はたかぜ (護衛艦)

海上自衛隊のはたかぜ型護衛艦、練習艦

はたかぜローマ字JS Hatakaze, TV-3520, DDG-171)は、海上自衛隊練習艦はたかぜ型護衛艦の1番艦。艦名は「旗にあたってはためかせる風」に由来し、この名を受け継ぐ日本の艦艇としては旧海軍神風型駆逐艦旗風」、あさかぜ型護衛艦「はたかぜ」(DD-182)に続き日本の艦艇としては3代目。本記事は、本艦の艦暦について主に取り扱っているため、性能や装備等の概要についてははたかぜ型護衛艦を参照されたい。

はたかぜ
基本情報
建造所三菱重工業長崎造船所
運用者 海上自衛隊
艦種練習艦
級名はたかぜ型護衛艦
建造費619億8000万円
母港
所属練習艦隊第1練習隊
艦歴
発注1981年
起工1983年5月20日
進水1984年11月9日
就役1986年3月27日
2020年3月19日(練習艦に種別変更)
要目
基準排水量4,600トン
満載排水量5,900トン
全長150m
最大幅16.4m
深さ9.8m
吃水4.8m
機関COGAG方式
主機ロールス・ロイス オリンパスTM3B × 2基
ロールス・ロイス スペイSM1A × 2基
出力70,000PS
推進器スクリュープロペラ × 2軸
最大速力30ノット
乗員260名
兵装73式54口径5インチ単装速射砲 × 2門
Mk.15 高性能20mm機関砲 × 2基
Mk.13 Mod4 スタンダードミサイル単装発射機 × 1基
ハープーンSSM 4連装発射筒 × 2基
74式アスロック 8連装発射機 × 1基
68式3連装短魚雷発射管 × 2基
C4ISTAROYQ-4-1 戦術情報処理装置
SFCS-6A 水中攻撃指揮装置
レーダーOPS-11C 対空
OPS-28B 対水上
OPS-20 航海用
SPS-52C 三次元
SPG-51C ミサイル誘導用 × 2基
Mk.74 Mod13 ミサイル射撃指揮装置 × 2基
81式射撃指揮装置2型-21C
ソナーOQS-4
電子戦
対抗手段
NOLQ-1-3 ESM/ECM
OLR-9B ESM
Mk.137 デコイ発射機 × 4基
その他曳航具3型 対魚雷デコイ
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艦歴

「はたかぜ」は、中期業務見積りに基づく昭和56年度計画4,500トン型護衛艦2311号艦[1]として、三菱重工業長崎造船所で1983年5月20日に起工され、1984年11月9日に進水、1985年8月2日に公試開始、1986年3月27日に就役し、第1護衛隊群第61護衛隊に編入され横須賀に配備された。

1986年8月11日から12月8日の間、ターター装置装備認定試験(SQT)のため、米国に派遣。

1987年6月6日から8月21日の間、護衛艦「しらね」、「はつゆき」とともに米国派遣訓練に参加。

1988年7月22日からの3日間、伊豆大島沖展示訓練に護衛艦「くらま」、「たかつき」、「きくづき」、「はまゆき」、「まつゆき」、「むらくも」、「ちとせ」、潜水艦「なだしお」、「せとしお」とともに参加した。訓練終了後、「なだしお」が横須賀基地へ帰投中に漁船との衝突事故を起こす。(なだしお事件

1991年2月27日から3月4日、東京に寄港したフランス海軍カサール級駆逐艦ジャン・バール」、通報艦「コマンダン・ビロ」に対しホストシップとして交歓した。11月14日には、本艦でロケ撮影が行われた『世にも奇妙な物語』「無人艦隊」が放送された。

1994年5月31日、護衛艦「くらま」、「こんごう」、「あさぎり」、「ゆうぎり」、「あまぎり」、「はまぎり」、「さわぎり」、補給艦「ときわ」、潜水艦「たけしお」とともに横須賀基地を出港し、6月23日から7月6日までハワイ周辺海域で実施された環太平洋合同演習 (RIMPAC) に参加した。

2008年3月26日、護衛隊改編により第4護衛隊群第4護衛隊に編入。

2012年6月9日、日印国交60周年の記念も兼ねて訪日中のインド海軍艦隊と相模湾にて護衛艦「おおなみ」と共に共同訓練「JIMEX 12」を実施した[2][3]

2014年8月11日から9月30日の間、オーストラリアダーウィン周辺海域で実施されるオーストラリア海軍主催の多国間海上共同訓練「カカドゥ14」に参加[4]。ダーウィン寄港時には日豪共同慰霊式を行う。ここでの北部準州豪日協会」(AJANT)との交流がきっかけとなり、オーストラリア北部沖で撃沈された伊号第百二十四潜水艦の船体周囲の砂が遺族に送られることになった(詳細は伊号第百二十四潜水艦の項を参照)[5]

