おおすみ (輸送艦・2代)

海上自衛隊の輸送艦。おおすみ型輸送艦の1番艦

おおすみローマ字JS Osumi, LST-4001)は、海上自衛隊輸送艦おおすみ型輸送艦 (2代)の1番艦。艦名は大隅半島に由来し、この名を持つ輸送艦としては初代おおすみ型輸送艦おおすみ」(LST-4001) に続いて2代目。

おおすみ
東京湾を南下中の「おおすみ」
東京湾を南下中の「おおすみ」
基本情報
建造所三井造船 玉野事業所
運用者 海上自衛隊
艦種輸送艦
級名おおすみ型
建造費503億2,000万円
母港
所属掃海隊群第1輸送隊
艦歴
計画平成5年度計画
発注1993年
起工1995年12月6日
進水1996年11月18日
就役1998年3月11日
要目
基準排水量8,900トン
満載排水量13,000トン
全長178.0m
最大幅25.8m
深さ17.0m
吃水6.0m
機関三井造船16V42M-Aディーゼル × 2基
出力26,400PS
推進器スクリュープロペラ × 2軸
速力最大速 22ノット
乗員137名(ほか揚陸要員330名)
兵装高性能20mm機関砲(CIWS) × 2基
レーダーOPS-14C 対空
OPS-28D 対水上
OPS-20 航海用
電子戦
対抗手段
Mk.137 デコイ発射機 × 4基
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艦歴

「おおすみ」は中期防衛力整備計画(平成3年度~平成7年度)に基づく平成5年度計画8,900トン型輸送艦4111号艦として、三井造船玉野事業所で1995年12月6日に起工され、1996年11月18日に進水、1998年3月11日に就役し、自衛艦隊に直轄艦として編入されに配備された。

本艦には就役当初、外洋航海やヘリ離着艦時の安定性を向上させるフィンスタビライザー(横揺れ防止装置)が政治的判断から装備されず、就役から8年後の2006年に国際緊急援助活動に対応するための大型輸送艦の改修費としてスタビライザー取り付け費用が防衛庁(現・防衛省)でようやく予算化され、同時に航空燃料の容量も増やされた。また、就役当初にはなかった戦術航法装置 (TACAN) も搭載された。

1999年8月17日に発生したトルコ北西部地震被害への援助として、仮設住宅を輸送するため、9月23日に掃海母艦「ぶんご」、補給艦「ときわ」とともに神戸港を出港、エジプトアレクサンドリアまで平均速力18kt(約33km/h)で無寄港連続23日間という海上自衛隊史上初の長距離連続航海[1]を行い、10月19日イスタンブールのハイダルパシャ港に入港した。帰路は11月22日に呉港に入港予定であったが、「ぶんご」が真水タンクが空になったことによりトップヘビー状態になり、入港が1日遅れるという椿事があった(「ときわ」は22日に佐世保に帰港)。

2002年3月9日、呉を出港し護衛艦みねゆき」とともに東ティモールPKO部隊を輸送、同年4月27日、帰国した。なお、2002年3月12日付で自衛艦隊直轄部隊として第1輸送隊が新編され、同日付で就役した2番艦「しもきた」とともに編入された。

2004年2月20日イラク復興支援法に基づき、陸上自衛隊イラクで使用する軽装甲機動車給水車など車両70台を搭載し、護衛艦むらさめ」とともに室蘭を出港、同年3月15日クウェートに入港し、車両などを陸揚げした後、同年4月8日に帰国した。

2006年4月3日、第1輸送隊が護衛艦隊隷下に編成替え。

2010年1月26日から1月28日、輸送艦「くにさき」、米海軍揚陸艦トーテュガ」と共に、佐世保港と九州西方海域で輸送特別訓練を実施。

2011年3月5日、日本とインドネシアが共催する東南アジア諸国連合地域フォーラム災害救援実動演習に参加するためヘリコプター等を搭載して呉基地を出港した[2][3]。しかし、11日東日本大震災が発生したため帰国し、救援物資を横須賀基地で積んで19日仙台港へ輸送した[4]

2012年6月から7月にかけて「パシフィック・パートナーシップ2012」に参加し、フィリピン及びベトナムを訪問し、医療活動、文化交流等を行った[5]

2013年10月16日台風26号による伊豆大島土石流被害に対する災害派遣のため、呉を出港。10月18日早朝、横須賀に入港して陸自隊員130名と車両50両を搭載し、正午過ぎに出港して伊豆大島に向かい、夕方にLCACを使用して伊豆大島弘法ヶ浜へ隊員や車両を揚陸した。

