮影の途中で、製作中断の連絡が監督のもとに来る。時代はサイレント映画からトーキー映画への過渡期を迎えており、前者の興収が不振であることが理由である。メアリーは監督に、トーキー映画への変更を提案する。既存の撮影箇所には地元の学校長で撮影の見学をしていた元下僕のモールズリーが台詞を書き起こし台本を書く。しかし、イーストエンド出身で訛りの強いダルグリーシュに貴族の役は合わないと判断されて録音・撮影は中断する。ヒューズの提案でメアリーが吹き替えを担当することになる。以後撮影は同時録音で行われ、ダルグリーシュだけが口パクをする側でメアリーがその台詞を吹き込むことになる。だが、ダルグリーシュが誤って台詞を何度も言ってしまいそのたびに撮影が中断され、苛立った監督が下品な言葉を吐いてしまう。トーキー映画の時代となり、仕事を失うことを恐れていたダルグリーシュは部屋に閉じこもるが、彼女の世話をしていたアンナとデイジーが励ましてなんとか撮影が続行される。

伯爵夫妻一行の帰国後、ヴァイオレットの依頼で彼女の手紙を整理していたマートン男爵夫人イザベルは先代モンミライユ侯爵との手紙のやりとりを調べ、のちにヴァイオレット本人に尋ねる。二人の間には何もなく、ロバートは先代グランサム伯爵の実の子であると答えられる。映画の撮影が延び、エキストラに支払う金が底をついた監督は屋敷の使用人をエキストラにすることを提案し、使用人およびメイソンは嬉々として正装し食堂に座る。メアリーに魅かれたバーバーはキスを求めるも、メアリーは断る。撮影は無事終了する。脚本の才能を評価されたモールズリーは監督から一脚本につき700ギニー以上もの報酬を提案され、彼のもとで脚本を書くことを決意する。また、十分な収入の目途がついたとしてモールズリーはバクスターに求婚して承諾され、録音機材を通じて一同が偶然にこれを聞く。デイジーとアンディの計画が功を奏し、メイソンはパットモアと共に彼女のB&Bで暮らすことを決断する。クラークソン医師の診断の結果、コーラの病は単なる悪性貧血で死に至る病ではないことがわかり、伯爵夫妻は安堵する。トーマスは親密となっていたデクスターに、執事以上の存在としてハリウッドの屋敷で同居するよう提案され、ダウントンを去ることを決意する。このためメアリーはカーソンにアンディの教育係として屋敷に戻るよう依頼する。コーラの提案でアメリカ英語を取得しハリウッドで働くことを目指すこととしたダルグリーシュも落ち着き、使用人に礼やキスをして帰って行く。ルーシーは夫トムに妊娠を告げる。

その夜、ヴァイオレットの容体が急変し、愛する家族に見守られながら他界する。一同は悲しみに暮れながら葬儀を執り行う。数ヶ月後、ブランソン夫妻とシビーが生まれたばかりの息子とともにダウントンを訪れ[注 3]、ダウントンの一同は歓迎する。その大広間には先代伯爵夫人ヴァイオレット・クローリーの肖像画が掲げられている。

