ガレージロック (Garage rock )は、1960年代 半ば以降に台頭したロック の1ジャンルである。1970年代 前半に一時忘れられたが、パンク・ニューウェイブ 隆盛の1970年代後半以降に再評価された。
概要 ガレージロックとは、ガレージ(車庫 )で練習するアマチュア バンド が多かったことに由来する名称である。1960年代のアメリカ合衆国 を発祥としている。ザ・シーズ 、シャドウズ・オブ・ナイト、スタンデルズ、カウント・ファイブ 、シンジケート・オブ・サウンド、ディック・デイル、キングスメンなどが代表的ミュージシャンとして知られている。
1964年 以降のビートルズ やローリング・ストーンズ 、ザ・フー 、キンクス などのイギリス 出身バンドによる「ブリティッシュ・インヴェイジョン 」の強い影響も受け[2] 、初期のロックンロールへの回帰の要素が強い草の根的ムーヴメントとして発展した。
レニー・ケイが編集したアルバム『ナゲッツ:オリジナル・アーティファクツ・フロム・ザ・ファースト・サイケデリック・エラ、1965-1968 』に収録されたバンド群が、特によく知られている。同アルバムには1965年 から1968年 のガレージ・バンドが多数収録され、1972年 に発表された。レニー・ケイは数年後に、パンクのパティ・スミス・グループに参加した。
60年代ガレージロックの範疇に括られるバンドは多い。彼らのサウンドは、ロックンロール のスタイルに則ったシンプルなコード進行 の曲が多く、ロックの初期衝動がストレートに現れている。一方で忘れてはならないのが、60年代当時流行し始めたLSD などの幻覚剤 が音楽にもたらした効果である。ドラッグ によるトリップ 効果を表現しようという意図は、幻想的な曲作りや、ファズ を多用した歪んだギター や、シタール などのインド 民族楽器 の使用に繋がる。そのため、サイケデリック・ロック の萌芽を感じさせるバンドも存在した。
ロンドン・パンク が、1970年代後半に流行した[3] 。産業ロック などの商業主義 的に肥大化したロックに反抗した当時のパンク・ムーヴメントの中で、ロックの初期衝動に忠実ともいえる性急さを特徴とした60年代以前のガレージ・ロックの再評価がなされた。
1980年代 以降のバンドは、やはりロックの初期衝動をストレートに表現している。尊敬するバンド、影響を受けたバンドとして60年代のガレージ・ロックやロックンロール ・バンドを挙げるバンドが多い。しかし、新しい世代のバンドは、サイケ 衝動とは縁遠く、若者の等身大の日常や世界観を持ったバンドが多いことが特徴である。
このジャンルには、オルタナティヴ・ロック のバンドも多くなった。リフ 主体のギターサウンドが共通点である[注 1] 。煌びやかな音響処理やSEを多用した80年代風の産業ロック的音作りや、スタジオでの多重録音による音像とは距離を置いた、シンプルな音を持ったバンドが多い。それが録音環境の良くないインディー・ロック、アンダーグラウンドのバンドとなり、オルタナティヴ・ロック /ポストパンク の色彩を強めている。
詳細 ガレージロックのバンドの多くは、全米的にブレイクすることはなく、その存在は泡沫的なものであった。彼らは、アルバムよりもシングルを中心にリリースすることが多かった。それらのシングルの多くはプレス枚数も少ないため、希少価値のあるもので、手軽に入手するのは困難である。現代の聴き手は、コンピレーション・アルバム (オムニバス )を通じてガレージ・ロックに接することとなる。
ガレージロックは、70年代のロンドン・パンク シーンに大きな影響を与え、1980年に入りカレッジ・ラジオ(英語版 ) /オルタナティヴ・ロック [4] が全盛を迎えた時期までは注目されていた。だが、産業ロックやLAメタルなどのヘヴィメタル がアメリカで売れるようになると忘れられた存在となる。やがてヘヴィメタル人気が下火となり、オルタナティヴ・ロックがブームになった。1990年代 にシアトル で起こったグランジ ムーブメントの旗手ニルヴァーナ もガレージロックの影響を受けていて、その後のオルタナティブロック・ムーブメントに対して影響を与えた。そして21世紀 には、ヒップ・ホップ 、R&B が全盛を迎え、それらのジャンルの売り上げが増え、ロック自体の売り上げが下降していった。
2000年代 以降のガレージ・ロックとしては、ザ・ストロークス やザ・ホワイト・ストライプス 、ザ・リバティーンズ のほか、ローリング・ストーンズの影響を受けたジェット [注 2] があげられる。彼らの台頭により、ガレージロックは再び日の目を見ることとなった。2000年以降におけるガレージロックの再評価は「ガレージロック・リバイバル」と呼ばれた。現実にはヒップ・ホップ やR&Bの台頭でロック・シーンは縮小し、CDの売り上げも落ちていたが、ロック専門誌によって持ち上げられた側面があった。これらのバンドの活躍は、世界の音楽界の一部の現象だった。
2000年代以降 1960年代のガレージロック・ムーブメントは少数のバンドがシングル・ヒットを出しただけだったが、リバイバルのバンドはメインストリームでの成功を果たしたバンドも存在した。代表的作品として最もよく挙げられるのはザ・ストロークス のファースト・アルバム『イズ・ディス・イット』であり、本国アメリカではなく英国で先にブレイクし、その後のガレージロック・リバイバルの後進バンドに大きな影響を与えた。その作風は、同じくニューヨーク から生まれたヴェルヴェット・アンダーグラウンド [注 3] やテレヴィジョン [注 4] などに通じる独特の雰囲気を持っていると評価された。ポストパンク ・リバイバルの若者バンドの一部は、ストロークスからの影響を公言している。これらは、シンプルなサウンドのロックという意味で、70年代パンク との類似性を指摘されることも多い。
その他には、ザ・ホワイト・ストライプス の4thアルバム『エレファント 』など、元はアンダーグラウンドを主体に活動していたアーティストの中で、ムーブメントによってメジャー入りした作品も多い。ガレージロック・リバイバルの存在自体は、all musicもlast.fmも認めているが、ロックの占有率自体が、ヒップホップとクラブ・ミュージックの挟撃にあい、アメリカでは「2位に転落」した状況である。
