すずらん (列車)

北海道旅客鉄道が運行している特別急行列車

すずらんは、北海道旅客鉄道(JR北海道)が室蘭駅東室蘭駅 - 札幌駅間を室蘭本線千歳線函館本線経由で運行する特別急行列車

すずらん
785系による特急「すずらん」 (2022年6月 苫小牧駅)
785系による特急「すずらん」
(2022年6月 苫小牧駅
概要
日本の旗 日本
種類特別急行列車
現況運行中
地域北海道
前身急行「はまなす
特急「ライラック[注 1]
運行開始1992年7月1日
運営者北海道旅客鉄道(JR北海道)
路線
起点室蘭駅東室蘭駅
終点札幌駅
営業距離136.2 km(室蘭 - 札幌間)
列車番号1000M+号数
使用路線室蘭本線千歳線函館本線
車内サービス
クラス普通車
座席普通車指定席uシート」:4号車
普通車指定席:1 - 3・5号車
技術
車両785系電車札幌運転所
789系電車(札幌運転所)
軌間1,067 mm
電化交流20,000 V・50 Hz
最高速度120 km/h (75 mph)
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運行概況

定期列車は1日6往復が運行されており、うち2・5号は東室蘭駅発着、それ以外は室蘭駅発着である。東室蘭駅 - 札幌駅間の所要時間は約1時間半、最高速度は120 km/hである[1]

2024年3月15日までは、室蘭発着列車の室蘭駅 - 東室蘭駅間は普通列車扱い(無愛称)であったが、翌16日から特急列車扱いとなっている。ただし同日以降も、同区間の駅相互間を利用する場合に限り、普通乗車券のみで指定席の空席を利用できる[2]

本列車は、函館駅 - 札幌駅間を結ぶ特急「北斗」と東室蘭駅 - 札幌駅間で運行経路が重複するが、「北斗」系統を補完して道央・胆振地区の都市間輸送に重点を置いた性格となっており、「北斗」系統と比較して停車駅が多くなっている。

停車駅

室蘭駅 - 母恋駅 - 御崎駅 - 輪西駅 - 東室蘭駅 - 鷲別駅 - 幌別駅 - 登別駅 - 白老駅 - 苫小牧駅 - 沼ノ端駅 - 南千歳駅 - 千歳駅 - 新札幌駅 - 札幌駅

使用車両・編成

2024年3月16日以降の編成図
すずらん
← 室蘭
札幌 →
12345
  • 全車禁煙
凡例
u=普通車指定席uシート
指=普通車指定席

札幌運転所に所属する785系電車および789系電車(1000番台)の2系列が共通運用されている。いずれも全車普通車の5両編成で、4号車が指定席「uシート」、それ以外は通常の指定席となる。

2020年3月14日より、白老町に「ウポポイ」が開設される(同年7月12日)のを前に指定席を2両に拡大した[3]。2024年3月16日には、自由席を廃止して全車指定席となった[2]

運行開始時点では781系電車が用いられていたが、785系への置き換えで運用を終了した。その他に臨時に用いられた車両については下記「#沿革」を参照。

臨時列車の設定

コンサドーレ号

臨時列車として、土・日・祝日の夜21時台に札幌発の「すずらん」82号が設定されているが、2015年度春ダイヤでは設定されていない。

室蘭駅に近い室蘭市入江運動公園陸上競技場Jリーグ北海道コンサドーレ札幌の試合が行われるのに合わせ、「すずらん」に準ずる運行形態で、臨時列車「コンサドーレ号」が運行される場合がある[4][5]