キャスト

役名〈爵位〉キャスト日本語吹替[8]備考
ダウントン・アビーの住人および親族 (貴族階級)
ロバート・クローリー〈グランサム伯爵〉ヒュー・ボネヴィル玉野井直樹クローリー家当主
コーラ・クローリー〈グランサム伯爵夫人〉エリザベス・マクガヴァン片貝薫ロバートの妻でアメリカ人
ヴァイオレット・クローリー〈先代グランサム伯爵夫人〉マギー・スミス一城みゆ希ロバートの母
ロザムンド・ペインズウィックサマンサ・ボンド茜部真弓ヴァイオレットの娘、ロバートのきょうだい[注 4]
メアリー・タルボットミシェル・ドッカリー甲斐田裕子伯爵の長女、実質的な当主
ジョージ・クローリーオリヴァー・バーカー
ザック・バーカー
メアリーと故マシューの息子
キャロライン・タルボットビビ・バー
オリーヴ・バー
メアリーと現夫ヘンリーの娘
イーディス・ペラム〈ヘクサム侯爵夫人〉ローラ・カーマイケル英語版坂井恭子伯爵の次女
バーティ・ペラム〈ヘクサム侯爵〉ハリー・ハデン=ペイトン英語版長谷川敦央イーディスの夫
マリゴールドエヴァ・サムズ
カリーナ・サムズ
森永麻衣子イーディスの元交際相手[注 5]との間の娘
トム・ブランソンアレン・リーチ星野健一故三女シビルの夫
ルーシー・ブランソン(旧姓スミス)タペンス・ミドルトン藤田曜子モードの侍女で実は娘、トムの新妻[9]
ルカ [注 6][11]トムとルーシーの子
シビル・“シビー”・ブランソンフィフィ・ハート故三女シビルとトムの娘
モード・バグショーイメルダ・スタウントン小宮和枝伯爵の従妹、メアリー王妃付女官
イザベル・グレイ〈マートン男爵夫人〉ペネロープ・ウィルトン水野ゆふメアリーの亡夫マシューの母
リチャード・“ディッキー”・グレイ〈マートン男爵〉ダグラス・リース及川ナオキイザベルの夫
ダウントン・アビーの住人 (使用人関係)
トーマス・バローロバート・ジェームズ=コリアー三上哲執事
エルシー・カーソン(旧姓ヒューズ)フィリス・ローガン英語版沢田泉家政婦長、カーソンの妻
ジョン・ベイツブレンダン・コイル英語版谷昌樹伯爵付きの従者
フィリス・バクスターラクエル・キャシディ英語版森本73子伯爵夫人付きの侍女
グラディス・デンカースー・ジョンストン英語版伊沢磨紀ヴァイオレットの侍女
アンナ・ベイツジョアン・フロガット英語版衣鳩志野メアリーの侍女、ベイツの妻
アンディ・パーカーマイケル・C・フォックス英語版虎島貴明下僕、デイジーの夫[9]
アルバートチャーリー・ワトソン角田雄二郎下僕
ベリル・パットモアレズリー・ニコル英語版美々料理長
デイジー・パーカー(旧姓ロビンソン/メイソン)ソフィー・マクシェラ英語版中司ゆう花料理長助手、アンディの妻
チャールズ・カーソンジム・カーター中村浩太郎前執事
ジョセフ・モールズリーケヴィン・ドイル英語版池田ヒトシ元下僕/現校長
ジョニー・ベイツアーチャー・ロビンズジョンとアンナの息子
クローリー家やダウントン村の関係者
ジョージ・マレージョナサン・コイ英語版駒谷昌男伯爵の弁護士
リチャード・クラークソンデイヴィッド・ロブ板取政明医者
アルバート・メイソンポール・コープリー佐々木薫デイジーの前夫の故ウィリアムの父
ブロンプトンの教会の司祭アラステア・ブルース英語版[注 7]松川裕輝トムとルーシーの結婚式
映画関係者
ジャック・バーバー[12]ヒュー・ダンシー東地宏樹映画監督[13]
マーナ・ダルグリーシュ[14]ローラ・ハドック雨蘭咲木子サイレント映画スター[13]
ガイ・デクスター[12]ドミニク・ウェスト丸山壮史ハリウッド俳優[13]
スタビンズアレックス・マックイーン駒谷昌男音響技師
ディーラー役の俳優ロス・グリーン映画出演者
フランス
〈モンミライユ侯爵〉ジョナサン・ザッカイ羽野だい豆現モンミライユ侯爵
〈先代モンミライユ侯爵夫人〉ナタリー・バイ現モンミライユ侯爵の母
使用人デイヴィッド・オリヴァー・フィシャー
ローセルアレックス・スカーベック帽子屋
歌手シャリース歌手[15]

製作

2019年に第1作の映画が公開されると、原作者のジュリアン・フェロウズと出演者らは、続編制作に関する構想があると述べた[16] 。2020年1月、ドラマ『ザ・ギルディド・エイジ英語版』の脚本を完成させた後、フェロウズが本作の脚本に取り掛かるとの報道がなされた[17]。2020年9月、カーソンを演じるジム・カーターは、本作の脚本が完成したと述べ[18] 、2021年2月、ロバートを演じるヒュー・ボネヴィルは、BBCラジオ2のインタビューで、出演者と製作陣が新型コロナウイルスのワクチンを接種が完了したら、すぐに撮影が始まるだろうと述べた[19]

