サッカーにおけるイタリアとフランスのライバル対決

サッカーにおけるイタリアとフランスのライバル対決(サッカーにおけるイタリアとフランスのライバルたいけつ)では、イタリアフランスサッカーにおける関係について記述する。

イタリア対フランスの直接対決
1921年2月20日に行われた親善試合
都市、地域ヨーロッパ
初開催1910年5月15日
(イタリア 6-2 フランス)
チームイタリアの旗 イタリア代表
フランスの旗 フランス代表
最多勝利イタリア代表(18勝)

国土を接し、互いにヨーロッパの主要国であるイタリアとフランスは、サッカーにおいても長い間ライバル関係にある。イタリア代表フランス代表はともにFIFAワールドカップUEFA欧州選手権で複数回の優勝経験を持ち、世界屈指の強豪国として知られている。

概要

ほんの2、3例を挙げるだけでもリリアン・テュラムパルマFCユヴェントスFC)、ダヴィド・トレゼゲ(ユヴェントスFC)、マルセル・デサイーACミラン)、ジネディーヌ・ジダン(ユヴェントス)など、近年では多くのフランス人選手がイタリアのセリエAでプレーしており、両者のライバル意識はより明確になっている。この対戦は過去のFIFAワールドカップUEFA欧州選手権で数々の名勝負を繰り広げていることでも知られ、1998 FIFAワールドカップ準々決勝(PK戦の結果フランスが勝ち上がり)、UEFA欧州選手権2000決勝(延長戦の結果フランスが勝利)や2006 FIFAワールドカップ決勝(PK戦の結果イタリアが勝利)などが記憶に残る。

この対戦はワールドカップで5回実現していて両国互いに最も対戦数の多い相手となっており(イタリアはフランスの他アルゼンチンブラジルドイツが最多対戦国となっている)、歴代優勝国同士の対戦としては2番目に多い対戦カードとなっている(1位はドイツ対アルゼンチンの7回)。

1982年以前はイタリアが17勝6分3敗の成績を収め、対戦の歴史の大半はイタリアが支配してきたが、1982年から2008年までの期間はフランスが5勝4分[注 1]とイタリアに負け知らずであり、2006 FIFAワールドカップ決勝の対戦も引き分け(PK戦の結果によりイタリアが優勝)ているが、UEFA欧州選手権2008のグループリーグでイタリアが30年ぶりに勝利を収めた。

歴史

1998 FIFAワールドカップ

前後半・延長

フランスとイタリアが戦った数多くの対戦の中でも、1998 FIFAワールドカップ準々決勝での対戦は特に重要とされている。フランスは開催国として多くの観衆の声援を受ける立場にあったし、1990 FIFAワールドカップ1994 FIFAワールドカップはヨーロッパ予選で敗退しており、1998年大会は3大会ぶりの出場であったため、特別な意欲を持ってこの試合に臨んでいた。フランスで初開催された1938 FIFAワールドカップでフランスはイタリアに同じく準々決勝で1-3で惨敗しており、イタリアに大会2連覇を許していたため、1998年大会は1938年大会での敗戦の雪辱を遂げる場としての意味合いもあった。イタリアは1982 FIFAワールドカップで優勝、1990 FIFAワールドカップで3位と1994 FIFAワールドカップで準優勝と、過去数回のFIFAワールドカップで好成績を収めており、開催国に勝利して3大会連続で準決勝に進出することが期待された。1910年から1986年までの対戦ではイタリアがほとんどの試合に勝利したが、1980年代から状況が変わり始め、この大会はどちらの代表が1990年代の支配者であったかを明確にさせる大会であった。この試合はまた、両代表の多くの選手がセリエAの数クラブに集中し、普段は同じクラブでプレーする選手たちがふたつの代表に分かれて対戦するという点でも重要な試合であった。この大会開催時点で、フランスのジネディーヌ・ジダンユヴェントスFC)、ディディエ・デシャン(ユヴェントスFC)、マルセル・デサイーACミラン)、ユーリ・ジョルカエフインテル)、リリアン・テュラムパルマFC)、ヴァンサン・カンデラASローマ)、アラン・ボゴシアン(パルマFC)の7人がイタリアのセリエAでプレーしており、ローラン・ブランはかつてSSCナポリでプレーした経験があった。一方のイタリアは22人中20人がセリエAのクラブに在籍していた。

この試合はオープンな展開で質の高いものであったが、両チームに得点機会があったにもかかわらず延長戦を終えて0-0の同点であり、試合はPK戦に持ち込まれた。先攻のフランスは5人中ビセンテ・リザラズを除く4人が成功したが、後攻のイタリアはデメトリオ・アルベルティーニルイジ・ディ・ビアジョが外し、フランスが0-0(PK戦4-3)で準決勝進出を決めた。イタリアの5番手キッカーのディ・ビアジョのシュートが外れると、何人かのフランスの選手はクラブでのチームメイトを慰めた。