同年11月8日フィリピンを襲った台風30号による被害の救援のために国際緊急援助隊が編成され、護衛艦「いせ」、補給艦「とわだ」と共に派遣された(「サンカイ(現地語で友達)作戦」)[6]11月18日に呉を出港し、11月22日レイテ湾に到着、救援物資輸送や医療、防疫活動を実施し、12月20日に帰国した[6]。なお、「おおすみ」は沖縄周辺での離島防衛のための訓練に参加する予定であったが[7]、急遽これを中止して派遣が決まった[7]。訓練は34,000人が参加する予定で[7]、「おおすみ」は訓練海域で拠点となる計画であった[7]。「おおすみ」の脱落によって離島防衛訓練自体も中止となった[7]

2014年1月15日、定期整備のため三井造船玉野工場に向けて呉を出港する途中、広島県大竹市阿多田島沖の瀬戸内海で、無謀な航路横切りを試みた遊漁船に異常接近され、おおすみは再三警告、減速したが衝突された。釣り船が転覆、乗っていた4人が海に投げ出され、おおすみの乗員に救助されたが、うち釣り船の船長と釣り客の2人が死亡した[8]

2015年5月16日から5月17日、九州西方海域でSH-60J/Kヘリ、陸自西部方面総監部西部方面航空隊CH-47Jヘリ、UH-60JAヘリ、米海軍艦艇、仏海軍強襲揚陸艦「ディズミュード」、フリゲート「アコニト」と日米仏共同訓練を実施[9]。ディズミュードのLCATを本艦に、本艦のLCACをディズミュードに乗艦させる相互乗艦訓練(クロスデッキ)などを行った。

2016年4月14日4月16日に発生した熊本地震の災害派遣に参加。

同年7月1日、第1輸送隊が掃海隊群隷下に編成替え。

2018年5月5日から9日までの間、インドネシア共和国ロンボク周辺海域で実施されるインドネシア海軍主催の人道支援・災害救援に関する多国間共同訓練「コモド2018」に参加し、医療/捜索救難訓練、指揮所訓練、机上訓練等を実施した[10]。その後、5月22日から6月2日にかけてはベトナムのカムランに寄港し、「パシフィック・パートナーシップ2018」の活動に参加した[11]

同年7月11日平成30年7月豪雨をうけて横須賀基地を離れ呉基地への物資輸送任務を行う。旧軍港4市(横須賀・舞鶴・呉・佐世保)間の災害時相互応援協定に基づいた呉市の要請に応じて、横須賀市が提供を決定した非常用備蓄物資(土嚢袋、食料、飲料水、海水淡水化装置など)や、呉地方総監部から横須賀地方総監部に依頼があった物資が積み込まれ[12]、13日に呉に到着した[13]。また、陸自隊員向けに艦内の入浴施設を開放した[13]

同年8月26日及び27日、沖縄周辺海域において米海軍強襲揚陸艦ワスプ」他、艦艇数隻と共同訓練を実施した[14]

同年10月5日から10月19日には鹿児島県種子島及び同周辺海空域において日米共同訓練(ブルークロマイト)を実施した。陸上自衛隊からは水陸機動団第2水陸機動連隊第1ヘリコプター団等、米海兵隊からは第3海兵師団第4海兵連隊が参加し、着上陸訓練を実施した[15]

2021年5月11日から17日にかけて護衛艦「いせ」、「あしがら」、「あさひ」、「こんごう」、ミサイル艇おおたか」、「しらたか」、哨戒機、潜水艦とともに東シナ海において日米豪仏共同訓練(ARC21)に参加する。米海軍からはドック型輸送揚陸艦ニューオリンズ」、豪海軍からはフリゲート「パラマッタ」、仏海軍からは強襲揚陸艦トネール」、フリゲート「シュルクーフ」が参加し、防空訓練、対潜訓練、着上陸訓練を実施する[16]

2022年1月20日火山島の大規模噴火に見舞われたトンガへの支援物資輸送のためトンガ王国国際緊急援助活動統合任務部隊が編成された[17]。本艦は、火山灰を取り除くための高圧洗浄機や飲料水などを積み、24日午後2時すぎに呉基地を出港した[18]。今回の派遣では、現地の港に接岸できないことを想定し、輸送用のホバークラフト「LCAC」や陸自CH-47輸送ヘリコプター2機なども搭載されている[18]。2月9日正午ごろ、トンガタプ島のヌクアロファ港に入港し[19]、同月12日、緊急援助物資の引渡しと給水支援を終え、出港した[20]。帰国途上の2月17日、豪海軍補給艦サプライ英語版」から補給を受け[21]、同年3月5日に呉基地に帰港した[22]

