グランドひかり

グランドひかりは、東海旅客鉄道(JR東海)と西日本旅客鉄道(JR西日本)が1989年から2002年まで東海道・山陽新幹線で運転していた「ひかり」の一種の車両列車愛称

グランドひかり
V5編成 「グランドひかり」(小倉駅)
V5編成 「グランドひかり」(小倉駅)
概要
日本の旗 日本
種類特別急行列車新幹線
現況廃止
地域東京都神奈川県静岡県愛知県岐阜県滋賀県京都府大阪府兵庫県岡山県広島県山口県福岡県
運行開始1989年3月11日
運行終了2002年11月23日
運営者東海旅客鉄道(JR東海)
西日本旅客鉄道(JR西日本)
路線
起点東京駅
終点博多駅
使用路線東海道新幹線
山陽新幹線
技術
車両100系V編成(100N系)
(JR西日本博多総合車両所
軌間1,435 mm
電化交流25,000 V・60 Hz
最高速度230 km/h
テンプレートを表示

導入の背景

1987年国鉄分割民営化直後、1985年に登場した新型車両100系はJR東海のもつX・G編成しかなく、JR西日本は0系しかないという状況だった。そこで旅客サービスの向上と到達時分の短縮を目的に東京駅 - 博多駅の「速達ひかり」(通称Wひかり)用として、JR西日本は独自の新型車両を製作することとなった。そこで誕生したのが100N系「グランドひかり」である[1][2][3][4]

車両・編成

車両設備

「グランドひかり」食堂車(1999年9月19日)
「グランドひかり」食堂車全景(1999年7月14日)

東京駅 - 博多駅の長距離運用につくことを念頭に、G編成で省略された食堂車を設定すると共に、G編成と同等のグリーン車3両を確保するため、2階建て車両をX・G編成に比べ2両増やし、計4両連結した事が大きな特徴である。

2階建て車両はモータを積まない付随車であるため、X・G編成では付随車となっている先頭車を電動車とすることで、編成出力を同等に確保している。また、さらなる速度向上のため、各部の構造が見直されている(新幹線100系電車#V編成を参照のこと)。

1 - 6・11 - 16号車は平屋建て車両普通車である。7 - 10号車は2階建て車両であり、1階は7・9・10号車が普通車指定席で8号車は売店、2階は車窓からの展望が良いことや乗客の通り抜けがないことから、7・9・10号車がグリーン車、8号車が食堂車に設定された[5]。食堂車にはデジタル速度計も設置された。

普通車(1 - 6・11 - 16号車と7・9・10号車の1階)は直接照明が採用されたが、グリーン車と食堂車(7 - 10号車の2階)は間接照明が採用された。

2階建て車両の場合、通常の平屋建て車両と比較して特に1階の居住性や車窓が劣るため、オーディオサービスとビデオサービス(JR東海とのサービス格差が生じない山陽新幹線区間のみ)[注釈 1]が実施されるほか、座席も通常の2列+3列のものではなく、「ウエストひかり」で実績のあるゆったりした2列+2列のものを採用した。なお、11号車にはX・G編成と同じく、車椅子対応設備が設置された。

前述のビデオサービスは、4次車であるV5編成から2階グリーン席に新たに5インチの液晶テレビが搭載され、1990年11月1日から使用を開始した[6]。V1 - V4編成にも搭載され、1991年3月16日から全編成で放映を開始している[6]

編成

100N系V編成16両を使用する[7][8][9][4]。最高速度は東海道区間220km/h、山陽区間230km/hである。

100N系 グランドひかり
← 博多
東京 →
12345678910111213141516
 GDGG 
K
         
記号凡例
  • D食堂
  • K=売店
  • Gグリーン車指定席
  • 指=普通車指定席
  • 自=普通車自由席
  • =禁煙席
    • 1993年3月17日まで、13・14号車は喫煙席であった[10]
    • 1996年3月15日まで、5・9号車は喫煙席であった。
    • 2001年9月30日まで、11号車は喫煙席であった。
編成組成月日製造会社編成名削除日廃車日備考
号車
1 - 89 - 1011 - 1213 - 16
V11989年3月7日川崎重工業近畿車輛日立製作所2000年7月3日(8号車)2000年8月25日[11]
(7,9,10号車)2000年12月1日[11]
(3号車)2003年5月21日[12]
 