PK戦

フランス(先攻)成否スコア成否 イタリア(後攻)
ジネディーヌ・ジダン1-1ロベルト・バッジョ
ビセンテ・リザラズ×1-1×デメトリオ・アルベルティーニ
ダヴィド・トレゼゲ2-2アレッサンドロ・コスタクルタ
ティエリ・アンリ3-3クリスティアン・ヴィエリ
ローラン・ブラン4-3×ルイジ・ディ・ビアジョ

2006 FIFAワールドカップ 決勝

前後半・延長

世界中に議論を巻き起こしたジダン(左)とマテラッツィ(右)

イタリアとフランスは2006 FIFAワールドカップ決勝で再び顔を合わせた。試合開始7分にイタリアのマルコ・マテラッツィがPKを献上し、この試合を最後に現役引退を発表していたフランスのジネディーヌ・ジダンが先制点となるPKを決めた。しかしその後はイタリアが主導権を奪い返し、19分にアンドレア・ピルロのコーナーキックをマテラッツィがヘディングで決めて1-1の同点とした。後半は試合が膠着し、延長戦ではフランスがチャンスを決め切れなかった。110分には世界中で議論を醸す出来事が起こった。ジダンはマテラッツィにマークされていたが、マテラッツィに何か囁かれた後に振り向き、マテラッツィの胸に頭突きした。主審はこの出来事を見ていなかったが、マテラッツィが地面に倒れたことで試合を中断し、副審と話し合った後にジダンに対してレッドカードを提示した(詳細はジダン頭突き事件を参照)。イタリアは試合の残り10分を数的有利の中で戦ったが、得点を挙げることはできず、勝負はPK戦に持ち込まれた。[1][2][3][4][5]

決勝がPK戦にもつれ込んだのはFIFAワールドカップ史上2度目であり、1994 FIFAワールドカップではブラジルがイタリアを破っていた。先攻のイタリアはピルロが、後攻のフランスはシルヴァン・ヴィルトールがPKを決め、イタリアは2番手のマテラッツィも決めたが、フランスのダヴィド・トレゼゲのシュートはクロスバーを叩いて外れた。その後も、イタリアのジャンルイジ・ブッフォン、フランスのファビアン・バルテズともにシュートをセーブすることなく両チームの4番手までがPKを決めた。イタリアは5番手のファビオ・グロッソも決め、PK5-3で勝利した。大会の最優秀選手はフランスのジダンが受賞し、2位と3位にはそれぞれイタリアのファビオ・カンナヴァーロとピルロが選ばれた[6]

PK戦

イタリア(先攻)成否スコア成否 フランス(後攻)
アンドレア・ピルロ1-1シルヴァン・ヴィルトール
マルコ・マテラッツィ2-1×ダヴィド・トレゼゲ
ダニエレ・デ・ロッシ3-2エリック・アビダル
アレッサンドロ・デル・ピエロ4-3ウィリー・サニョル
ファビオ・グロッソ5-3-

UEFA欧州選手権2008

予選

UEFA欧州選手権2008予選の組分けを決める抽選ではフランスが第1ポット、イタリアが第2ポットであり、イタリアとフランスは同組に組み込まれた。その他には第3ポットからウクライナ、第4ポットからスコットランド、第5ポットからリトアニア、第6ポットからジョージア、第7ポットからフェロー諸島が選ばれ、予選通過のグループ2位以内を目指した。

フランスにとっては2006 FIFAワールドカップ決勝での敗戦の雪辱を果たす好機となった[7]。第2節にフランスのホームで行われた直接対決はフランスが3-1で勝利し、2連勝と好発進したフランスを尻目にイタリアは1分1敗と出だしで躓いた[8]。しかしその後はイタリアも巻き返し、スコットランドやウクライナも含めた4ヶ国での混戦模様となった[9][10]。フランスが首位、イタリアが2位で迎えたイタリアのホームでの直接対決は0-0の引き分けに終わり、イタリアは3位に順位を落とした[11]。しかしその後、イタリアは4連勝し、フランスを逆転して首位に立った。イタリアは9勝2分1敗の勝ち点29で首位、フランスは8勝2分2敗の勝ち点26で2位となり、両国は揃って本大会出場を決めた[12]。なお、得点(イタリアは22点、フランスは25点)と失点(イタリアは9点、フランスは5点)ともにフランスがグループ最高の成績を残している。

本大会

UEFA欧州選手権2008 グループC、第2節を終えた時点の順位表
試合数得点失点勝ち点
オランダ2716
ルーマニア2112
イタリア2141
フランス2141