沿革

列車名の沿革

  • 1956年昭和31年)11月19日函館駅 - 札幌駅間を函館本線・千歳線・室蘭本線で結ぶ客車急行列車として「すずらん」が「洞爺」を改称して設定される。
  • 1960年(昭和35年)4月1日:「すずらん」一等車2両を含むキハ55系気動車による編成に変更。運転時分は、蒸気機関車牽引の客車列車時代に比べ、約1時間の短縮の5時間ちょうどとなる。
  • 同年10月1日:冬季の寒さ対策として「すずらん」の二等車キハ22形気動車に置き換える。
  • 1961年(昭和36年)日付不詳:上記の暫定的な措置がキハ56系の増備に伴い解消され、一、二等車共に北海道用の急行形気動車となる[6]
  • 1968年(昭和43年)10月1日このときのダイヤ改正に伴い「すずらん」が6往復へと増発。
    • そのうち1往復は夜行急行「たるまえ」を「すずらん(上り・下りとも)6号」に名称変更したもので、一等寝台車1両、二等寝台車2両、一等車1両を含む編成のほか、運行区間、列車番号(1217・1218列車)など、そのまま引き継がれた。運転時間帯の都合で食堂車の連結はない。
  • 1980年(昭和55年)10月1日:「すずらん」は定期列車の運転を終了。臨時列車のみとなったが、夜行列車(8217・8218列車)は使用車両を14系客車とし、運転期間を繁忙期に限りながらも夜行快速「ミッドナイト」が運転開始される1988年(昭和63年)まで存続した。
    • 14系化後の編成は当初は座席車(普通車指定席・自由席)のみだったが、運行末期には座席車に加えて2段式B寝台車も連結された。列車名としては当初は「すずらん59号・60号」、後に「すずらん89号・90号」とされた。
  • 1992年平成4年)7月1日:「すずらん」が室蘭駅 - 札幌駅間のエル特急として名称復活。以下は「運行系統の沿革」を参照。

運行系統の沿革

ここでは、室蘭駅 - 札幌駅間の系統を含め、室蘭本線・千歳線を経由する列車で函館駅までの直通がないものを述べる。なお、函館駅までの直通系統については「北斗」の項目を、循環急行いぶり」(札幌駅 - 伊達紋別駅 - (胆振線) - 倶知安駅 - 札幌駅)は「胆振線」を参照されたい。

国鉄時代

  • 1950年昭和25年)10月1日:室蘭駅 - 札幌駅間を運行する準急列車が設定される。この列車には翌1951年(昭和26年)に「エルム」の名称が与えられる。
  • 1953年(昭和28年)5月16日:虻田駅(現在の洞爺駅) - 札幌間に準急列車が運行開始。後述の準急「たるまえ」の前身に相当する。
  • 1956年(昭和31年)11月19日:「エルム」に長万部駅発着編成を連結。なお、長万部駅 - 東室蘭駅間は普通列車として運行された。
  • 1958年(昭和33年)10月1日:虻田駅 - 小樽駅臨時準急列車「たるまえ」新設。
  • 1959年(昭和34年)
    • 6月7日:札幌駅 - 様似駅間を千歳線・日高本線経由で運行する臨時準急列車として「えりも」が運転開始する。
      急行「ちとせ」列車名表示板
    • 9月22日:室蘭駅 - 札幌駅間に気動車準急列車として「ちとせ」が設定される。
      • 「ちとせ」については、長万部駅・礼文駅豊浦駅・虻田駅始発の列車を東室蘭駅で分割・連結するものもあった。なお、長万部駅・礼文駅・豊浦駅・虻田駅 - 東室蘭駅は普通列車として運行された時期もあった。
  • 1960年(昭和35年)4月22日:札幌駅 - 様似駅間を運行する準急列車として「日高」(ひだか)運転開始。
  • 1961年(昭和36年)10月1日:このときのダイヤ改正に伴い、以下のように変更する。
    • 室蘭駅 - 札幌駅間を運行する準急列車の名称を「ちとせ」に統合。これにより、「エルム」の名称廃止[注 2]
    • 「たるまえ」は定期化とともに延長され、函館駅 - 旭川駅の準急列車となる。以下の「たるまえ」の沿革はこちらを参照のこと。
  • 1963年(昭和38年)6月1日:臨時準急「えりも」が定期化される。
  • 1965年(昭和40年)10月1日:豊浦駅・洞爺駅 - 札幌駅間に準急列車として「とうや」新設。
  • 1966年(昭和41年)
    • 3月5日:準急列車制度の改変に伴い「ちとせ」・「とうや」・「えりも」・「日高」を急行列車に格上げ。
    • 6月1日:「日高」は「えりも」に編入。同時に1往復増発し3往復体制とする。
  • 1972年(昭和47年)3月15日:「とうや」を「ちとせ」に統合。また、「えりも」下り3号・上り1号の静内駅 - 様似駅間を普通列車に格下げ。「えりも」は全列車が2両編成となる。
  • 1980年(昭和55年)10月1日:室蘭駅 - 白石駅間電化完成および千歳空港駅(現在の南千歳駅)新設に伴うダイヤ改正により、室蘭駅 - 札幌駅 - 旭川駅間に781系電車による電車エル特急「ライラック」を新設。
急行「えりも」(1986年8月 札幌駅)
  • 1982年(昭和57年)11月15日:「ライラック」・「ちとせ」・「えりも」が新札幌駅に停車。
  • 1985年(昭和60年)3月14日:「ライラック」の東室蘭駅 - 室蘭駅間を各駅停車の普通列車に格下げ[7]
  • 1986年(昭和61年)
  • 1988年(昭和63年)3月13日:幌別駅 - 苫小牧駅間の最高速度が、従来の100 km/hから120 km/hに向上。これにより当該区間を通る「ライラック」も最高速度が120 km/hに引き上げられ、所要時間が3 - 10分程度短縮された[10]