V21989年2月10日
(2002年10月1日)
2002年11月25日(7 - 10号車)2002年12月3日[13]
(5号車)2004年6月7日[14]
(3号車)2005年3月22日[14]
2002年10月1日に7 - 10号車をV9編成のものと差し替え。
12月3日に廃車となった7 - 10号車は当初V2編成に連結されていた。
V31989年6月29日2002年5月27日(7 - 10号車)2002年5月27日[13]
(5号車)2003年11月9日[12]
3,4号車のみ1989年6月13日落成
V41989年12月28日近畿車輛2002年6月25日(7 - 10号車)2002年6月25日[13]
(5号車)2003年11月9日[12]
(3号車)2004年10月29日[14]
 
V51990年7月5日近畿車輛日立製作所2002年2月12日  
V61990年12月14日日立製作所近畿車輛2000年8月24日(7 - 10号車)2000年12月1日[11]
(5号車)2000年12月28日[11]
 
V71991年2月26日川崎重工業近畿車輛日立製作所2001年11月9日  
V81991年7月5日2001年9月30日  
V91991年12月12日日立製作所近畿車輛2002年9月25日(9,10号車)2002年12月3日[13]
(7,8号車)2010年7月30日[15]

停車駅と所要時間

  • 速達タイプ 東京駅 - 博多駅 : 5時間47分(1992年3月14日以降は最速5時間44分) 新大阪駅 - 博多駅 : 2時間49分(所要時間は小郡通過の場合)
  • その他 途中停車駅は様々な種類があり、これらの駅の中に停車しない列車もある。カッコ内は停車頻度の少ない駅
    • 東京駅 - (新横浜駅)- (静岡駅) - 名古屋駅 - 京都駅 - 新大阪駅 - 新神戸駅 - 姫路駅 - 岡山駅 - 福山駅 - 広島駅 - (徳山駅) - 小郡駅 - 小倉駅 - 博多駅
    • グランドひかりが運転していた当時は品川駅が未開業だった。
    • 当初は京都駅または岡山駅 - 広島駅間各駅停車となる東京駅 - 広島駅間「ひかり」(通称 : Aひかり、Bひかり)にも使用されていた。
    • 山陽新幹線区間(新大阪駅 - 博多駅)の「ひかり」や、東京駅 - 姫路駅、名古屋駅 - 博多駅などの「ひかり」にも使用された。
    • 運転開始当初広島 - 博多間の始発最終「こだま」を利用して乗務員の習熟訓練が行われていた。

運用の変遷

東海道・山陽新幹線内を走破する、すべての定期「ひかり」および、臨時扱いだが毎日運転する「ひかり」として運転された。時刻表にも、1989年5月号より"「グランドひかり」・2階建て4両"と記載された。

1989年3月11日

「グランドひかり」が東京 - 博多間2往復で運転を開始。山陽新幹線区間での最高速度を230 km/hとし、東京 - 博多を5時間47分で走破。途中、名古屋・京都・新大阪・岡山・広島・小郡(ひかり29号のみ)・小倉に停車。

  • 下り
    • ひかり11号 東京15:00 → 博多20:47
    • ひかり29号 東京16:00 → 博多21:52
  • 上り
    • ひかり2号 博多8:45 → 東京14:32
    • ひかり4号 博多9:45 → 東京15:32

1990年3月10日

100系X編成が充当されていた1往復を「グランドひかり」に変更。所要時間の短縮が行われた。

  • 下り
    • ひかり19号 東京14:00 → 博多19:52
    • ひかり21号 東京15:00 → 博多20:47
    • ひかり23号 東京16:00 → 博多21:52
  • 上り
    • ひかり4号 博多7:40 → 東京13:32
    • ひかり6号 博多8:45 → 東京14:32
    • ひかり8号 博多9:45 → 東京15:32