主要な撮影は当初、2021年6月12日から8月12日までイギリスのハンプシャー[20] で予定されていたが、『Deadline Hollywood』は制作が2021年4月中旬に制作が開始されたとした[21]。2021年7月16日にエリザベス・マクガヴァンは自身のインスタグラムで撮影が完了したと投稿した[22]。2021年8月25日には題名が『Downton Abbey: A New Era』となることも発表された[23][24]

多くの主要キャストが映画撮影にも参加した。ゲストとしてヒュー・ダンシーローラ・ハドックナタリー・バイドミニク・ウェストジョナサン・ザッカイが参加した[25]。前作でジョージ5世の従者として登場し、執事バローと恋仲となったリチャード・エリス役のマックス・ブラウンは本作に出演しないと述べた[26]。またメアリーの夫マシュー・グードはミニシリーズ『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男英語版』のために本作に出演しなかったと述べた[27]

南仏の別荘のシーンは、フランス南東部のル・プラデにあるヴィラ・ロカベラという屋敷で撮影された[28]。船上のシーンは英国王室所有のロイヤルヨット、ブリタニア号英語版が使用された[29]。トムとルーシーの結婚式のシーンは、イギリスのエセックス州にあるベルチャンプ・ホール英語版で撮影された[30]

公開

本作品は、2021年12月22日に劇場で公開予定[31][32]だったが、2022年3月18日公開へと延期となった[33]。そして更に英国では4月29日、北米では5月20日となった[34][35]。米国では劇場公開の45日後の7月4日からピーコックにて配信された[36]。映画のプレミア公開はロンドンのレスター広場にて2022年4月25日に行われた[37][38]。日本では2022年9月30日に公開された[2]

タイトルは当初『Downton Abbey 2』とアナウンスされていた[39]が、2022年8月26日(英国時間)に『Downton Abbey: A New Era』となることが発表された[40]。日本では『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』の題で9月30日に公開されることが2022年7月27日に発表された[41][42]

評価

興行収入

2023年1月3日 (2023-01-03)現在、『Downton Abbey: A New Era』はアメリカとカナダで合計4414万ドル、その他で4850万ドルの収入があり、世界全体で9264万ドルとなっている[5]

アメリカとカナダでは『MEN 同じ顔の男たち』と同時に公開され、初週末の3820館での公開の中で1600万から2100万ドルの興行収入と予想されていた[43][44]。木曜夜の試写100万ドルを含めて初日には740万ドルとなり、最初の週末には1600万ドルとなり興行収入第二位を記録した[45]が、予測の最低額となった。初週の観客のうち48%は55歳以上で、『デッドライン・ハリウッド』は「新型コロナウイルス感染拡大以来初めて、観客たちは年配の常連客を繰り返し見た」と述べている[4]

米国・カナダの他では、33の国と地域で初週930万ドルの収入となった。ここには英国の746館の380万ドル(『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』以来二番目の規模)と豪州の130万ドルも含まれる[46]。二週目には660万ドル[47]、三週目には360万ドルのの収入があった[48]

批評

レビュー・アグリゲーターRotten Tomatoesでは批評家の支持率は155件で85%、平均点は6.9/10となっている。このサイトでは「『ダウントン・アビー』の内容のなさが完全に泡となりかけているにもかかわらず、本作の慣れ親しんだ快楽は長年のファンを喜ばせるだろう」としている[49]

Metacriticでは45件のレビューで加重平均値が63/100と示され、「概して好意的な評価」ということがほのめかされている[50]

脚注

注釈

出典

関連項目

  • 恐喝』(1929年):本作の中で撮影されていた映画『ザ・ギャンブラー』と同じくサイレント映画からトーキー映画へと変更が行われた。
  • 雨に唄えば』(1952年):1927年の米国映画界を舞台に、サイレント映画からトーキー映画への移行を描いている他、本作と似た性質の登場人物が出てくる。
  • ジョセフィン・ベーカー(1906‒75年):1920年代半ば以降フランスで人気を博したジャズ歌手の黒人女性。

外部リンク