民営化後

  • 1990年(平成2年)9月1日:「ちとせ」を廃止して「ライラック」に編入。
  • 1992年(平成4年)7月1日新千歳空港開港・新千歳空港駅開業に伴い、旭川駅 - 札幌駅 - 千歳空港駅・苫小牧駅・室蘭駅間を直通で結んでいた旧「ライラック」を廃止し運転系統を再編。
    • 新千歳空港駅・札幌駅 - 旭川駅間の新「ライラック」と、室蘭駅 - 札幌駅間の「すずらん」(7往復)に分離。
    • 新「ライラック」については、新千歳空港駅 - 札幌駅間は快速エアポート」として運行。
      • このころ、781系の出入口ドアの増設工事のため車両不足になり、「すずらん」が785系2両編成2本連結やキハ183系3両編成による代走が翌年6月頃まで見られた[11]
  • 1994年(平成6年)3月1日:「スーパー北斗」運転開始により「北斗」系統を8往復から11往復に増発。これに伴い「すずらん」のダイヤが見直され、利用の少ない2往復(7・13号、4・14号)の運行を取りやめ、5往復に削減[12]

2000年代の動き

  • 2000年(平成12年)
  • 2004年(平成16年)3月13日:「すずらん」全車禁煙化[13][14]
  • 2007年(平成19年)10月1日:「すずらん」の全列車を785系電車に置き換え、札幌駅 - 南千歳駅間の最高速度を130 km/hに引き上げ[15][16][注 3]。これにより札幌駅 - 南室蘭駅間にて平均5分の所要時間短縮が図られた。また、「すずらん」全列車が沼ノ端駅に停車[16]
  • 2008年(平成21年)3月23日:室蘭市に所在する入江運動公園陸上競技場で開催されるJリーグの試合への便のため、室蘭駅 - 札幌駅間に臨時特急「コンサドーレ号」がキハ183系6両(基本番台車)で1往復運転された[18][19]。当列車を使用した応援ツアーも組まれた。
  • 2009年(平成21年)9月20日:昨年同様、室蘭駅 - 札幌駅間に臨時特急「コンサドーレ札幌号」がキハ183系6両(基本番台車)で運転された[20]