1991年3月16日

上り1本を「グランドひかり」から別編成に変更の上、2.5往復を「グランドひかり」に変更して5往復の運用に。上り1本(ひかり10号)が新神戸に初停車。

  • 下り
    • ひかり17号 東京13:04 → 博多18:51
    • ひかり19号 東京14:04 → 博多19:56
    • ひかり21号 東京15:04 → 博多20:51
    • ひかり23号 東京16:04 → 博多21:56
    • ひかり25号 東京17:04 → 博多22:51
  • 上り
    • ひかり2号 博多6:44 → 東京12:36
    • ひかり4号 博多7:44 → 東京13:36
    • ひかり8号 博多9:49 → 東京15:36
    • ひかり10号 博多10:08 → 東京16:00
    • ひかり12号 博多10:44 → 東京16:36

1992年3月14日

上り1本を「グランドひかり」から別編成に変更の上、東京 - 博多間の2往復と広島始発の上り1本を「グランドひかり」に変更し、山陽新幹線内完結の1往復を追加して8往復体制に。福山・徳山に初停車(ひかり150号)。東海道区間で所要時間の短縮が行われた。

  • 下り
    • ひかり151号 新大阪7:00 → 博多9:54
    • ひかり15号 東京12:07 → 博多17:56
    • ひかり17号 東京13:07 → 博多18:51
    • ひかり19号 東京14:07 → 博多19:56
    • ひかり21号 東京15:07 → 博多20:51
    • ひかり23号 東京16:07 → 博多21:56
    • ひかり25号 東京17:07 → 博多22:51
    • ひかり27号 東京17:53 → 博多23:51
  • 上り
    • ひかり74号 広島7:04 → 東京11:32
    • ひかり2号 博多6:43 → 東京12:32
    • ひかり4号 博多7:43 → 東京13:32
    • ひかり6号 博多8:48 → 東京14:32
    • ひかり8号 博多9:48 → 東京15:32
    • ひかり12号 博多10:43 → 東京16:32
    • ひかり14号 博多11:48 → 東京17:32
    • ひかり150号 博多19:00 → 新大阪22:07

1999年3月13日

新幹線における食堂車の営業列車は東京 - 博多間4往復のみとなる。

  • 下り
    • ひかり185号 名古屋7:48 → 博多12:05
    • ひかり121号 東京13:07 → 博多19:20
    • ひかり123号 東京14:07 → 博多20:20
    • ひかり125号 東京15:07 → 博多21:19
    • ひかり127号 東京16:07 → 博多22:20
    • ひかり177号 東京20:14 → 姫路23:53
  • 上り
    • ひかり150号 姫路6:00 → 東京9:52
    • ひかり100号 博多6:00 → 東京12:14
    • ひかり102号 博多6:59 → 東京13:14
    • ひかり104号 博多7:59 → 東京14:14
    • ひかり112号 博多10:52 → 東京17:14
    • ひかり180号 博多16:42 → 名古屋21:16

2001年10月1日

  • 下り
    • ひかり201号 東京7:30 → 新大阪10:23
  • 上り
    • ひかり240号 新大阪19:56 → 東京22:50

このほか、多くの臨時列車に充当された。

「グランドひかり」引退へ

1992年300系と最速達列車「のぞみ」がデビューした。当初は早朝深夜時間帯のみだったが、その後に行われた、「のぞみ」の昼間時間帯の運転実施や増便によって、300系より40 - 50km/hも遅い100系は[注釈 2]ダイヤ作成時の足かせとなり、従来の最速達であった「ひかり」よりも「のぞみ」のほうが所要時間が短縮されたため、「のぞみ」に客足が向くようになった。

2000年3月でまず利用率の良くなかった食堂車営業を休止。その後も「ひかり」を中心に活躍したが2002年5月18日をもって定期運用から離脱。そして2002年11月23日新大阪駅 - 博多駅のさよなら運転をもって「グランドひかり」は消滅した[16]

「グランドひかり」さよなら運転

2002年10月8日に、JR西日本から同年11月23日に以下の1往復でさよなら運転が行うことが発表された[17]。同列車では食堂車の復活や「グランドひかり」の最速運転を行うなど、全盛期を彷彿させるものだった。ただし、食堂車の利用に関しては事前の予約が必要とされた[18]