2014年10月24日、編成替えにより第1護衛隊群第1護衛隊に編入された。

2018年5月19日・5月20日、東京湾において実施される海上保安制度創設70周年記念観閲式及び総合訓練に参加する[6]

2019年5月13日未明から翌日午前にかけて、東シナ海の公海上(上海の南約400kmの沖合)で北朝鮮船籍のタンカー「AN SAN 1(アンサン1)号」(IMO番号:7303803)と船籍不明の小型船舶2隻が、合計6回に渡り国連安保理決議で禁止されている「瀬取り」とみられる作業を行っていたことを確認した[7]。なお「AN SAN 1号」は、2018年3月に国連安保理北朝鮮制裁委員会から資産凍結・入港禁止の対象に指定された船舶であり、2018年6月29日に瀬取り行為を行っているのを海上自衛隊第14護衛隊所属の護衛艦「せんだい」が、同じく2019年1月18日午後に瀬取り行為を行っているのを海上自衛隊第1海上補給隊所属の補給艦「おうみ」が現認している。

2020年3月19日、後継艦であるまや型護衛艦1番艦「まや」の就役により練習艦に種別変更された。艦番号が「3520」に変更となったほか、通信アンテナを一部撤去、司令部区画や女性用居住区、実習員講堂、実習員用海図区画の設置などの改装を行った。さらに、艦番号や艦名を薄い灰色に、煙突やマストの黒色塗装を灰色に塗装するロービジ塗装が施された。練習艦隊第1練習隊に編入され、5月29日にに転籍した[8][9]

2021年2月9日から3月16日にかけて、護衛艦「ゆうぎり」及び練習艦せとゆき」とともに第54期一般幹部候補生課程(部内課程)学生の外洋練習航海に参加する[10]。その参加途中の2月28日にはグアム周辺海空域において米海軍空母「セオドア・ルーズベルト」、巡洋艦「バンカー・ヒル」と共同訓練を実施した[11]

2022年2月8日から3月19日にかけて、護衛艦「いなづま」とともに第55期一般幹部候補生課程(部内課程)学生の外洋練習航海に参加する[12]。その参加途中の2月16日及び17日には沖縄東方海空域において米海軍空母「エイブラハム・リンカーン」、巡洋艦「モービル・ベイ」、駆逐艦「スプルーアンス」と共同訓練を実施した[13]。2月26日、ダナン沖においてベトナム海軍TT-400TP英語版哨戒艇「HQ-277」と日越親善訓練を実施した[14]。3月6日には、パラオ周辺においてパラオ共和国海上保安局巡視船「ケダム」と日パラオ親善訓練を実施した[15]。2023年現在、はたかぜは昭和61年3月27日の就役から艦齢37年となり、自衛艦として最長老艦となっている[16]。2022年夏以降は新来島サノヤス造船水島製造所で整備を受けた。

2023年3月11日より第73期一般幹部候補生課程の卒業生を乗せ練習艦かしまとともに令和5年の近海練習航海に参加。同日江田島を出港し、大阪、屋久島、佐世保、宮古島、石垣島、沖縄、鹿児島、大湊、小樽、舞鶴、呉、三机を経由し、5月10日に横須賀に到着[17]

2024年、令和5年度遠洋練習航海に参加。第73期一般幹部候補生課程修了者約160名(うち女性約20名)を含む約560名がかしまとはたかぜに分乗して出港。アメリカ合衆国(ダッチハーバー、サンディエゴ、パールハーバー)、 カナダ(ヴィクトリア)、メキシコ合衆国(マンサニージョ)、ペルー共和国(カヤオ)、チリ共和国(バルパライソ)、アルゼンチン共和国(ブエノスアイレス)、 ブラジル連邦共和国(リオデジャネイロ、レシフェ)、コロンビア共和国(カルタヘナ)を訪問し、パナマ運河を経由して、ハワイ経由で10月23日に呉に戻る。その後新来島サノヤス造船水島製造所で整備を受ける。令和6年近海練習航には部分的に参加。4月10日に近海練習航海の途中立ち寄った海上自衛隊大湊基地にて特別公開を受ける。5月、呉地方隊創設70周年記念として呉基地にて4日間の一般公開が実施された。令和6年度遠洋練習航海には参加せず。