2010年代の動き

  • 2010年(平成22年)12月4日:10号の運転時刻を繰り上げる。同時に土休日やイベント開催時に運行される臨時列車1本(82号・改正前のすずらん10号の時間帯)が増発される[21]。「スーパーカムイ」などに使われていた789系1000番台が臨時列車として運用される。
  • 2011年(平成23年)6月12日:室蘭駅 - 札幌駅間に臨時特急「コンサドーレ号」がキハ183系5200番台「ノースレインボーエクスプレス」で1往復運転された[22]。「すずらん」同様、東室蘭 - 室蘭間は普通列車として運転されるため、乗車券のみでリゾート気動車に乗車することが出来た。
  • 2012年(平成24年)10月27日:「すずらん」1号の運転時刻を繰り下げる[23]
  • 2013年(平成25年)11月1日:ダイヤ改正により以下のように変更[1][24]
    • 札幌駅 - 南千歳駅間の最高速度を120 km/hへ引き下げ[1]
    • これにより、南千歳駅で「すずらん」3号から「スーパーおおぞら」3号の接続ができなくなる。
    • 臨時列車として運用されていた789系1000番台が785系と共通運用となる。
  • 2014年(平成26年)
    • 3月15日:「北斗」・「スーパー北斗」の運転時間見直しに伴い、一部列車の時刻を変更[25]
    • 8月30日:ダイヤ改正。「すずらん」5・9号、2号の時刻を変更[26]
  • 2016年(平成28年)
    • 3月26日 : ダイヤ改正で以下のように変更[27]
      • 室蘭発5時台に「すずらん」1号(札幌着は7時過ぎ)を増発。これにより、東室蘭・登別・白老から新千歳空港始発の航空便が利用可能となる。
      • 「はまなす」の廃止に伴い、最終の「すずらん」12号の札幌発を22時ちょうどに繰り下げ。
      • 「北斗」4号の札幌駅発車時刻繰り上げに伴い、札幌駅7:30発の「すずらん」2号を増発。
      • 「すずらん」2号と5号が札幌駅 - 東室蘭駅の運行となり、東室蘭駅 - 室蘭駅は普通列車に乗り換えとなる。
  • 2017年(平成29年)3月4日:「エル特急」の呼称を廃止し「特急」とする[28]。車内自動販売機サービスを廃止。
  • 2018年(平成30年)9月10日 - 9月19日胆振東部地震による北海道内の電力供給量の不足に伴い、上り3本・下り3本を運休[29]

2020年代の動き

 
側面行き先表示
(2017年撮影、上:785系、下:789系1000番台)
  • 2020年令和2年)
    • 3月14日:3号車が指定席となり、指定席車両が2両となる[3]
    • 3月23日 - 4月23日新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、上下各3本(4・6・7・8・9・11号)を運休[30][31]
    • 4月6日:上下各1本(8・11号)が運転再開[注 4][33]
    • 4月15日:JR北海道が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による上下各2本(4・6・7・9号)の運休を、同年5月31日まで継続することを発表[34]
    • 5月20日:JR北海道が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による上記の運休の措置を、当面の間継続することを発表[35]
    • 6月10日:JR北海道が、同年5月25日の国の「緊急事態宣言」解除以降、ビジネス利用を中心に利用が回復傾向であること、「3密状態」を回避することを理由に、同年7月1日より、運休していた全列車を運転再開することを発表[36]
  • 2021年(令和3年)3月13日:ダイヤ改正により、「北斗」24号の運転を取りやめることから、「すずらん」10号の札幌駅発車時刻を28分繰り下げ[37][38]
  • 2024年(令和6年)3月16日:ダイヤ改正により、以下の通り変更[2][39][40]
    • 全車指定席化。
    • 普通列車として運行していた東室蘭駅 - 室蘭駅間を、各駅停車のまま特急列車扱いに変更。同区間の各駅相互間については、特急料金不要の特例(普通車指定席の空席を利用可)を新設[2][39]

列車愛称の由来

五十音順による

  • エルム」:ニレ科の植物の総称。
  • 「えりも」:襟裳岬から。
  • 「すずらん」:北海道に多く見られる花のスズランから。
  • 「たるまえ」:通過地付近にある樽前山から
  • 「ちとせ」:通過地である千歳市・千歳線にちなむ。
  • 「洞爺」・「とうや」:洞爺湖から。
  • 「日高」(ひだか):日高支庁・日高本線から。

商標

すずらん」は、北海道旅客鉄道が商標として登録している[41]

登録項目等内容等
商標すずらん
称呼スズラン
出願番号商願平04-270861
出願日1992年(平成4年)9月29日
登録番号第3021046号
登録日1995年(平成7年)1月31日
権利者北海道旅客鉄道株式会社
役務等区分39類(旅客車による輸送)

脚注

注釈

出典

参考文献

関連項目

外部リンク