さよなら運転にはV2編成が充当された(新幹線100系電車#V編成参照)が、2階建て車両は状態の良いV9編成のものと差し替えられていた。

列車名運転区間(始発・終着時刻)停車駅使用
編成
備考
ひかり568号博多 10:33発 → 新大阪 13:22着小倉広島岡山V2「グランドひかり」最速の2時間49分で運行
ひかり563号新大阪 17:14発 → 博多 20:25着新神戸姫路・岡山・広島・小郡・小倉V2
  • 「ひかり563号」新大阪駅発車時に「出発式」が、博多駅到着後に「引退式」が取り行われた。

編成表

さよなら「グランドひかり」
 
← 博多
新大阪 →
号車12345678910111213141516
形式121
(Mc)
126
(M')
125
(M)
126
(M')
125
(M8)
126
(M')
179
(Tsd)
168
(T'dd)
179
(Tsd)
178
(T'sd)
125
(M7)
126
(M')
125
(M)
126
(M')
125
(M)
122
(M'c)
座席普通車グリーン車
普通車
食堂車グリーン車
普通車
普通車
定員65100901008010074-747473100901009075
編成番号:V2車両番号3002300630043007380230083009300931093009370230093005301030063002
  • 定員1285名。全席指定席で運行。8号車は食堂・売店のため定員設定なし。

沿革

  • 1989年平成元年)3月11日 : 「グランドひかり」デビュー。東京 - 博多間1日2往復の設定。新大阪 - 博多間を当時の最速である2時間49分で駆け抜けた。
  • 1990年(平成2年)3月10日 : 東京 - 博多間1日3往復に増便。
  • 1993年(平成5年)3月18日 : 東京 - 博多間1日5往復、東京 - 広島間1日1往復、東京 - 岡山間1日1往復、東京 - 新大阪間1日1往復の計8往復に増便[19]
  • 2000年(平成12年)
    • 3月10日 : 「ひかり127号」(東京 → 博多・V4編成充当)の運行をもって、食堂車の営業を休止。
    • 3月11日 : 「のぞみ」の運行が増加する事に伴い、定期運行区間を東京 - 広島間に短縮。広島 - 博多間の運転は臨時扱い。
    • 12月31日 : 「時をかける旅、メモリアルトレインツアー ひかり号食堂車リバイバル」が実施され、1日のみ食堂車営業が復活(ひかり559号・新大阪 → 博多・V7編成充当)[20]
  • 2001年(平成13年)9月30日 : 山陽新幹線の定期運用を終了。
  • 2002年(平成14年)
    • 5月18日 : 「ひかり201号」(東京 → 新大阪・V4編成充当)をもって東海道新幹線の定期運用から離脱[19]
    • 11月23日 : 新大阪駅 - 博多駅間で1往復のさよなら運転を実施。「グランドひかり」は引退[16]

運用終了後

運用終了直前の2000年から2005年にかけて、「グランドひかり」用のV編成は徐々に6両K編成、4両P編成に組み換えが進行していた。X・G編成と違い、先頭車が電動車であることから短編成化が容易(ユニット構成が0系と同じになったため)であった。P編成とK編成の車両数は108両(4両編成が12本と6両編成が10本)である。V編成の電動車の数も108両(12両が9本分)である。V編成の電動車は(一部G編成の車体にV編成の電装品を搭載したり、中間車が先頭車化されたものもあるが)なんらかの形ですべてK・P編成に流用された。また、7 - 10号車のグリーン車と普通車の座席もK・P編成に流用された。

食堂車の写真に写っている電光掲示板は0系WR編成に利用された。

脚注

注釈

出典

参考文献

  • 福原俊一『新幹線100系物語』ちくま新書、2021年4月。ISBN 978-4480073945 

関連項目

🔥 Top keywords: メインページ特別:検索上戸彩エドワード・S・モースXG (音楽グループ)石丸伸二秋葉原通り魔事件山田昌蓮舫木村カエラ椎名林檎井上愛一郎杉浦太陽ブルース・リー渡部峻アンチヒーロー (テレビドラマ)岡崎慎司高橋里華河合優実MY FIRST STORY無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜クリストファー・コロンブス古畑任三郎黎智英赤間麻里子髙嶋政伸怪獣8号若葉竜也山本未來小川博Z-1 (アイドルグループ)稲葉浩志眞栄田郷敦天野鎮雄石川さゆり長谷川博己ノーマンズランド三上悠亜森内寛樹