アザチオプリン

アザチオプリン(Azathioprine)とは免疫抑制薬の一つである。アザチオプリンはプロドラッグであり、グルタチオンなどと反応して、メルカプトプリンを生成する。メルカプトプリンはプリンヌクレオチドの合成を阻害するため、結果としてDNA合成を抑制する。

アザチオプリン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名イムラン、アザニン
Drugs.commonograph
MedlinePlusa682167
ライセンスUS FDA:リンク
胎児危険度分類
  • AU: D
  • US: D
法的規制
投与経路経口
薬物動態データ
生物学的利用能60±31%
血漿タンパク結合20–30%
代謝代謝を受けずに活性を持ち、主に キサンチンオキシダーゼにより不活化される
半減期26–80 分 (アザチオプリンとして)
3–5 時間 (原薬と代謝物をあわせ)
排泄尿中, 98% は代謝物として排泄される
識別
CAS番号
446-86-6 チェック
55774-33-9 (sodium salt)
ATCコードL04AX01 (WHO)
PubChemCID: 2265
DrugBankDB00993 チェック
ChemSpider2178 チェック
UNIIMRK240IY2L チェック
KEGGD00238  チェック
ChEBICHEBI:2948 チェック
ChEMBLCHEMBL1542 チェック
化学的データ
化学式C9H7N7O2S
分子量277.263 g/mol
物理的データ
融点238 - 245 °C (460 - 473 °F)
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日本での製品名はイムラン(グラクソ・スミスクライン)、アザニン(田辺三菱製薬)。1962年バローズ・ウェルカム研究所にてジョージ・ヒッチングスガートルード・エリオンにより開発された。

適応症

全身性血管炎(顕微鏡的多発血管炎多発血管炎性肉芽腫症結節性多発動脈炎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症高安動脈炎など)
全身性エリテマトーデス
多発性筋炎皮膚筋炎
全身性強皮症
混合性結合組織病
血管炎症候群のひとつであるANCA関連血管炎については、ミコフェノール酸モフェチルよりも寛解維持に優れていた[1]
自己免疫性肝炎[2]

副作用

さまざまな副作用が出やすい。特に注意が必要なのは、骨髄抑制に伴う血液障害や肝障害、ウイルス性肝炎間質性肺炎などの再発を含めた各種の感染症である。皮下出血など出血傾向、発熱やのどの痛み、皮膚の発赤や水ぶくれ、皮膚や白目が黄色くなるといった症状も表れる可能性があるので注意が必要である。

そのほか、食欲不振、吐き気嘔吐なども頻度が高い。また、稀に脱毛口内炎舌炎関節痛筋肉痛なども見られることがある。

これらの症状はすぐに起こる訳ではないが、将来的に白血病リンパ腫皮膚癌などの悪性腫瘍の発現リスクが少し高まる可能性がある。

骨髄抑制(白血球減少や脱毛)は、遺伝子タイプ(NUDT15 R139C)で発生時期、頻度が異なることが知られている[3][4]。脱毛患者の多くは同時に骨髄抑制も併発しており注意が必要である。

キサンチンオキシダーゼ阻害薬のアロプリノールと併用すると、アザチオプリンの代謝が阻害されて血中濃度が極度に上昇するため骨髄抑制などの副作用が増加する。このため、併用時にはアザチオプリン投与量を8割程度減量する必要がある[5]。一方、アザチオプリンを減量してアロプリノールと併用することにより、肝障害誘発物質生成が抑制されるなど副作用が減少し有効率が上昇するとの報告がある[6][7]

添付文書ではアザチオプリン投与中の患者において、リンパ球に染色体異常を有する児が出生したとの症例報告がある。 また、動物実験(ウサギ、ラット、マウス)で催奇形性作用が報告されているので、本剤投与中の患者には男女共に避妊を行わせることとの記載がある[5]が、ヨーロッパや国内のガイドライン[8]では避妊の必要性が議論されている。

関連項目

参考文献

  • 伊藤勝昭ほか編集 『新獣医薬理学 第二版』 近代出版 2004年 ISBN 4874021018
  • 膠原病診療ノート―症例の分析 文献の考察 実践への手引き 2006年 ISBN 4784953434

引用・参照

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