同年9月16日から19日にかけて、日本周辺(太平洋上)訓練海空域及び沼津海浜訓練場において実施される日米共同訓練(輸送特別訓練)に参加予定であったが[23]、僚艦「くにさき」が本艦に代わり参加することが9月15日に海上幕僚監部から発表された[24]

2023年2月27日から3月12日にかけて、掃海艇ひらしま」、「やくしま」とともに広島湾及び九州西方から沖縄周辺の訓練海空域において実施される日米共同訓練に参加。米海軍からは強襲揚陸艦アメリカ」、ドック型揚陸艦アシュランド」、ドック型輸送揚陸艦グリーンベイ」等が参加し、クロスデッキ、船舶誘導訓練、捜索救難訓練、立入検査訓練、PHOTOEX等を実施[25]

2024年1月2日15時、令和6年能登半島地震に対する災害派遣として、重機等輸送のために呉を出港[26]、翌3日に舞鶴に入港し、第4施設団の重機等車両及び災害救援物資等を搭載したのち、能登半島方面へ向かった[27]。翌4日の午前9時すぎから能登半島沖からLCACにより輪島市大川浜へ重機・救援物資を輸送した[28]。その後は能登半島付近の洋上において、海上基地(シーベーシング)としてヘリコプター及びLCACを使用した物資輸送等の任務に従事した[29]。任務を終了し、同月23日に呉に帰港した[30]

歴代艦長

歴代艦長(特記ない限り1等海佐
氏名在任期間出身校・期前職後職備考
01山村洋行1998.3.11 - 1999.3.31防大13期おおすみ艤装員長第2海上訓練指導隊司令
02成影 務1999.4.1 - 2000.3.29防大14期とわだ艦長舞鶴警備隊司令
03江崎一洋2000.3.30 - 2001.8.9防大15期海上自衛隊第1術科学校生徒部長第1海上訓練指導隊
04小島英伸2001.8.10 - 2002.9.19防大18期おじか艦長舞鶴地方総監部監察官 
05阪上廣治2002.9.20 - 2004.3.31防大16期自衛艦隊司令部幕僚電子情報支援隊司令
06大河戸正巳2004.4.1 - 2006.3.26防大20期海上自衛隊第1術科学校教官自衛艦隊司令部就任時2等海佐
2005.7.1、1等海佐
07江﨑哲夫2006.3.27 - 2009.3.24防大21期くにさき副長佐世保基地業務隊2等海佐
08田邉明彦2009.3.25 -2011.4.10防大26期横須賀地方総監部管理部人事課長ひゅうが艦長就任時2等海佐
2009.7.1、1等海佐
09村田耕一2011.4.11 - 2013.3.31防大26期護衛艦隊司令部幕僚誘導武器教育訓練隊教育部長2等海佐
10田中久行2013.4.1 - 2014.7.31防大29期海上自衛隊第1術科学校教官第1術科学校主任教官2等海佐
11秋元辰夫2014.8.1 - 2016.9.29防大31期海上幕僚監部防衛部
運用支援課南極観測支援班長
大湊地方総監部付
→2016.10.3 同総監部監察官
2等海佐
12斎藤 貴2016.9.30 - 2017.12.19防大32期大湊海上訓練指導隊副長
兼 指導部長
護衛艦隊司令部
兼 自衛艦隊司令部
2等海佐
13堀川雄司2017.12.20 - 2019.7.31防大35期かしま艦長大湊海上訓練指導隊司令
14鳥越 要2019.8.1 - 2020.8.2防大36期統合幕僚学校教育課
第2教官室学校教官
対馬防備隊司令
15渡邊秀幸2020.8.3 - 2022.9.8防大35期とわだ艦長開発隊群司令部2等海佐
16阿部周一2022.9.9 - 2023.10.5防大40期舞鶴地方総監部管理部総務課長2等海佐
17小泉正弘2023.10.6 -防大43期海上自衛隊幹部学校運用教育研究部
主任研究開発官

ギャラリー

脚注

参考文献

  • 石橋孝夫『海上自衛隊全艦船 1952-2002』(並木書房、2002年)
  • 世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』(海人社、2004年)