グリーンランディアン

完新世の初期
地質時代新生代[* 1][* 2]
累代基底年代
Mya[* 3]
顕生代新生代第四紀 完新世メガラヤン0.0042
ノースグリッピアン0.0082
グリーンランディアン0.0117
更新世後期更新世0.129
チバニアン0.774
カラブリアン1.8
ジェラシアン2.58
新第三紀 鮮新世ピアセンジアン3.6
ザンクリアン5.333
中新世メッシニアン7.246
トートニアン11.63
サーラバリアン13.82
ランギアン15.97
バーディガリアン20.44
アキタニアン23.03
古第三紀 漸新世チャッティアン27.82
ルペリアン33.9
始新世プリアボニアン37.8
バートニアン41.2
ルテシアン47.8
ヤプレシアン56
暁新世サネティアン59.2
セランディアン61.6
ダニアン66
中生代251.902
古生代541
原生代2500
太古代[* 4]4000
冥王代4600

グリーンランディアン (英語: Greenlandian) [1][2][3]は、11,700年前(b2k)から8,236年前(b2k)までにあたる、新生代第四紀完新世の地質時代の一つ。前期完新世(ぜんきかんしんせい、Early Holocene)という亜世としても知られる。

それに対応する層序単元グリーンランディアン英語版 (the Greenlandian Stage)は第四系完新統の最下層で、下部完新統(かぶかんしんとう、Lower Holocene Subseries)とも呼ばれる[1]

定義

NGRIP2コアから得られたδ18Oのデータ(縦軸)。横軸は年(BP)で11,700年前がグリーンランディアン階下底である。この部分で顕著な変曲点を示す。

グリーンランディアン階下底の国際標準模式層断面及び地点 (GSSP) はデンマークグリーンランド中央部の氷床において北グリーンランド・アイスコア計画 (North Greenland Ice Core Project)によって採取されたNGRIP2(North GRIP2)コア (北緯75度06分00秒 西経42度19分12秒 / 北緯75.1000度 西経42.3200度 / 75.1000; -42.3200、深さ1492.45 mメートル)である[1]。この境界ははじめ2008年に完新統の下底として国際層序委員会 (International Commission on Stratigraphy, ICS)で批准された[1][4]。その後2018年7月に完新統の残りの階であるメガラヤン階およびノースグリッピアン階とともにグリーンランディアン階の下底として国際層序委員会で批准された[1][5]

ヤンガードリアス期 (Younger Dryas) と Greenland Stadial 期の境界付近で、最初に気候が改善されるところであり、この現象が最もよく観察されるのがNGRIP2氷床コアであった[6]。NGRIPコアでは、重水素含有率変化、酸素同位体の変化 (δ18O)、塵の混入率変化、年縞幅変化が同調して認められる[6][4][5]。他の境界模式と異なるのは、普通海成層中を境界模式とするのに対し、このGSSPは岩相が「ppb単位の塵を含む」であり、アプローチも容易でない点である[6]。しかし、このグリーンランディアン階の下底(11,734年前)はGrímsvötn 火山から噴出したSaksunarvatn Tephra(10,428年前)とKatla 火山から噴出したVedde Ash(12,252年前)の間にあり、他地域との対比がしやすいという強力な利点がある[6]。また、δ18Oの値もかなり顕著な変化を示し、対比に有効である[6]。この時期の海成層は堆積速度や連続性、マーカーなどに関して様々な問題があり、陸水である湖沼の堆積層でも花粉化石などによる研究はされているが、放射性炭素年代における技術的な問題があり、絶対年代における定義が難しかった[4]

脚注

参考文献

  • Walker, MJC; Rasmussen, SO; Popp, T; Steffensen, J-P; Gibbard, P; Hoek, W; Lowe, J; Andrews, J; Björck, S; Cwynar, LC; Hughen, K; Kershaw, P; Kromer, B; Litt, T; Lowe, DJ; Nakagawa, T; Newnham, R; Schwander, J.. “Formal definition and dating of the GSSP (Global Stratotype Section and Point) for the base of the Holocene using the Greenland NGRIP ice core, and selected auxiliary records”. Journal of Quaternary Science 24 (1): 3–17. 
  • Walker, MJC; Johnsen, S; Rasmussen, SO; Steffensen, J-P; Popp, T; Gibbard, P; Hoek, W; Lowe, J; Andrews, J; Björck, S; Cwynar, LC; Hughen, K; Kershaw, P; Kromer, B; Litt, T; Lowe, DJ; Nakagawa, T; Newnham, R and Schwander, J (2008). “The Global Stratotype Section and Point (GSSP) for the base of the Holocene Series/Epoch (Quaternary System/Period) in the NGRIP ice core”. Episodes 31 (2): 264-267. doi:10.18814/epiiugs/2008/v31i2/016. 
  • Walker, MJC; Berkelhammer, M; Björck, S; Cwynar, LC; Fisher, DA; Long, AJ; Lowe, JJ; Newnham, RM et al. (2012). “Formal subdivision of the Holocene Series/Epoch: a discussion paper by a Working Group of INTIMATE (Integration of ice-core marine and terrestrial records) and the Subcommission on Quaternary Stratigraphy (International Commission on Stratigraphy)”. Journal of Quaternary Science 27: 649-659. 
  • Walker, M; Head, MJ; Berkelhammer, M; Björck, S; Cheng, H; Cwynar, L; Fisher, D (2018). “Formal ratification of the subdivision of the Holocene Series/Epoch (Quaternary System/Period): two new Global Boundary Stratotype Sections and Points (GSSPs) and three new stages/subseries”. Episodes 41 (4): 213-223. 
  • 熊井久雄 (人類紀自然学編集委員会)『人類紀自然学 地層に記録された人間と環境の歴史』共立出版、2007年3月8日、312p.頁。