みどり (人工衛星)

みどり日本地球観測プラットフォーム技術衛星Advanced Earth Observing Satellite、略称:ADEOS

地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり(ADEOS)」
所属NASDA(現JAXA
主製造業者三菱電機
公式ページ地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり(ADEOS)」
国際標識番号1996-046A
カタログ番号24277
状態運用終了
目的地球観測
設計寿命3年
打上げ場所種子島宇宙センター
打上げ機H-IIロケット4号機
打上げ日時1996年8月17日
10時53分(JST)
通信途絶日1997年6月30日[1]
運用終了日1997年6月30日[1]
先代TRMM
後継機みどりII
物理的特長
本体寸法4×4×5m[2]
太陽電池パドル:約3×26m[2]
質量3,560kg[3]
発生電力4500 W[3]
姿勢制御方式三軸姿勢制御方式(ゼロモーメンタム)
軌道要素
軌道太陽同期準回帰軌道[1]
高度 (h)796.75 km[1]
軌道傾斜角 (i)98.5925 [1]
軌道周期 (P)100.8分[1]
回帰日数41日[1]
降交点通過
地方時
午前10時30分±15分[2]
観測機器
OCTS海色海温走査放射計
AVNIR高性能可視近赤外放射計
ILAS改良型大気周縁赤外分光計
IMG温室効果気体センサ
RIS地上・衛星間レーザ長光路吸収測定用リトロリフレクタ
NSCAT海上風測定マイクロ波散乱計
TOMSオゾン全量分光計
POLDER地表反射光観測装置
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概要

1996年(平成8年)8月17日10時53分に、ふじ3号とともに種子島宇宙センターよりH-IIロケット4号機で打ち上げられた。

みどりは地球温暖化オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、異常気象の発生等の環境変化に対応した観測データを取得するとともに、次世代観測システムに必要なデータ収集や軌道間データ中継技術等の開発を行うことを目的とした衛星である。

多くの新規技術が取り入れられており、運用による成果が期待されたが、打ち上げ後約6ヶ月で太陽電池パドルの破断により機能を停止。運用が断念された。

故障と運用断念について

1997年6月30日

9時46分頃に「みどり」が日本上空を通過した際、地球観測センターに観測データが受信されなかった[4][5]。衛星の状態を確認すると、衛星になんらかの異常が発生し、軽負荷モード[注釈 1]に移行していることが判明した[4][5]

11時30分頃および13時15分頃の2回にわたって沖縄宇宙通信所で衛星の状態を確認した際には、9時46分以前に一度姿勢を喪失し、地球捕捉モードに移っていることが確認された[5]。また、太陽電池からの供給電流がゼロ状態を示しており、衛星はバッテリーのみで運用されていることを示すテレメトリデータが取得された[4][5]

12時にはNASDA内に緊急対策チームが設置された[5]

スウェーデンキルナ局で16時21分および16時46分に、南アフリカハービーショーク局英語版で18時1分と18時26分の計4回にわたって衛星の状態の確認、および衛星の負荷を軽くする等の緊急コマンドを送信する作業を行った[4][6]。しかし、16時20分以降に衛星からのテレメトリデータを受信することは無かった[4][6]

キルナ局にて20時41分と21時20分に、増田宇宙通信所勝浦宇宙通信所および沖縄宇宙通信所にて21時2分および22時39分に緊急コマンドの送信及びテレメトリデータの受信を試みた[7]。しかしこれまでと同様に衛星からの応答は無かったため、運用の断念を決定した[4][7]。以降は緊急コマンドの送信を実施しない方針を決定した[7]

1997年7月1日

太陽電池パドルの過去データを調べた結果、規定値を割り込んでいないものの、6月27日から発生電力が低下している傾向にあることが判明した[7]。また、太陽電池パドルの温度の過去データについても6月23日から異常になっていることが判明した[7]。そして、事故発生後に「みどり」の軌道に変化があることが確認された[8]。14時に事故対策本部が設置され[9]、16時には第1回会合が開催された[8]

原因究明の経過

観測装置

OCTS

海色海温走査放射計(OCTS) 観測の概念図

海色海温走査放射計: Ocean Color and Temperature Scanner)とは、海洋の水色及び水温を高頻度、高感度で観測しクロロフィル濃度や浮遊物など把握を行うことを目的とした光学センサである[10]NIMBUS-7に搭載されたCZCSの観測ミッションを引き継いだ[10]。OCTSは可視近赤外域8バンド、赤外域4バンドの観測波長を持つ[10]。NASDA (宇宙開発事業団)が開発を行った。

OCTS 観測チャンネル[11]
チャンネル観測波長帯波長帯分解能観測幅偏光感度特性観測対象
Ch1可視光402-422 nm700 m(衛星直下)1400 km5 %溶存態有機物
Ch2433-453 nm2 %クロロフィル色素
Ch3480-500 nmフィコビリン色素
Ch4510-530 nm浮遊懸濁物
Ch5555-575 nmヒンジポイント
Ch6660-680 nm大気補正
Ch7近赤外線745-785 nm
Ch8845-885 nm
Ch9中赤外線3.55-3.85 μm-海面温度
Ch108.25-8.75 μm
Ch11熱赤外線10.3-11.3 μm雲 / 海面温度
Ch1112.5-12.5 μm

AVNIR

高性能可視近赤外放射計: Advanced Visible and Near Infrared Radiometer)とは、可視・近赤外域を用いて陸域の植生などを観測する装置である[10]。NASDAが開発を行った。

AVNIR 観測チャンネル[12]
チャンネル観測バンド波長帯分解能瞬時視野角視野角S/NMTF
Mu1マルチスペクトル0.42-0.50 mm16 m20 mrad5.7 度≧200≧0.25
Mu20.52-0.60 mm
Mu30.61-0.69 mm
Mu40.76-0.89 mm≧0.20
Paパンクロマチック0.52-0.69 mm8 m10 mrad≧90≧0.20

IMG

温室効果気体センサ: 大気中の温室効果ガスの分布の測定を行う装置。通商産業省が開発。

ILAS

改良型大気周縁赤外分光計: 極域における大気の微量成分の高度分布の測定を行う装置。環境庁が開発。

RIS

地上・衛星間レーザ長光路吸収測定用リトロリフレクター: Retroreflector In Space)とは、地上局から発射されたレーザー光を地上局に反射するためのリトロリフレクターであるである[10]。地上局上空のオゾンフロン12二酸化炭素メタン等の濃度測定が可能である。国立環境研究所が開発。

NSCAT

海上風測定マイクロ波散乱計 海上風の風向風速の測定を行う装置。NASA (アメリカ航空宇宙局)らが開発。

TOMS

オゾン全量分光計 オゾン量及び二酸化硫黄の分布の測定を行う装置。NASA らが開発。

POLDER

地表反射光観測装置 地球表面や大気で反射される太陽光の測定を行う装置。フランス国立宇宙研究センターが開発。

脚注

注釈

出典

関連項目

外部リンク