現在、練習艦隊第1練習隊に所属し、定係港は呉である。

護衛艦時代の「はたかぜ」秋田港にて
航行中の「はたかぜ」
73式54口径5インチ単装速射砲による射撃

歴代艦長

歴代艦長(特記ない限り2等海佐
氏名在任期間出身校・期前職後職備考
1野末博行1986.3.27 - 1987.9.29防大8期はたかぜ艤装員長海上自衛隊幹部候補生学校教官1等海佐
2瀬川紘一郎1987.9.30 - 1988.12.14防大10期第1護衛隊群司令部付練習艦隊司令部幕僚1等海佐
3竹島信博1988.12.15 - 1989.12.14防大12期しらゆき艦長プログラム業務隊副長1等海佐
4加治 節1989.12.15 - 1991.3.19防大10期海上幕僚監部調査部調査第1課海上自衛隊幹部学校1990.7.1
1等海佐昇任
5伊藤元弘1991.3.20 - 1992.3.22防大11期横須賀地方総監部防衛部
第3幕僚室長
プログラム業務隊副長1991.7.1
1等海佐昇任
6山村洋行1992.3.23 - 1993.6.30防大13期 大湊地方総監部防衛部
第3幕僚室長
はるな艦長
7加藤正治1993.7.1 - 1995.3.31 運用開発隊開発第2科長しらね艦長1995.1.1
1等海佐昇任
8武智公司1995.4.1 - 1996.8.19防大15期佐世保地方総監部防衛部
第3幕僚室長
第1海上訓練指導隊付
→1996.9.30 かしま艦長
1996.7.1
1等海佐昇任
9小山秀雄1996.8.20 - 1997.9.9防大16期第3護衛隊群司令部幕僚統合幕僚学校教官1等海佐
10中田高芳1997.9.10 - 1999.3.31防大18期はまぎり艦長統合幕僚学校教官1等海佐
11江見雅博1999.4.1 - 2001.4.1神戸商船大
28期幹候
海上自衛隊幹部学校教官とわだ艦長1等海佐
12村田隆齊2001.4.2 - 2002.5.19防大21期護衛艦隊司令部幕僚みょうこう艦長1等海佐
13林 宏之2002.5.20 - 2003.8.19防大21期横須賀地方総監部管理部人事課長自衛艦隊司令部1等海佐
14佐々木俊也2003.8.20 - 2005.9.29防大23期指揮通信開発隊副長かしま艦長1等海佐
15椋木泰樹2005.9.30 - 2006.12.5防大24期情報本部ひえい艦長 1等海佐
16地藏謙介2006.12.6 - 2008.6.30防大22期横須賀地方総監部管理部
援護業務課長
横須賀基地業務隊付
17千代野正2008.7.1 - 2010.3.7防大24期大湊海上訓練指導隊副長佐世保海上訓練指導隊副長 
18宮﨑 守2010.3.8 - 2011.4.14 海上幕僚監部副監察官  
19関川秀樹2011.4.15 - 2012.12.3防大29期横須賀地方総監部管理部総務課長海上自衛隊幹部候補生学校
主任教官
2012.7.1
1等海佐昇任
20鈴木雅博2012.12.4 - 2013.1.29防大29期いかづち艦長呉基地業務隊補充部付 
21栗山俊文2013.1.30 - 2014.2.23防大30期呉海上訓練指導隊副長
兼 指導部長
護衛艦隊司令部 
22梅崎時彦[5] 2014.2.24 - 2015.3.29防大29期護衛艦隊司令部付大湊海上訓練指導隊司令1等海佐
23下野善彦2015.3.30 - 2016.8.28関西大
37期幹候
護衛艦隊司令部幕僚統合幕僚監部防衛計画部計画課2015.7.1
1等海佐昇任
24池田正人2016.8.29 - 2017.7.27防大34期護衛艦隊司令部付海上自衛隊第1術科学校主任教官
兼 研究部員
25川岸裕嗣2017.7.28 - 2018.11.1防大36期呉地方総監部防衛部
第3幕僚室長 兼 第5幕僚室長
統合幕僚監部指揮通信システム部
指揮通信システム運用課
指揮通信システム運用班長
1等海佐
26成田直人2018.11.2 - 2019.11.6はまぎり艦長
27秋元則仁2019.11.7 - 2021.5.20防大36期護衛艦隊司令部勤務横須賀海上訓練指導隊副長
兼 指導部長
28大濵英樹2021.5.21 - 2022.12.1海上自衛隊第1術科学校教官
兼 研究部員
練習艦隊司令部
29池崎裕之2022.12.2 -  護衛艦隊司令部幕僚 兼 自衛艦隊司令部 

脚注

参考文献

  • 石橋孝夫『海上自衛隊全艦船 1952-2002』(並木書房、2002年)
  • 世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』(海人社、2004年)

外部リンク

関連項目