予選に引き続き、UEFA欧州選手権2008のグループリーグでもイタリアとフランスは同組となった。オランダルーマニアも同組となり、イタリア、フランスを合わせたグループCは「死の組」と呼ばれた[13]。2戦を終えてオランダが2勝で首位、ルーマニアが2分で2位、イタリアとフランスが1分1敗で3位であった[14]。グループリーグ突破を懸けた第3戦で両国が対戦したが、ピルロのPKによる先制点とダニエレ・デ・ロッシの追加点で、イタリアが2-0と快勝した[15]。ルーマニアはオランダに敗れたため、イタリアが2位に浮上して決勝トーナメント進出を決め[16]、フランスは最下位でグループリーグ敗退に終わった。

UEFA欧州選手権2008 グループC、最終的な順位表
オランダイタリアルーマニアフランス得点失点勝ち点
オランダ3-02-04-1919
イタリア0-31-12-0344
ルーマニア0-21-10-0132
フランス1-40-20-0161

統計

直接対決の成績

2024年2月3日時点

FIFAワールドカップ・UEFA欧州選手権のノックアウトステージで行われるPK戦は引き分けで換算。

大会試合数イタリア
勝利
引き分けフランス
勝利
イタリア
得点
フランス
得点
FIFAワールドカップ522164
UEFA欧州選手権210132
UEFA欧州選手権予選201113
夏季オリンピック210156
親善試合2814776740
通算391810118651

両国の主要大会での成績

大会イタリアフランス
1930 FIFAワールドカップ不参加1次リーグ敗退
1934 FIFAワールドカップ優勝1回戦敗退
1938 FIFAワールドカップ優勝ベスト8
1950 FIFAワールドカップ1次リーグ敗退ヨーロッパ予選敗退
1954 FIFAワールドカップ1次リーグ敗退1次リーグ敗退
1958 FIFAワールドカップヨーロッパ予選敗退3位
UEFA欧州選手権1960不参加4位
1962 FIFAワールドカップ1次リーグ敗退ヨーロッパ予選敗退
UEFA欧州選手権1964予選敗退予選敗退
1966 FIFAワールドカップ1次リーグ敗退1次リーグ敗退
UEFA欧州選手権1968優勝予選敗退
1970 FIFAワールドカップ準優勝ヨーロッパ予選敗退
UEFA欧州選手権1972予選敗退予選敗退
1974 FIFAワールドカップ1次リーグ敗退ヨーロッパ予選敗退
UEFA欧州選手権1976予選敗退予選敗退
1978 FIFAワールドカップ4位1次リーグ敗退
UEFA欧州選手権19804位予選敗退
1982 FIFAワールドカップ優勝4位
UEFA欧州選手権1984予選敗退優勝
1986 FIFAワールドカップベスト163位
UEFA欧州選手権1988ベスト4予選敗退
1990 FIFAワールドカップ3位ヨーロッパ予選敗退
UEFA欧州選手権1992予選敗退1次リーグ敗退
1994 FIFAワールドカップ準優勝ヨーロッパ予選敗退
UEFA EURO '961次リーグ敗退ベスト4
1998 FIFAワールドカップベスト8優勝
UEFA EURO 2000準優勝優勝
2002 FIFAワールドカップベスト161次リーグ敗退
UEFA EURO 20041次リーグ敗退ベスト8
2006 FIFAワールドカップ優勝準優勝
UEFA EURO 2008ベスト81次リーグ敗退
2010 FIFAワールドカップ1次リーグ敗退1次リーグ敗退
UEFA EURO 2012準優勝ベスト8
2014 FIFAワールドカップ1次リーグ敗退ベスト8
UEFA EURO 2016ベスト8準優勝
2018 FIFAワールドカップヨーロッパ予選敗退優勝
UEFA EURO 2020優勝ベスト16
2022 FIFAワールドカップヨーロッパ予選敗退準優勝

両国のタイトル

FIFAコンフェデレーションズカップではフランスが2度出場し、イタリアも2度出場している。フランスは前回のFIFAワールドカップ優勝国として1度(FIFAコンフェデレーションズカップ2001)、FIFAコンフェデレーションズカップ開催国として1度出場し(FIFAコンフェデレーションズカップ2003)、どちらの大会も優勝している。イタリアは前回のFIFAワールドカップ優勝国として1度出場しグループリーグ敗退(FIFAコンフェデレーションズカップ2009)。もう1度は欧州選手権準優勝だったが優勝チームがFIFAワールドカップ優勝チームだったため欧州王者枠として出場し、3位に終わった(FIFAコンフェデレーションズカップ2013)。FIFAワールドカップはイタリアが4度、フランスが2度優勝している。イタリアの優勝回数はブラジルに次いで2位であり、試合数や獲得勝ち点などはブラジルとドイツに次いで3位である。UEFA欧州選手権ではフランスが2度、イタリアが1度優勝している。イタリアの優勝は自国開催の1968年大会であり、フランスも自国開催の1984年大会で初優勝しているが、2000年大会では決勝でイタリアを破って2度目の優勝を飾った。