サブジャンル フリークビート/ガレージパンク ガレージロックのサブジャンルとしては、フリークビート[5] や、ソニックスらのガレージパンクがあげられる[6] [7] 。
フラットロック サーフロック やホット・ロッド・ミュージックの影響が交錯した結果、しばしばガレージロックの初期のサブジャンルとして言及されるフラットロック (Frat rock )と呼ばれるエネルギッシュかつアップビートな音楽スタイルが生まれた。ザ・キングスメン(英語版 ) が1966年に発表した「ルイ・ルイ」は、シアトルでローカルヒットした後、全米チャートで第1位を獲得し、やがて海外でも商業的な成功を収めた。ザ・キングスメンは、解読が困難な歌詞の中に下品な言葉が使用されているという苦情を受け、連邦捜査局 の捜査対象となっていた。
フラットロックは、ザ・キングスメンをはじめとした太平洋岸北西部 のアーティストとよく関連づけられるが、他の地域でも盛んな音楽スタイルとなっていた。1963年にはアメリカの他の地域出身のバンドのシングルが全米チャートにランクインし始め、その一例となるミネアポリス出身のザ・トラッシュメン の「サーフィン・バード(英語版 ) 」は、ザ・リヴィトンズ(英語版 ) がかつて録音した「The Bird is the Word」と「Papa Oom Mom Mow」を融合させた楽曲である。1964年初頭にはインディアナ州サウスベント出身のザ・リビエラズ(英語版 ) の「カリフォルニア・サン」がヒットを記録した。
主なミュージシャン 60'sガレージ・ロック 70'sガレージ・ロック 80'sガレージ・ロック 90'sガレージ・ロック ガレージロック・リヴァイヴァル(2000年 - ) 日本のガレージ・ロック 脚注 注釈 出典 参考文献 Austen, J. (2005). TV-a-go-go: Rock on TV from American Bandstand to American Idol . Chicago Review Press. ISBN 978-1-55652-572-8 Bangs, Lester (1981). “Protopunk: The Garage Bands”. In Miller, Jim. The Rolling Stone Illustrated History of Rock & Roll . Picador Books. ISBN 978-0-330-26568-3 Blecha, Peter (2009). Sonic Boom: The History of Northwest Rock, from "Louie Louie" to "Smells Like Teen Spirit (1st ed.). New York: Backstreet Books (an imprint of Hal Leonard Corporation). ISBN 978-0-87930-946-6 Markesich, Mike (2012). Teenbeat Mayhem (1st ed.). Branford, Connecticut: Priceless Info Press. ISBN 978-0-9856482-5-1 . https://archive.org/details/teenbeatmayhemco00mark Sabin, Roger (1999). Punk rock: so what?: the cultural legacy of punk (1st ed.). Routledge. ISBN 978-0-415-17030-7 . https://books.google.com/books?id=sXeFAgAAQBAJ&q=Sabin+Punk+rock%3A+so+what%3F%3A+the+cultural+legacy+of+punk+159&pg=PA159 Shaw, Greg (1998). Nuggets: Original Artyfacts from the First Psychedelic Era, 1965–1968 (4-CD Box Set) – Sic Transit Gloria: The Story of Punk Rock in the '60s (liner notes). ISBN 978-1-56826-804-0 . R2756466。 Shuker, Roy (2005). Popular Music: The Key Concepts (2nd ed.). London: Routledge. ISBN 978-0-415-59866-8 Waksman, S. (2009). This Ain't the Summer of Love: Conflict and Crossover in Heavy Metal and Punk . University of California Press. ISBN 978-0-520-25717-7 . https://archive.org/details/thisaintsummerof0000waks 『ディスク・ガイド・シリーズ #003 ガレージ・パンク』関口弘(監修)、シンコーミュージック 、2001年5月1日。ISBN 4-401-61685-5 。 KING JOE 著、KING JOE 編『SOFT,HELL!ガレージパンクに恋狂い』ジャングルブック、1999年3月1日。ISBN 4-944-09826-X 。 KING JOE 著、KING JOE 編『SOFT,HELL!悪魔のティーンエイジブルース』メタブレーン、2002年4月1日。ISBN 4-944-09834-0 。 『indies issue Vol.7 <特集>96 TEARS OF TEENAGE SCREAMERS〜ネオGSから現在のガレージパンクを再検証〜』ビスケット、2003年。ISBN 4-434-02828-6 。 関連項目 外部リンク サブジャンル 関連ジャンル 地域別 パンクの起源 一覧 1970年代のパンクロック・ミュージシャンの一覧 (en ) パンクロック・バンドの一覧 パンク映画監督の一覧 (en ) パンクロックのコンピレーションアルバムの一覧 (en ) パンクロック・フェスティバルの一覧 (en ) 関連項目
インディー・ロック その他のジャンル 起源 関連ジャンル 一覧 オルタナティブ・ロック・アーティストの一覧 (en ) 関連項目