アセトフェノン

アセトフェノン: acetophenone)は、芳香族ケトンに分類される有機化合物の一種である。この名称は慣用名であり、IUPAC命名法では、その構造を 1-フェニルエタノン: 1-phenylethanone)と表す。無色の液体であるが融点が室温に近く、低温では白色板状結晶、または結晶塊となる。ベンズアルデヒドに似た芳香を呈し、希釈するとホーソンオレンジの花のような香りとなる[1]

アセトフェノン
acetophenone
アセトフェノン
識別情報
CAS登録番号98-86-2
KEGGC07113
特性
化学式C8H8O
モル質量120.15 g mol−1
示性式C6H5COCH3
外観無色液体
匂い刺激的なアーモンド、ベンズアルデヒド様香気[1]
オレンジの花やジャスミンのような甘い刺激臭[2]
嗅覚閾値0.83mg/m3[2]
密度1.033 (15 ℃)
融点

20.5 °C, 294 K, 69 °F [3](凝固点は19.2℃以上[1])

沸点

202 °C, 475 K, 396 °F [3]

への溶解度6.13g/L (25℃)[3]
溶媒への溶解度アルコールエーテルに可溶。クロロホルム、油脂など多くの有機溶剤と任意の割合で混和する。[3]
酸解離定数 pKa16 (水中)
屈折率 (nD)1.5339 (20 ℃)
危険性
安全データシート(外部リンク)[3]
引火点76℃[1]
発火点571℃
爆発限界1.1%[1]
半数致死量 LD50740g/kg(ラット、経口)[4]
関連する物質
関連する誘導体クロロアセトフェノン
アミノアセトフェノン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

合成

ベンゼンと、塩化アセチルあるいは無水酢酸とを、塩化アルミニウムなどのルイス酸を用いたフリーデル・クラフツ反応の条件下で縮合させると、アセトフェノンが得られる。意図しない発生源としては、エチレン酢酸ビニル発泡体製造時において、架橋剤過酸化ジクミル英語版を使用した際に2-フェニル-2-プロパノール英語版とともに副生成物として生じることがある[2]

反応

アセトフェノンは、還元水素化酸化求核的付加アルドール反応 など、ケトンに特徴的な多くの反応の基質となる。アルドール反応(クライゼン・シュミット縮合)の一例としてカルコンの合成を挙げる[5]

カルコンの合成

光化学的性質

励起状態の中で、3*励起状態(n→π*励起されたジラジカル体で、三重項のもの)が、1*励起状態(同様に一重項のもの)や3ππ*励起状態よりも安定であるため、アセトフェノンが、n→π*励起を受けた場合は、速やかに3*励起状態に変化し、一定の寿命で存在する。その性質から、増感剤 (photosensitizer) として利用される[6]

用途

石鹸洗剤などの安価な工業用調合香料[1]セルロースやエステル、樹脂などの溶媒[3]医薬品などの合成原料として使用される[7]明治時代の精神科の医療現場では「ヒプノン」の名称で催眠剤として使用された記録が残る[3][8]

アセトフェノンの誘導体には催涙剤クロロアセトフェノンや、抗真菌活性を持つ2',6'-ジヒドロキシ-4'-メトキシアセトフェノン[9]などがある。

出典

参考文献

  • 合成香料編集委員会『合成香料 化学と商品知識(増補新版)』化学工業日報社、2016年。ISBN 978-4-87326-677-0 
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