FIFA U-20ワールドカップ及びFIFA U-17ワールドカップではフランスが両大会ともに1度優勝している。UEFA U-21欧州選手権ではイタリアが5度、フランスが1度優勝している。イタリアは1992年大会から3連覇しており、通算5度の優勝は史上最多である。UEFA U-19欧州選手権ではイタリアが3度、フランスが8度優勝している。フランスは1996年大会と1997年大会を連覇し、通算8度の優勝はイングランドとスペインに次いで3位である。UEFA U-17欧州選手権ではイタリアが1度、フランスが2度優勝している。イタリアは初開催の1982年大会でホスト国として優勝している。フランスはホスト国として2004年大会で初優勝しているほか、2000年代には計4度決勝に進出している。

大会イタリアフランス
FIFAコンフェデレーションズカップ
0
2
FIFAワールドカップ
4
2
UEFA欧州選手権
1
2
夏季オリンピック
1
1
FIFA U-20ワールドカップ
0
1
FIFA U-17ワールドカップ
0
1
UEFA U-21欧州選手権
5
1
UEFA U-19欧州選手権
3
8
UEFA U-17欧州選手権
1
2
通算
15
20

試合一覧

2012年11月14日時点
#日時場所大会試合結果
392018年6月1日ニース親善試合フランス - イタリア1-3
382016年9月1日バーリ親善試合イタリア - フランス1-3
372012年11月14日 パルマ親善試合イタリア - フランス1-2
362008年6月17日 チューリッヒUEFA欧州選手権2008 グループリーグフランス - イタリア0-2
352007年9月8日 ミラノUEFA欧州選手権2008予選イタリア - フランス0-0
342006年9月6日 パリフランス - イタリア3-1
332006年7月9日 ベルリン2006 FIFAワールドカップ 決勝イタリア - フランス1-1[注 2]
(PK 5-3)
322000年7月2日 ロッテルダムUEFA欧州選手権2000 決勝フランス - イタリア2-1[注 3]
(延長)
311998年7月3日 サン=ドニ1998 FIFAワールドカップ 準々決勝フランス - イタリア0-0[注 3]
(PK 4-3)
301997年6月11日 パリ親善試合フランス - イタリア2-2
291994年2月16日 ナポリイタリア - フランス0-1
281986年6月17日 メキシコシティ1986 FIFAワールドカップ 決勝T 1回戦フランス - イタリア2-0
271982年2月23日 パリ親善試合フランス - イタリア2-0
261978年6月2日 マル・デル・プラタ1978 FIFAワールドカップ 1次リーグイタリア - フランス2-1[注 4]
251978年2月8日 ナポリ親善試合イタリア - フランス2-2
241966年3月19日 パリフランス - イタリア0-0
231962年5月5日 フィレンツェイタリア - フランス2-1
221958年11月9日 パリフランス - イタリア2-2
211956年5月5日 ボローニャイタリア - フランス2-0
201954年4月11日 パリフランス - イタリア1-3
191951年6月3日 ジェノヴァイタリア - フランス4-1
181948年4月4日 パリフランス - イタリア1-3
171938年12月4日 ナポリイタリア - フランス1-0
161938年6月12日 パリ1938 FIFAワールドカップ 準々決勝フランス - イタリア1-3[注 2]
151937年12月5日親善試合フランス - イタリア0-0
141935年2月17日 ローマイタリア - フランス2-1
131932年4月10日 パリフランス - イタリア1-2
121931年1月25日 ボローニャイタリア - フランス5-0
111928年5月29日 アムステルダムアムステルダムオリンピック 1回戦フランス - イタリア3-4
101927年4月24日 パリ親善試合フランス - イタリア3-3
091925年3月22日 トリノイタリア - フランス7-0
081921年2月20日 マルセイユフランス - イタリア1-2
071920年8月29日 アントワープアントワープオリンピック 準々決勝フランス - イタリア3-1
061920年1月18日 ミラノ親善試合イタリア - フランス9-4
051914年3月29日 トリノイタリア - フランス2-0
041913年1月12日 パリフランス - イタリア1-0
031912年3月17日 トリノイタリア - フランス3-4
021911年4月9日 パリフランス - イタリア2-2
011910年5月15日 ミラノイタリア - フランス6-2

脚注

注釈

出典

外部リンク